電撃トレードも「驚きはなかった」ホークス→DeNAのクールな男・三森大貴がもたらす“常勝のDNA”「勝利に貪欲にプレーするのが当たり前、ですから」

 今シーズンから横浜DeNAベイスターズでプレーをする三森大貴に、「自分の性格を分析してみると?」と質問すると、落ち着いた口調で次のように言うのだ。

「自分ってものを冷静に見ているかなとは思います」

 己のことを俯瞰できるというのは、アスリートとしては大切な気質だ。

「まあ、わちゃわちゃしないわけでもないんですけど、冷静だとは思います」

 そう言うと三森は、クールな笑みを浮かべた。

驚きのトレード……でもなかった

 昨年の12月23日、福岡ソフトバンクホークスの三森とDeNAの濵口遥大との交換トレードが両球団から発表された。当時メキシコでプレーし今季からリリーフ転向予定だった濵口と、ソフトバンクでレギュラーを張ったこともある内野手の三森のトレードは驚きをもってファンに受け入れられた。

 実際、三森本人はトレードと聞いたとき、どのように思ったのだろうか。

「僕は代理人の方から聞いたのですが、あまり驚きというのはなくて、すぐにもう一回、自分の野球人生を積み重ねていけばいいと思ったし、プラスに考えることができました」

 すぐに切り替えることができた。ただ8年間過ごした愛着のあるソフトバンクを離れるのは寂しかったのではないだろうか。この問いに三森は軽くかぶりを振った。

「いや、寂しいというのはなかったですね。あくまでも野球選手は、試合に出て活躍するのが一番だと思うし、それはどのチームであろうが一緒です。僕としては、またここからベイスターズで(実績を)積み上げて行けば、また違う未来が拓けるはずだし、新鮮な気持ちでチャレンジしたいと思っています」

不完全燃焼だった昨シーズン

 先ほど自分を冷静に見ることができると語っていたが、その目線は足元はもちろん、しっかりと行く末を見据えている。

 昨季は不完全燃焼となった1年だった。“走攻守”を兼ね揃えたセカンドとして2022年、2023年シーズンは100試合以上に出場したが、昨季は開幕直後に右手人差し指を骨折し、さらに復帰後の5月30日の巨人戦(東京ドーム)で再び右手人差し指を負傷。右示指末節骨関節内脱臼骨折と診断され登録を抹消された。結局昨季は、25試合の出場に終わった。

「あまり(怪我の)タイミングがよくなかったし、元々開幕してから充実したシーズンを送れそうなビジョンも微妙だったので、難しい1年間になってしまいましたね」

 三森は淡々とそう語った。11月上旬に改めて右示指骨内異物除去術および観血的関節受動術を行い「今は不安なくプレーできています」と、万全だということだ。

「すぐ馴染めるよ」と

 DeNAへのトレードに際し三森は、母校である青森山田高校の同級生の堀岡隼人、同校の先輩である京田陽太、そしてソフトバンク時代にお世話になった森唯斗に連絡をとった。

「みんな『すぐ馴染めるよ』と言ってくれましたね」

 そう言うと三森は少しだけ表情をゆるめた。

「外から見ていても明るいチームだなと思っていましたが、キャンプに参加してもその印象どおりでしたし、本当にやりやすくて充実した日々を送っています。同級生も多いですし、いろんな選手と和気あいあいとしゃべっていますよ」

 またソフトバンクを離れる際には、お世話になった人たちに連絡をしてお礼を伝えた。

「みなさんから『お互い頑張ろうな』って言葉をかけてもらいました」

 2016年のドラフト会議で4位指名され、高卒の叩き上げとして成長を遂げることのできた8年間。強豪チームでの日々は、三森の野球人生において掛け替えのない時間になったという。

「一番学んだのは野球に向き合う姿勢ですね。先輩方は本当に練習しているし、野球に対して常にストイックでした。いくら結果を出そうが、毎年進化しつづけるんだって、真っすぐな方々が多かった。もちろん、オンとオフはあるんですけど、それでも野球のことを考えている時間が長いというか、本当に勉強になりましたね」

強いチームでやってきたという自信

 そう言うと三森は、確信を持った表情で次のようにつづけた。

「本当に強いチームで8年間やれたというのは自信になっているし、ホークスやファンの方々には感謝しています。またここから上手くなりたいという気持ちも強いので、頑張っていきたいですね」

 改めてDeNAでの日々が始まったわけだが、移籍に際し、首脳陣やフロントからはユーティリティー性を求められた。

「基本的にはセカンドとサードをメインに、またシーズン中はゲームの途中から入って、そのままファーストなど、いろんなポジションをやってもらう予定だと伝えられました。そこは僕のイメージと一致していましたね」

チームの課題“守備力”に貢献する

 キャンプでは外野の守備練習にも入るなど準備を着々と進めている。今季“守備力”を大きなテーマに掲げているDeNAにとって三森の加入は大きな武器になるだろう。

「僕の持ち味は“走攻守”なんですけど、とくにバッティングや走塁は強みだと思うので、そこをしっかりと見せていきたいですね」

 盗塁はもちろん、一塁到達のスピードや状況を見極め次の塁を狙う積極的な走塁にはセンスが感じられ、また打撃においては広角に打ち分けることができパンチ力もある。果たしてセ・リーグの投手にどのような印象を持っているのか。

セ・パの投手の違いとは?

「気持ちよく打たせてくれないイメージですよね。パ・リーグのピッチャーは力で抑えにくるけど、セ・リーグは打ち損じたのか、抑えられたのかよくわからない攻め方をしてくる感じなんです」

 ただ、ゾーンを広く使い、低めのボールにも対応できる三森ならば、早期に適応できる可能性は高い。

「そうですね。ウエスタン・リーグではセ・リーグのピッチャーもいましたし、まあ最初はやってみなくちゃわからないことも多いでしょうから、打席を重ねてしっかりと対応できるようにしたいですね」

 三森が担うとされるポジションには、牧秀悟や宮﨑敏郎という不動のレギュラーがいるが、バックアップも含め、三森というカードがあることはチームにとって非常に大きい。

 今季初実戦となった2月8日の紅白戦では、ライトフェンス直撃のヒットや、浅めの右飛で二塁からタッチアップを試みて成功させるなど持ち味をいかんなく発揮し、首脳陣にアピールした。

 さて、あくまでも冷静沈着な三森だが、野球という生業について果たしてどのような思いを抱いているのだろうか。そう問うと、三森はしばし考えて口を開いた。

「好きで始めたことが、今も仕事としてやれているというのは、世間を見てもなかなかないことだと思うので、やれるうちは全力で取り組みたいなと思っているんです」

 ただ野球というスポーツは、トータルで見れば失敗が多く、報われることが少ない。そのなかで、モチベーションや自分を奮い立たせる原動力になっているものとは何だろうか。

「奮い立たせるというものは別にない」

「いや、奮い立たせるというものは別にないんですよ」

 三森は、にべもなく言った。

「プレーすることが当たり前ですし、みんな勝つためにやっているので、いかにそこに貪欲になれるか。だから改めてモチベーションとかじゃなくて、それが自然になっているんですよ」

 あくまでもプレーをして勝つことが大前提。だからそこに感情の揺れはない。淡々と語る三森からは、静かな、しかし芯のある情念が漂っているように感じられた。

 心機一転、横浜での日々。「楽しみですか?」と尋ねると、三森は頷いた。

「本当に新しい環境ですし、またリーグの違いもあるので、楽しみでしかないですね。あとは怪我をせず、自分の仕事をまっとうしたい」

主力として優勝を味わうために

 DeNAは今季、27年ぶりのリーグ優勝を狙っている。三森はソフトバンク時代にリーグ優勝を3度経験しているが、いずれも主力選手としてではなかった。ゆえに、このチームの中心選手として戴冠を味わいたいという気持ちは強い。

 チームは『横浜奪首』のスローガンのもと長いシーズンを戦うわけだが、三森はリーグ優勝するためにはなにが必要だと考えているのか。

「よいときも悪いときもあると思いますが、とにかく一喜一憂することなく、毎試合切り替え、全員で勝利に向かっていけばいいと思います」

 三森は確信を込めてそう語った。

 今季から新しくなったユニフォームの背中に輝く26番。近年はトレード相手になった濵口が背負っていたが、元々横浜の26番は、田代富雄や佐伯貴弘といった中心打者が付けていた番号だ。横浜スタジアムで、“走攻守”にわたりクールに躍動する三森が見られるのが、今から楽しみだ。

文=石塚隆

photograph by Sankei Shimbun

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