「(河村勇輝の活躍は)全部見ています」田臥勇太が語る河村勇輝の“好きなところ”「まず彼のパスの速さが好きで…全然違和感がない」

 かつて日本人が立つことは不可能と言われた最高峰の舞台。田臥勇太によってその道が切り拓かれたのは、21年前のことだった。自らの正統後継者ともいえる小柄なポイントガード・河村勇輝の奮闘を、今も現役を続ける日本バスケ界のレジェンドはどう見ているのか。
 発売中のNumber1115号に掲載の《[先駆者インタビュー]田臥勇太「彼のパスの速さが好きなんです」》より内容を一部抜粋してお届けします。 河村勇輝の活躍は「全部見ています」

 渡邊雄太が2018年にNBA入りしてから7シーズン、リーグには常に日本人選手がいる状態が続いている。今ではそれが当たり前のような事実となっているが、それまでは日本人がNBAにいるということは容易に考えられるものではなかった。

 最初にその壁を破ったのは'04年にフェニックス・サンズで日本人初のNBA選手という称号を手にした田臥勇太だ。通算4試合というキャリアながらも、デビュー戦で3Pシュートを沈めたあの衝撃は今でも多くのファンの脳裏に焼き付いている。そんな田臥にとって河村勇輝はどのように映っているのか。

――河村選手の活躍は見ていますか。

「全部見ています。ハッスルでは主力ですし、グリズリーズでもベンチにいる時はどうしているのかなどチェックしています。プレーはもちろんですけど、Gリーグの環境やNBAの環境に対してどういう姿勢でやっているのかなというのはすごく注目しています。河村選手のことは高校時代から見ていますが、やはり自分と同じサイズ感での活躍というのは親近感が湧きます。どういう目線で見ていたり、どういう雰囲気があったり、どういう感じでやっているのかなというのはやっぱり興味があります」

田臥がプレーした時代との違い

――今のGリーグと田臥選手の米挑戦中のGリーグ(当時はDリーグ)はだいぶリーグとしての環境も立ち位置も違いますよね。

「僕の時はDリーグ1チームに対してNBA3チームが関わっているという状況だったので、そこが一番大きく違いますね。それが今では全チームがGリーグチームを持っていて、そこから上に上がって活躍している選手も年々増えていっています。オールスターでも同じ枠としてプレーできたりと、選手たちがより身近にNBAを感じられる場になっていると思います」

――より育成機関に近くなってきた感覚があります。それでも「俺が、俺が」という気持ちはやはり強く感じますか。

「基本そうじゃないですか、見ている限り。でも自分の頃はよりそれが強くて、戦術なんてあってないようなものでした。持ったら点を取りにいく、そうじゃないと駄目な部分も当然ありますし、その中でどう生きるか。練習の段階から何も常識が通じるレベルじゃなく、それが基本なんですよね。選手たちはNBAに入るためにやっているんだからそれが当然だという状態で、そんな中でもヘッドコーチもいるのでチームバスケもしなければいけない。そのバランス、ハングリーさ、サバイバルという面はすごく経験しました」

――ポイントガードだとボールを手放さないといけない中での自分のアピールはどういうバランスでやられていましたか。

「すごく考えながらやっていました。自分の持ち味というかやっぱり好きな部分はパスなんで。まずパス優先のガードなので、ゲームメイクという面は他の選手よりもアピールしないといけない部分でした。それを分かってくれているコーチだと使ってくれるので発揮しやすい部分はありました。セットオフェンス重視のコーチだとすごく苦労した面もありました」

「僕が彼の好きなところは…」

――河村選手が最初に全米で注目されたのもやはりパスでした。

「僕が彼の好きなところは独特な空気感とリズム感なんです。まず彼のパスの速さが好きで。パスを展開するときに弱いと全体が重くなったり、流れが一定になってしまうことがあると思うんですよ。でも、彼のパスの出し方は、特にアメリカに行ってから利き手とは逆の左手で処理することが増えている感じがします。もらってから右手にだと移動させる分、出すのが遅くなるんです。もらった流れでそのまま出せるっていうのはものすごく大きな違いがあるんです。そういう処理の仕方が、向こうに行ってよりスピードが増している。やっぱりそうやらないと出せない。それをやっている時の彼の身体の動きとか、全体のバランスとかが、とても上手く動かしてるなと思います。だからプレーしていても全然違和感がないんですよね。

 そして今の時代のバスケはスペースがあるからドライブができる。すると周りが合わせてくれる。周りの合わせようとする意識もやればやるほど変わってきているなと見ていて思います。そうすると彼のパスのバリエーションも増えてくるし、シュートも狙えるようになる。そういう全ての空気感が、見ている人たちも『今度は何をやるんだ』という風に感じているんじゃないかなと思います」

――そうやってちょっとずつ詰めていってるんですね。

「それを無意識でできているのか、意識しているのかは僕も逆に聞いてみたい部分ですね。僕も経験してきましたが、あれだけ周りが大きいと出すのは大変なんですけど、味方の的も同じく大きいので出しやすい部分もあるんです。その辺りは国際大会であれだけたくさんやってきたので、免疫が付いていたんだろうなと感じています」

文=大西玲央

photograph by Kiichi Matsumoto

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