最悪の場合、死者数は29万8000人。今年の春、南海トラフ巨大地震の新たな想定が出されました。命を守る備え、「事前防災」の取り組みが各地で進んでいます。
1年を通じて大勢の観光客が訪れる鎌倉の名所・小町通り。そんな人気の観光地で、この春から、ある備えが始まっています。
小町通り商店会会長
「小町通りは住民の方々よりはるかに観光客が多い。津波がおきたときにどっちに逃げたらいいか分からない」
小町通りでの課題。それは“土地勘のない観光客を津波から、どう逃がすか”です。
南海トラフ地震では、鎌倉市にも最大で10メートルの津波が襲来。被害は小町通りまで及ぶおそれも。
現在の想定では小町通りに避難する人が集中。懸念されているのは、大勢の観光客が一斉に避難しようとして倒れる「群衆なだれ」です。
商店会幹部
「入り口は広くなっているが、次の区画のところで急に狭くなる。まっすぐ逃げてしまうと、まず停滞がおきてしまう」
現在、避難方法について案内がほとんどない小町通り。
目指すのは、店員が自ら避難しつつ、観光客を導く「率先避難者」となることです。
商店会は今後、避難の目印やマップなどを整備する方針です。
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「事前防災」の動きは、南海トラフ巨大地震が懸念される高知県黒潮町でも進められています。
この町で人気のお土産は、地元の名産を詰めた「缶詰」。そのパッケージには、「34メートル」の旗印が…。
黒潮町缶詰製作所・友永公生取締役
「黒潮町に出された(最大)津波想定34.4メートルを模した形に。危険な想定だけど向き合おうと」
いまでは「防災の町」として注目される黒潮町。しかし13年前、初めて出された34メートルの「津波の想定」に、町中が衝撃を受けたといいます。
黒潮町役場情報防災課・村越淳課長
「どこに逃げても一緒、逃げる場所もないということで、避難を放棄する、避難放棄者がたくさんいた」
救える命を守りたい…町が整備を進めたのは――
黒潮町役場情報防災課・村越淳課長
「津波から避難するための津波避難タワーになります」
町の中央にたたずむ、津波避難タワーです。
大きさは日本一。雨や風をしのげるスペースのほか、備蓄も充実させ230人ほどを収容することができます。
さらに町が進めたのが、家屋の「耐震化」です。
黒潮町で生まれ育った島本さん。2023年、耐震工事を行いました。
耐震工事を行った島本定さん
「ここのすみに金具をうちつけて補強しています」
黒潮町では1戸あたり100万円以上の補助金を用意。職員が1軒1軒訪問して地道に耐震化を行うよう訴えてきました。
耐震工事を行った島本定さん
「まず地震が大きく揺れると思うんですよね。そのときに潰れてしまったら家から脱出できない」
国は避難の徹底により津波による死者を7割、耐震化によって全壊する建物の数を7割それぞれ減らせるとしています。
「備える」という選択が、災害後の未来を変えていきます。