あのマイク・タイソンがニューヨークのビッグ興行で超異例の圧巻デビューを飾った堤麗斗を「ワンダブル!」と絶賛!今後も米国が主戦場に

 ボクシングのアマ9冠の堤麗斗(22、志成)が2日(日本時間3日)、ニューヨークのタイムズスクエアの特設会場での大型興行で、プロ初戦に挑み、スーパーフェザー級6回戦で、1勝2敗1分けのレベール・ウィッティントン(25、米国)を3−0判定で下して白星デビューを飾った。ガードを固めた相手にKO決着はできなかったが、2ラウンドにロープへぶっ飛ばしすなど見せ場を作り中継局のゲスト解説を務めたヘビー級の元3団体統一王者のマイク・タイソン氏(58)が「ワンダフル!」と絶賛した。なおメインでは“問題児”のライアン・ガルシア(26、米国)がダウンを奪われるなど精彩を欠いた戦いでローランド・ロメロ(29、米国)に判定負けし、1年ぶりの復帰戦を飾れず、またガルシアと因縁のあるWBC世界スーパーライト級王者のデビン・ヘイニー(26、米国)はホセ・カルロス・ラミレス(32、米国)に判定勝ちした。

 2回にロープへぶっ飛ばす見せ場

 堤はタイムズスクエアに作られた特設会場に大型のタクシー「イエローキャブ」から登場した。ブランド・アンバサダー契約を結んだ今回の興行主催者でもある米老舗専門誌「ザ・リング」のロゴが背中に入った真っ赤なジャケット、トランクスに着替えて颯爽とリングに登場した。縦長に設置された観客席は狭かったが、周辺には、中継したDAZNのアナウンサーが約20万人とも説明した多くのファンが集まっていた。
「どこまで強くなるんだろう、という内容で勝ちたい。自分のボクシングができれば、そう見てもらえる」
サウスポースタイルの堤のオープニングブローは右のボディショット。フェイントを入れながら続けて右のフックを豪快に振り回した。身長、リーチでは、堤を大きく上回っていた同じサウスポーのウィッティントンは、最初こそジャブを伸ばして好戦的に打ち合いに応じようとした。だが、堤が右のジャブ、フックからボディ、ワンツーと強打を打ち込みプレスをかけていくと徐々にロープを背負わざるを得なくなった。
堤は2ラウンドに見せ場を作った。右のフック、ボディを浴びせてから、頭の位置を右へ移動して左のオーバーフックを顔面へ叩き込んだのだ。ウィッティントンはロープに吹っ飛んだ。ロープダウンを取っても不思議はないほどの強烈な一撃。スパーリングパートナーを務めていた元WBOアジアパシフィック・スーパーフェザー級王者の木村吉光(志成)が「見えない」「消える」と評した堤の特徴的なパンチのひとつ。堤は左右のボディ、右フック、左ストレート、そして左右のアッパーとラッシュをかけたが、亀のようにガードを固められフィニッシュに持ち込むことができなかった。
3ラウンド以降、堤は頭をつけたインファイト、ミドルレンジとすべての面で一方的に支配した。近い距離ではガードの隙間をみつけて、左右アッパー、右フック、ボディを叩き込み、中間距離では、ワンツーをブロックの上から強引に打ちこむ。セコンドについていたイスマエル・サラス・トレーナー、佐々木修平会長からは「腹が効いている!」と声が飛び、ほとんどの時間でロープを背負わせたが、ディフェンスに徹し切った相手を倒すのは難しい。
ポイントで不利だったことを相手陣営もわかっていたのだろう。最終ラウンドを前に相手のトレーナーは、ウィッティントンに「分かっているか?おまえは起きているのか?戦いに勝つには1つだけだ。戦うことだ。この試合に勝ちたいだろう。ラストラウンドだ。相手がお前をノックアウトするか、お前が倒して勝つかだ。分かっているか」と逆転KO狙いを指示した。
その6ラウンドはリングの中央でジャブから勝負にきたが堤のスピードについていけない。堤は逆に余裕のノーガードで反撃を外して、右フック、左ストレートと攻め込み、またウィッティントンはロープを背負うことになった。そしてゴング。KO決着できなかったことの悔しさがあるのだろう。堤に笑顔はなく、何もできなかったウィッティントンはコーナーでうなだれていた。
読み上げられたジャッジペーパーは2人が「60―54」と堤にフルマークをつけ、もう1人が「58−54」。3−0判定でニューヨークでのデビュー戦を飾った。
リング上に今回のビッグマッチの実質的な主催者である「リヤドシーズン」のトップでサウジアラビアの総合娯楽庁のトゥルキ・アルシェイク長官が上がり、記念撮影を行った際にようやくホッとしたような笑顔を浮かべた。

 データを集計しているコンプボックスによると、総パンチ数は堤が386発で相手が331発、そのうち効果打は堤が141発で相手が65発、またジャブは堤が132発中33発を的中、相手が167発中29発、パワーパンチ的中は堤が108発で相手が36発と数字上でも圧倒した。
ライブ中継した「DAZN」のゲスト解説を務めたのは、あの“レジェンド”タイソンだった。近年はエキシビションマッチで復活を遂げている。そのタイソンが「ワンダフルだ」と称賛した。
「とてもアグレッシブでパンチを受けない。戦っている相手も面白い。(こんなボクサーだとは)予想していなかった。興奮している」
スキルのレベルが高いということか?と聞かれ「その通りだ」とダミ声で返した。
堤は1ラウンドこそ固さが見えて右のジャブを被弾したが、6ラウンドを通じてクリーンヒットはほぼ一発ももらわなかった。タイソンは、堤の攻撃性に加えて、そのディフェンス技術も評価したのである。
志成ジムの大先輩で5月11日にWBA世界スーパーフライ級王者のフェルナンド・マルティネス(アルゼンチン)との再戦に挑む井岡一翔も「ニューヨークのああいう試合でデビューすることは、僕もそうだけど日本人は誰も経験していない。新たな日本の歴史を作っていく選手。次の世代への影響にもなる。いろんなものを背負って戦わねばならない中でパフォーマンスを出すのは難しいが、それだけの期待と使命を背負っている。日本人ボクサーとして世界を代表する選手になってもらいたい」とメッセージを送っていた。
堤は2021年の世界ユースで金メダルを獲得し、習志野高―東洋大の名門で腕を磨いたアマ9冠のエリート。兄はプロ転向3戦目でOPBF東洋太平洋フェザー級王座を獲得し、現在WBA世界スーパーフェザー級4位の堤駿斗だが、デビュー前から、アルシェイク長官に見初められ、SNSで、異例のメッセージが届き、本人が「ビックリした」という今回の異例のニューヨークデビューが決定した。
「リヤドシーズン」が買収したその「リング誌」との異例のブランド・アンバサダー契約にサインをしており、デビュー戦のインパクトという点では物足りなかったが、今後も、堤は海外のリングを主戦場に戦っていく方向。
渡米直前には「目の前の試合を一歩一歩クリアして一歩一歩成長していくしかない」と口にしていた。当面の目標は「10戦以内での世界挑戦」だが、「世界は通過点。パウンド・フォー・パウンド1位のボクサーになるのが目標」と志は大きい。
スーパーバンタム級の4団体統一王者の井上尚弥(大橋)が4日(日本時間5日)に米ラスベガスのT-モバイルアリーナでメインを張るメキシコの記念日「シンコ・デ・マヨ」ウィークの先陣を切った堤は「日本人の強さ」をニューヨークから世界に発信した。

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