つボイノリオさんも公表…「前立腺がん」最新の放射線治療は週末2回でOK【中川恵一 がんサバイバーの知恵】

【Dr.中川 がんサバイバーの知恵】

 高齢化に伴って前立腺がんを患う人が増えています。全国がん登録によれば、2000年に2万人ほどだった罹患数は、21年には9万5584人と10万人近くになっているのです。

 この男性で最も多いがんであることを1月に公表したのがラジオパーソナリティーのつボイノリオさん(76)。自らの番組には、病気と闘うリスナーから300通以上の投稿が届くそうで、すべてに目を通し、自身の闘病経験を交えながら聴取者にエールを送っている姿が報じられました。

 前立腺がんは60歳くらいから右肩上がりで増え始め、70代後半にピークを打つと、なだらかに減少します。今年診断を受けたつボイさんは、典型といえます。自身が語ったことなどによれば、診断時に医師に提案されたのは3つ。①何もせず経過観察する監視療法②手術③薬と放射線治療で、いまホルモン治療を受けているそうです。

 一般に①を選択するには条件があります。(1)前立腺特異抗原であるPSAが10ナノグラム/ミリリットル以下(2)生検によって悪性度を評価するグリーソンスコアが6以下(3)がんが画像で分からないか、前立腺の片側以内に限局している。

 この3つを満たせば、①監視療法が可能です。定期的にPSAを調べながら必要なタイミングで治療を行いますが、そのまま何もせず寿命をまっとうする方も少なくありません。「放置は不安」という方が、手術か放射線で治療を受ければ、ほとんど治ります。

 ただ、手術の場合、術後に尿漏れとEDになるリスクが高い。年齢的にEDは「関係ない」という方もいますが、尿漏れでパッドやオムツを余儀なくされるのは自尊心を傷つけられるのでつらいと思います。特に術後半年までに改善しない尿漏れは長期化しやすいので厄介です。

 放射線治療なら、尿漏れもEDも心配ありません。従来の放射線治療は平日は毎日、40回程度照射するのが一般的でしたが、ピンポイントに照射する定位放射線治療は5回で済みます。さらに進んだMRIと放射線を組み合わせたMR一体型リニアックは週末の土曜日に2週にわたって照射するのみです。子供が付き添うにもスケジュール調整が楽で、医師にとっては治療の過密スケジュールが減ったといいます。

 週末2回照射は東北大病院が国内で初めて1月から導入。仕事と治療の両立にはうってつけですが、設置費用の負担と診療報酬のバランスが病院としてはよくなく、普及していません。患者にも医療財政にもプラスですから、ぜひ普及してほしい治療法です。

 前立腺がんの根治を目指すなら、手術か放射線ですが、今後は放射線が主流になるでしょう。

(中川恵一/東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授)

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