【高齢者の正しいクスリとの付き合い方】
みなさんは「カリウム」という物質をご存じでしょうか? 「血圧を下げる効果があるからカリウムは取ったほうがいい」、あるいは「腎機能が低下している人はカリウムをあまり取らないほうがいい」といった話を耳にしたことがある方もいらっしゃるかもしれません。一体どっちなのでしょう?
カリウムはナトリウムとともに体の中で非常に重要な役割を担っています。主な役割としては、細胞内の浸透圧の維持、神経の刺激伝導、心筋(心臓の筋肉)や他の筋肉の機能の調節などがあります。ナトリウムが細胞の外にたくさんあるのに対して、カリウムは細胞の中にたくさんあります。自分の血液検査の値を見ていただくとおわかりいただけますが、ナトリウムの値が「140」前後なのに対し、カリウムの値は「4」前後になっているはずです。これは血液中、つまり細胞の外の値になります。
血液検査ではわかりませんが、細胞の中ではナトリウムの値が「4」前後、カリウムの値が「140」前後と逆になります。そして、このバランスを維持するために体の中では非常に緻密なコントロールがなされています。言い換えると、そのくらいしっかりコントロールしなければならないほど、このバランスは生体機能において極めて重要だということです。
カリウムは海藻類や野菜、果物、肉・魚介類などに多く含まれており、通常われわれは食事から摂取しています。一方で、体の外には主に腎臓を介して尿中に排泄されます。カリウムを取ると血圧が下がるのは、カリウムの効果で尿中に多くのナトリウムと水が排泄され、血液のボリュームが減少することに由来しています。
こう聞くと、なんだかカリウムをたくさん取ったほうが体に良い感じがします。実際、腎臓の機能が問題ない方は、ある程度カリウムをたくさん取っても、尿から体外に排泄されるのであまり問題はありません。しかし、高齢者のように腎臓の機能が低下している場合にはカリウムの排泄能力も低下するため、注意が必要です。
ただし、逆に体内のカリウムが少なくなりすぎることも問題です。ここからは、体内のカリウムが少なくなりすぎたとき、多くなりすぎたときに起こりうることについて説明します。
体内のカリウムバランスに異常が起こると、さまざまな症状が出現します。「低カリウム血症」では、筋力低下、筋肉の痙攣、筋肉痛、不整脈、悪心・嘔吐などが起こります。逆に「高カリウム血症」では、しびれ、脱力感、不整脈、悪心・嘔吐などが起こります。
ここで注目していただきたいのは、低カリウム血症と高カリウム血症、いずれも筋肉に起因する症状が多いという点です。次回、詳しくお話しします。
(東敬一朗/石川県・金沢市「浅ノ川総合病院」薬剤部主任。薬剤師)