今年のセンバツは低反発の金属バットが本格的に導入され、ちょうど1年。従来の「飛ぶバット」は打球速度が速く、ケガ人が続出。そのため、「飛ばないバット」になった経緯がある。
導入初年度の昨センバツは、高校野球で金属バットが使われるようになった1979年以降、最少の3本塁打。今大会も昨25日の時点で通算5本だが、うち2本はランニングホームランだ。
各校はこのバットにどう対処しているのか。
健大高崎(群馬)の青柳博文監督(52)は「ウチは順応していますよ」と言う。
「最初は打球が飛ばないのでチャンスでバントなどをしていたが、今はそのまま打たせるケースも増えてきた。今では『飛ばない』という感覚もほとんどありません」
とはいえ、多くの学校はそうではない。
広島商(広島)の赤沢雄祐コーチ(43)は「打撃よりも走塁とバントを重視している」と、こう続ける。
「導入当初は困惑しましたよ。抜けた! と思った打球が抜けない。だから少ないチャンスをものにするため、1本で塁を2つ進むなど、これまで以上に走塁が大事です。逆に守備面では遊撃手を定位置より少し前に出して守らせている。低反発バットの打球はバウンドしにくいからです」
智弁和歌山(和歌山)の中谷仁監督(45)も守備の変化を口にする。
「内野手が守備で足を使えるようになりましたね。以前のバットだと打球速度が速く、前に出て守るのは難しかった。その意味では投手と内野にとって低反発バットはプラスだと思います」
「木製バットでの練習は次のステージでも野球をやる子には非常に良いこと」25日の2回戦で東海大札幌を破り、8強に駒を進めた浦和実(埼玉)の辻川正彦監督(59)も同様だ。
「ウチはもともと『高反発バット』でも飛ばす選手はいないので(笑)。だから、ウチのように守り勝つチームにとってはプラスでしょう。秋季大会でも『昔のバットだったら内野を抜かれてたなあ』というシーンがいくつもありましたから」
飛ばないバットを歓迎する指導者は他にもいる。西日本短大付(福岡)の西村慎太郎監督(53)もそうだ。
「低反発バットが導入されてから、練習では木製バットを使っています。だいぶ感覚は近づいてきていますね。大学や社会人、プロなど、次のステージでも野球をやる子にとっては非常に良いことだと思います。守備や走塁がより重要になったこともそうです」
東洋大姫路(兵庫)の岡田龍生監督(63)は「これまでの高校野球はバットの性能で打球が飛んでいたことがよくわかったはず」と、こう話す。
「低反発バットで打球を飛ばしたければパワーと技術の両方が必要です。昔のようにドアスイングでも……なんてことはもうありません。木製バットのように内側からコンタクトし、芯に当てないといけない。そのためにも、指導者も今まで以上に勉強をし、技術指導の引き出しを増やして、正しいスイングを子どもたちに教えなければいけません」
飛ばないバットも悪いことばかりではなさそうだ。