女優、今田美桜(28)が主演するNHK連続テレビ小説「あんぱん」(月〜土曜前8・0)が31日にスタートする。国民的キャラクター「アンパンマン」の生みの親、やなせたかしさんと小松暢さん夫妻をモデルに描く物語。明るく夫をけん引した主人公を体現する今田は「諦めずに頑張り続ける姿を見て、勇気をもらっていただけたら」。信念を貫いて射止めた朝ドラヒロインとして〝元気100倍〟になる作品を届ける。(ペン・宮越大輔、カメラ・斉藤佳憲)
〝出来立て〟の「あんぱん」が間もなくお茶の間へ。「やっとだ!っていう気持ちです。きっと皆さんの心が温かくなるんじゃないかなとワクワクしております」。放送を直前に控えた今田の胸は、ドキンドキンと高鳴っていた。
同作はやなせさん、暢さん夫妻をモデルに、2人が戦前から戦後の激動の時代を生き抜く姿を描くオリジナル作品。夢を忘れなかった2人がさまざまな荒波を乗り越えて「アンパンマン」にたどり着くまでの愛と勇気の物語だ。
舞台となる高知県でのクランクインから半年が経過。北村匠海(27)扮する気が弱い柳井嵩をグイグイ引っ張っていく主人公・朝田のぶを演じる今田は「生活の一部になっていると言いますか、ナチュラルにのぶになれている気がします」と充実の笑みを浮かべる。その理由には姉妹役の河合優実(24)、原菜乃華(21)らを挙げ「やっぱり現場の空気感。穏やかでのほほんとしていて、皆さんの放つエネルギーが柔らかくて助かっています」と感謝する。
話題作に引っ張りだこの売れっ子にとって、朝ドラヒロインは大きな目標だった。高校2年のときに地元・福岡でスカウトされ、モデルデビュー。女優を目指して2016年に上京し、翌17年に本紙の注目ガールズ企画「気になるあの娘」に登場した。
記者が持っていた当時の記事に目を落とすと「覚えています。お世話になりました」と照れ笑い。そのとき朝ドラへの思いも語っていただけに「これまで何度もオーディションを受けていたので、決まったときはいろんなことが蘇ってきて…。何より家族が喜んでくれたのがすごくうれしかったです」と振り返った。
主人公は足が速く、行動力とスピード感にあふれるキャラクター。勝ち気な性格から「ハチキン(=土佐弁で男勝りの意味)おのぶ」「韋駄天おのぶ」とも呼ばれる。
役作りでは数少ない資料の中、やなせさんの著書に出てくる暢さんや、夫妻が互いに撮影し合った写真などを参考にしたといい、「懐が深くて、柔らかさと強さをすごく持っていらっしゃる方なんだろうな」と分析。主人公の持つ「ブレない芯の強さや周りの人を引っ張っていく力に憧れている」と明かし、「自分もそうなりたい。のぶと似ているかどうか分からないですけど、似ていたいですね」とはにかんだ。
何よりのぶと似ているのは、夢を追いかけ続けたところだ。物語は女性が夢を抱きにくい時代だが、家族を説得するシーンについて「今も昔も変わらないのは、『諦めない』ということ。私もこの道に進みたいという夢を持ったときに、両親を説得するのにも勇気がいりました。だけど諦めなくてよかったなって思っています」と述懐。「諦めなかったら道は開けるし、それがないとかなうものもかなわない。諦めずに頑張り続けているのぶを見て、勇気をもらっていただけたら」と語る。
自身も「このお仕事が好き」という思いを力に走り続けてきた。「諦めずにやってきたことで今こうして朝ドラのヒロインをさせていただけて。もちろん大変なこともいっぱいありますけど、好きだから乗り越えられています」。愛らしいルックスや丁寧に質問に答える姿は上京当時と変わらないが、役者として積んだ経験が自信となって言葉に現れている。
「上京した頃は目の前のことに必死すぎて先のことを考える余裕もなかったのですが、今はもう少し広く見られるようになったのかな」とほほ笑み、「1年間撮影を頑張るっていうのは他の作品ではないので、それを経験させていただけているというのは今後、絶対に自分の糧になると思う」と期待。
「あんぱん」を栄養源に、これからも〝新しい顔〟を見せ続ける。
★土佐弁「聞きまくって」習得中
役を通じてさまざまなスキルを磨いている。「韋駄天おのぶ」らしく走る場面では、撮影スタッフが追いつけなくなるほど走力がアップ。現在は主人公が新聞社で働くシーンに向け、実際に暢さんが身に付けていた速記を勉強中で「なぎなたの稽古もあったり、のぶを演じていなかったらやらないようなことを勉強させてもらっているので、できるようになってうれしい」と喜んだ。
土佐弁も「聞いて聞いて聞きまくって慣れていった」と奮闘。好きな言葉に「しちゅう(=している)」と「たまるかー(=びっくり)」を挙げ、「いろんな感情を乗せられるのでアドリブでも使っています」とほほ笑んだ。
■物語 昭和初期、高知の町中をものすごい勢いで走る少女「ハチキンおのぶ」こと朝田のぶ(今田)がいた。一方、幼い頃に父を病気で亡くした柳井嵩(北村)は、伯父の家に引き取られ、転校先の学校でのぶに出会う。
戦争が近づく頃、のぶは妄信的な軍国少女に。戦争が始まり、嵩は出征。のぶは戦争で全ての価値観が変わり、「何が正しいかは自分で見極めなければならない」と高知の新聞社に女性初の記者として就職。戦後、嵩も新聞社に入社し、2人は同じ雑誌の担当に。
のぶは嵩に「先に東京に行って待っているわ」と告げ、新聞社を辞め上京。のぶを追いかけ上京した嵩と、オンボロアパートでの生活が始まる。「どんな環境でも楽しめるこの人と一緒にいたい」と2人は結婚。「手のひらを太陽に」「アンパンマン」が世に出るのは、まだ先のこと―。
■今田美桜(いまだ・みお) 1997(平成9)年3月5日生まれ、28歳。福岡県出身。2015年公開の「罪の余白」で映画デビューし、18年のTBS系「花のち晴れ〜花男 Next Season〜」でブレーク。21年に映画「東京リベンジャーズ」で日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。22年、日本テレビ系「悪女(わる)〜働くのがカッコ悪いなんて誰が言った?〜」でドラマ初主演。ほかにTBS系「ラストマン―全盲の捜査官―」など話題作に多数出演。朝ドラ出演は21年の「おかえりモネ」以来2度目。157センチ。