吉本興業が2011年4月からスタートした芸人や社員が47都道府県に住み、地域活性化に貢献する取り組み「あなたの街に〝住みます〟プロジェクト」に参加する芸人に直撃する企画「住みます芸人のリアル」。第2回は「奈良県住みます芸人」として活動するお笑いコンビ、十手の十田卓(40)とエナジー西手(36)の登場です。(柏村翔)
歴史と文化が息づく古都の奈良の街を走っている。奈良県住みます芸人として活動するお笑いコンビの十手だ。十田、エナジーともに奈良に住み、ともに2児のパパとして奮闘している。
十田 「僕は奈良出身でずっと奈良県住みます芸人として活動したいと思っていました」
エナジー 「僕らは劇場より営業の仕事が多くて盛り上げる仕事が多かった。住みます芸人として地域に密着する方がスキルを生かせると思っていました」
奈良出身の十田は陸上競技界の名門・大阪学院大の陸上部出身で大学ハーフマラソン関西大会2位の実績を持つ。卒業後の2007年にNSC大阪校に入学し、08年に同期で高校時代は島根の野球強豪校・開星高出身のエナジーとコンビを結成した。
2人は15年に奈良県住みます芸人を拝命し、17年から十田の地元である下市町で「下市町観光大使」を務める。奈良のテレビやラジオ、イベントに出演する傍ら、大阪マラソン、奈良マラソンなどのマラソン関連のゲストランナーや司会として活躍する。
間寛平(75)がホストを務める市民マラソン大会「淀川寛平マラソン」では盛り上げ役を担う。月に1度の練習会には〝ほぼ皆勤〟で出席し、十田は「十田ステップ」、エナジーは「エナジー!」と叫び、参加者を乗せる。22年大会では陸上の実業団に所属しながらお笑いの活動をするげんきーずの宇野けんたろう(42)、東洋大陸上部出身のがんばれゆうすけ(40)らと最強芸人チームを組み、駅伝の部で優勝を果たしている。
十田 「陸上は大学で完全燃焼することができました。(お笑いを始めた当時は)チュートリアルさんやブラマヨさんがM−1で活躍しているときでお笑いの道に進みました」
エナジー 「(高校時代は)8番手ピッチャーで土日の試合では登板する機会がなくてずっと走っていました。芸人になって走ってみたら、速かったみたいな感じです」
ともにフルマラソンの自己ベスト3時間以内の快足ランナー。お笑い界最速コンビが誕生するきっかけは宮川大助・花子が率いるマラソンチームの勧誘を受けたことに始まる。先輩芸人との交流が本気に変わり、現在はTBS系特番「オールスター感謝祭」の「赤坂5丁目ミニマラソン」でおなじみの森脇健児(58)と吉本興業と松竹芸能のライバル関係を超えた交流を続ける。
〝森脇師匠〟からは「控室に入るな」、「最後の1人になるまで手を振って盛り上げろ、しゃべりまくれ」、「マラソンを続けていれば仕事が増えることはあっても減ることはない」などの熱いメッセージをもらっているという。
十田 「マラソン大会はこうやって盛り上げるんやとイロハを教えてくださる。ホンマに大きい存在です」
エナジー 「森脇さんの(YouTube)番組(やる気!元気!森脇チャンネル)に出演させていただき知名度が上がりました。(ランナーの方に)よく声を掛けていただけるようになりました」
マラソン芸人としての地位を確立した2人は今年3月には自身がレースディレクターとなり、グルメやイベントまで総合プロデュースした第1回十手・下市町リレーマラソン2025を開催した。2人は同大会を「単独ライブ」と位置付けており、十田は「単独ライブは最大で100人ぐらい。マラソン大会では550人が集まってくださった。いつもイベントに呼んでもらってばかりだったのでようやく奈良に還元ができました」と実感を込めた。
奈良で生活する2人にオススメの場所やイベントを尋ねると、十田は①創業800年以上の日本最古の鮨店「つるべすし 弥助」(下市町)②ショップ、カフェ、レストランなどが楽しめる大型複合施設「KITO」(同)③夏祭り「下市夢まつり」の3つを挙げた。
では相方はどうか。エナジーは①修験道の聖地で女人禁制として知られる大峰山(山上ヶ岳)②大峰山近くの洞川温泉でひょっとこのお面を被って踊るユニークな夏祭り「行者まつり」の2つを選んだ。エナジーは楽明(がくみょう)の法名を持つ真言宗醍醐派修験者で修行の成果として「芸能界で唯一、結界を張れる」と自負する。
2人には胸が熱くなる出来事があった。5月にNSC時代から同期のツートライブが結成16年以上の漫才師が競う賞レース「THE SECOND〜漫才トーナメント〜2025」で初優勝。十手は営業、ツートライブは劇場中心で顔を合わせたり、連絡を取る機会は少ないが、テレビの前で拍手を送った。
十田 「2人はNSCのときからずっとおもしろかったです。(賞レース優勝は)タイミングだけと思っていました。うれしいです」
住みます芸人の浸透などにより、テレビや劇場だけではなく屋外の営業を中心に活動するお笑い芸人が増えつつある。エナジーは「女と男の市川さんが〝屋根なし芸人〟と言い出したんですよ。劇場やテレビの屋内で活躍する芸人ではなくて野外でテンションを上げて盛り上げる芸人のことです」と説明する。女と男、らいおんうどんら屋根なし芸人仲間とともに新ジャンルを切り開き、奈良を盛り上げる。
エナジー 「もっと奈良のことを勉強して、奈良に住んでいる方が知らない魅力を発信していきたいです」
十田 「僕らは〝屋根なし芸人界のツートライブ〟になりたいです」
7月5日には奈良・生駒市のたけまるホール小ホールで近畿の住みます芸人によるお笑いライブを開催する。結成17年目の仲良しコンビ。奈良への恩返しを信じて走り続ける。
■十田卓(じゅうだ・たく)
1985(昭和60)年1月19日生まれ、40歳。奈良県下市町出身。2007年NSC大阪校30期生。08年3月にエナジー西手と十手リンジン結成。14年に今宮こどもえびすマンザイ新人コンクールの福娘大賞、18年には上方漫才協会大賞のトータルコーディネイト部門賞に輝いた。23年に現コンビ名に改名。趣味はマラソン、競馬、釣り、ボウリング。マラソンの自己ベストは2時間46分38秒。身長163センチ。
■エナジー西手(えなじーにしで)
1988(昭和63)年7月26日生まれ、36歳。大阪府高石市出身。2007年NSC大阪校30期生。08年3月に十田卓と十手リンジン結成。14年に今宮こどもえびすマンザイ新人コンクールの福娘大賞、18年には上方漫才協会大賞のトータルコーディネイト部門賞に輝いた。23年に現コンビ名に改名。趣味はロードバイク、野球、お酒、アウトドア。真言宗醍醐派修験者で法名は楽明(がくみょう)。マラソンの自己ベストは2時間45分47秒。身長180センチ。
★奈良県住みます芸人 十手のほか、落語家の桂ちきん、巨漢グルメ芸人のもっち、元りあるキッズでピンの安田善紀の4組。2016年から地元桜井市の広報大使を務める笑い飯の哲夫は歴史や仏教に造詣が深く、実家で田んぼや畑をしている。アメリカを拠点に活動しているピンのゆりやんレトリィバァは吉野郡出身でかつては住みます芸人として活動していた。