大リーグ機構の国際戦略に選手会は複雑胸中…球団経営者の「選手年俸カット」の思惑見え隠れ【メジャーリーグ通信/鈴村裕輔】

【メジャーリーグ通信】

 大リーグ機構にとって、6年ぶり6回目となる日本での公式戦の実施は大きな成功だった。

 入場券の不正転売が横行する様子は、それだけ東京シリーズの注目度と需要が高いことを示していた。

 日本のオープン戦に相当するプレシーズンゲームでさえテレビやラジオのスポーツコーナーの最初に取り上げられたり、これまで大リーグとの関わりが希薄だった高級百貨店が東京シリーズの関連商品を取り扱ったりしたことも、視聴者や聴取者、あるいは顧客の興味がどこにあるかを察知した結果だった。

 話題性の高さと経済的な波及効果の大きさを考えれば、コミッショナーのロブ・マンフレッドが今回の収益をオールスター戦に匹敵する規模の3500万ドルであると発言し、大リーグ公式アカウントがSNSで「日本で最も視聴された大リーグの試合」と投稿するなど、東京シリーズの成功を強調するのも当然だろう。

 何より、満員となった東京ドームで観客が大谷の一振りに大きな歓声を上げる映像は、過去30年間で市場規模が10倍以上に拡大しているとはいえ、テレビ視聴率だけでなく売上高でもNFLとの差が広がり続ける大リーグ機構にとって、力強いものだった。

 マンフレッドが今後も日本での開幕戦シリーズの継続的な実施に前向きな姿勢を示すのも、世界第2位の市場である日本の重要さと将来性の高さを強く認識している表れにほかならない。

 それとともに、2015年1月の就任当初から、折に触れて試合数の削減の可能性に言及してきたのがマンフレッドである。

 23年には海外公式戦の実施に伴う日程の見直しを理由に、レギュラーシーズンを現行の162試合制から1960年までの154試合制に戻すという私案を提起したことを考えれば、26年12月1日で失効する現在の労使協定の改定の際に海外での公式戦の開催が重要な争点の一つになるだろう。

 なぜなら球団経営者たちが年俸は試合数に応じて設定されるべきだと主張しやすい根拠が試合数の削減だからだ。

 選手会からすれば、球団は財務状況を正確に開示していない。そして、不十分な情報しか明らかになっていない以上、年俸と試合数を連動させることに合理的な根拠はなく、将来的な年俸総額制の導入の布石と映る。

 大リーグ機構による国際戦略は、球団経営者の年俸水準の切り下げという思惑を野球の世界的な普及という誰もが反対しにくい名目で覆い隠すという一面がある。それだけに選手たちにとっては無条件で賛同することが難しい問題でもある。

(鈴村裕輔/野球文化学会会長・名城大准教授)

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