「20代、30代未婚女子のリアルを描く」女子は自分の悪い顔を見ている感覚になり、男子はスカッとできる作品【ドラマ『結婚詐欺師と堕ちる女』山谷花純×田島亮対談】

ショートドラマアプリBUMP(バンプ)で配信されるドラマ『結婚詐欺師と堕ちる女』で共演を果たした山谷花純と田島亮。「こんなに面白い人がいるんだってことを、もっとたくさんの人に知ってほしいと思って、今回この連載にお誘いしました」という山谷の言葉から、実現した2人の対談。お芝居への熱い想いがほとばしる二人の言葉に、私たちもお芝居をもっと楽しめそうなヒントが散りばめられています。

ショートドラマアプリならではの醍醐味を楽しんで

――田島さんは、山谷さんとご一緒されてどんな印象を持ちましたか?

田島亮(以下、田島)「クランクイン前に衣装合わせがあって、そのときにそのままスチール撮影があったんだよね。それが、ホテルの前を二人で歩いているのを盗み撮りされているみたいなシーンだったんだけど、監督から演出をつけられる前に、スッと自分から腕を絡めてきてくれる感じだったり、一緒に歩くのに一歩踏み出した雰囲気で『この人は、舞台でいろいろ鍛えられている人なんだろうな』って感じて。そのあと花純ちゃんと話したときに、僕も大好きな吉田鋼太郎さんの舞台に2本出ていると聞いたので、やっぱりなと思って。僕も演劇人なので、立ち振る舞いで舞台経験がある人なのかがなんとなくわかる。衣装合わせの段階でもう、役が作れているんだっていうことで、この作品はもう安心してできるなと思いました。僕自身は、最初から役を固めずに入るほうなんで」

山谷花純(以下、山谷)「確かに私は衣装合わせのときに役を固めていっているかも。こういう人だったら、袖はラフにまくっているんじゃないかなとか、シャツはインするのかしないのかとか、ボタンをどれくらい閉めるかなどで役のイメージを作っていく感じ」

田島「なるほどね」

山谷「なので、今回は衣装合わせの後にそのままスチール撮影があったので、すごく役に入りやすかった気がする」

田島「確かに衣装合わせは、一つ役を作っていく上でポイントになるよね。俺は監督と話しながら、『この方はどんな演技を求めているのかな』みたいな方向性を判断するかな」

山谷「今回は、ショートドラマアプリBUMPで配信される作品『結婚詐欺師と堕ちる女』で共演させていただいたのですが、私はBUMP作品に出演させていただくのは2回目。田島さんは今回初めて参加されてみて、BUMPのようなショートドラマならではだなと思ったことはあった?」

田島「アプリ作品は、スマホで観やすいように縦型のものも多いけど、今回は横型だったので、そんなにアプリということは気にしなかったけど、漫画原作という部分は意識したかな。漫画って、表情がデフォルメされていたりするんだけど、監督によってはそれを忠実に再現するタイプと、実写化としてある程度、現実に落とし込んでいくタイプがいるので、今回はどっちかなみたいな感じ。役者としては、リアルに演じたいという気持ちが強いから、最初のカットは結構リアルにいったんだけど、そしたら『もっと口角を上げて笑ってください』という指示が入って。そっち(漫画に忠実)でいくんだなっていう趣旨がわかったので、自分の中で監督の求める演技にシフトチェンジしてみたいな感覚だったね」

山谷「BUMPの場合は、TikTokやインスタグラムで切り抜かれたりするので、そういう意味ではリアリティよりも漫画の再現度を高めることでエンタメとして面白く見せたいという狙いがあると思うんだよね。なので、田島さんがおっしゃったようにリアリティよりもインパクトがあるものを求められるのが、BUMPのようなショートドラマの特徴だなと思ってて。あと、ギュッと短い期間で撮影されるのもショートドラマの特徴。今はテレビよりも配信のほうがドラマの数も増えているし、これって時代だなと思います」

田島「僕はBABEL LABEL(バベルレーベル)というところで裏方として働いていた時期があって。最近でも縦型作品の脚本を書いたこともあるし、ショート(ドラマ)で監督を務めたこともあって。その流れで今、CMを作っているんだけど、CM業界だと“リファレンス(アイデアの参考となる作品)”をいろいろ集めるんですね。縦型作品でもプロデューサーさんはそのリファレンスをいろいろ集めていらっしゃると思うんですけど、役者の立場からすると、縦型作品でそのリファレンスとなるような成功例が思い浮かばない。つまりまだチャンスがある土壌なので、誰がそれを一番最初に作るのかっていう面白さがあると思っていて。だから、そういう作品に立ち会える可能性があるっていうのも役者の醍醐味だと思う。今回の作品は横なんだけどね」

山谷「今回の作品は結婚詐欺師の物語。私は結婚したこともないし婚活パーティーに行ったこともないので、すごく冒険させていただいたというか、おとぎ話の世界に飛び込んだみたいな感覚で。結婚詐欺師を演じた田島さんは、ショートドラマということで何を意識してお芝居をしてた?」

田島「例えば5秒ぐらいためて、間を使った演技をしてもどうせ編集されちゃうだろうなと思っていたので、それを前提に間を縮めてもニュアンスが伝わるような言い方だったりは意識していたと思うな」

山谷「感情で演じるというよりは、技術が求められるジャンルの場所なのかなっていうのは感じた。これをもっとじっくり撮ったら、また違う演技になって全く違う作品になったと思うし」

田島「今回、撮影に入る前にBUMPの作品をいくつか見たんだけど、俳優ではなくインフルエンサーさんが出演されている作品もあって。なので僕ら(俳優)が出演するなら、そういった作品とは違う見え方になったらいいなという気持ちもあった。しっかり舞台もやってるので、演技で見せたいっていうのはね」

山谷「いや、本当に」

田島「例えば、嫌がらせで大量の髪の毛が送られてきて、それを見た花純ちゃんがびっくりするっていうシーンがあるんだけど。現場だと、すでに目の前に物(大量の髪の毛)があるところから演技が始まるので、スタートがかかったときに驚きが小さくなってしまいがち。なので、花純ちゃんのように大きく演技ができるのって、やっぱり舞台経験のない人にはできないことなんじゃないかなって。だから、その驚きという一瞬もちゃんと演技に乗せて、どうショートドラマの中に落とし込むかっていう計算があって。僕ら役者がショートの世界に輸入されている意義というか、『僕らならここまでできるぞ』っていうのを見せるために一緒に戦えたような気がしてる。視聴者のみなさんがどう感じてどう評価されるかはまだわからないけど、楽しみだよね」

山谷「配信モノって、スマホで見るから寄りのカットがどうしても多くなりがち。でも、今回、我々は(役者なら)引きでも(演技を)見せることができるんだぞって思いがあって。それこそ、今回は田島さんと私それぞれの単独のシーンがすごく多くて。別々で撮っているときに、田島さんの一人が電話で話しているところとか、モノローグのシーンとかが本当にステキだった。それって、(演技の掛け合いじゃないから)リアクションじゃないし、誰かの影響をもらうわけではないので、自分の中で組み立ててトータルでどういう風に見せていくのかをしっかり把握していないと成立しないカットなんだけど。そこは演技をしたことのない人には負けない。ってお互い同じ思いを持ちながらカメラの前に立っていたんだっていうことを今、話してみてわかった」

田島「(SNSのフォロワー数などの)数字では負けている役者の僕をキャスティングしてくれたことに対して何が提供できるのかってなったときに、やっぱり全力で考えて、経験と技術を使い尽くすみたいなものは意識していたと思う」

役者として芝居への向き合い方が変わるタイミングとは?

山谷「演技に対して、そういう考え方になったのはいつ頃から?」

田島「バベルレーベルでの経験を経てだね」

山谷「その前はどんな風に向き合っていたの?」

田島「前は……何秒映れるか、みたいな(笑)」

山谷「作品の中でどう爪跡を残すか、みたいな?」

田島「20代の頃は、自分中心の(演技)プランばかりだったね。この役をやることによって、自分がどうステップアップするのか、どういう自分を見せたいのか、みたいなことばかり考えていたと思う」

山谷「それが今のように変化したのは何かきっかけがあった?」

田島「自分が裏方や監督をやったりしたのが大きいのかなって思う。もともとは日本一うまい役者になりたいって思っていたんだけど、(やっていく中で)絶対無理じゃん、って思ったの」

山谷「それはなんで?」

田島「神野三鈴さん、大谷亮介さんというものすごい役者さんと一緒に舞台に立って。年齢的には20年、30年先輩なんだけど、自分が2,30年経ったときにこうはなれないって思ったときに、1位になれないんだったらやめるかっていう気持ちになったんだよね」

山谷「それが30代の初め頃にあった挫折?」

田島「そう、挫折。役者を辞めて、ただの舞台ファンになろうかなみたいなことも考えたんだけど、自分が持っているカード(経験)を見直したときに、バベルレーベルで働いていたから、映像の知識もあるし、(役者として)今までやってきて、うまくはないけれど、別に下手ではない。ルックス的にもメイクと衣装でどんなキャラクターにもなれるし。2枚目も3枚目もできるし汚れ役もできるし……というところで、こういう部分を活かせばニーズはあるかなって、気持ちを完全にシフトチェンジして。“俺は役者なんだ”ではなく“ぜひ、僕を使ってください”っていう気持ちに変わっていったのかな」

山谷「スタンスが180度変わった?」

田島「完全に。作品によって監督なり、相手役の役者さんにとって役に立つ作り方をしようと気持ちが切り替わった。そのタイミングで『アバランチ』(フジテレビ系)というドラマで、藤井(道人監督)さんに映像で復活させてもらって。今まで(撮影後の)編集もやっていたので、ドラマを撮っている最中から(今のシーンを)どう使いたいのかがわかるから、ここは繋がってなくてもいいなとか」

山谷「撮りながらどう編集されるかも想像しているんだ?」

田島「あまり(演技)経験のない方とのシーンで、本当はこっちの立ち位置のほうがやりやすいんだろうなって思ったら、『こっちにやってあげたいんだけどいいか』って提案したり」

山谷「今回、怒涛の撮影スケジュールだったっていうのもあって、1度どうしてもスケジュールが押してしまったことがあって。そこは田島さんが出演していないシーンだったんですけど、助監督をしてくれたんだよね。ついさっきまでかっこいい小早川(悟志)さんだったのに、ダウンジャケットにカチンコを持って割り打ち(カット割りの打ち合わせ)に参加している姿を見たときに、この人、どういう気持ちでこんな風にできるようになったの? いつからなんだろうっていうのを、後ろ姿を見ながらいつか聞いてみたいなって思っていて。現場を回してたと思ったら、終わった瞬間にダウンジャケットを脱いでメガネを掛けて小早川に戻ってカメラの前に立っているわけじゃないですか。もう、その切り替えが怖くて(笑)。でも、今の話を聞いて、自分が今どこにいるのかを理解して、何をしたら誰のためになるのかっていうことを常に考えていらっしゃる方なんだなって思いました」

――山谷さんはどのように演技と向き合っているのでしょうか?

山谷「番手(エンドロールに流れてくる順番)にもよりますよね。自分が主役(一番手)の場合は、周りを引っ張っていかなくちゃいけないっていう気持ちもありますけど、基本的には、私がその作品で何かを残したいというよりは、ご一緒する相手の役者さんがステキに映ってほしいと思っていて。相手にどう影響を与えられるかは考えていて。監督が新鮮なリアクションを欲しがっているんだろうなっていうときは、テスト(本番前の通し稽古)のときにしてないことを本番であえてして、サプライズを仕掛けたり。なので、相手ありきかなと思います。相手も同じマインドだったら、お芝居はやりやすいけど、そうでない人も多いし、そういう方がいないと成り立たないものだと思うので。だから(田島さんのように)相手に対しての思いやりがある役者さんと出会えたときはすごく嬉しい」

田島「その意識は昔から持っていたの?」

山谷「10代の頃は自分が最強でした(笑)」

田島「俺より10年早く、キャリアをスタートさせてるもんね」

山谷「20歳くらいのときに、自分が思っているものと求められるポジションが違うなと思ったことがあって、それくらいから譲れることが増えたんです。そのきっかけはお芝居じゃなくて、自分の周りの人間関係だったんだけど。自分優先でやってきたら、すごく敵が増えてしまって。“あいつ面倒くさい”って言われてしまうようなことがあったときに、どうしたら誤解されずに『本当はこう思っているんだよ』というのを伝えられるんだろうと考えて。それで自分が生きやすい世界にするために味方を増やそうって思ったときに、芝居においても譲れるものが増えたし、だからこそ譲れないことも明確になった気がする」

田島「花純ちゃんの相手役はすごいラッキーだろうなと思いますよ。これをやってくれたら助かるわっていうことをやってくれるんで」

山谷「どんなところか聞きたい♡」

田島「演技論っぽい話になるんだけど、映像の場合の芝居は『リアクションを大きく、アクションを小さく』が基本的にはいいと思うんですよね。花純ちゃんは僕の言葉によって傷つくとかびっくりするとかっていうのも、僕がちょっとやるだけで全部拾ってくれるんです。だから僕のほうは引き算しながらアクションもできるし、そういうお互いの芝居に関しての対話は(話さずとも)できてたんだろうね」

山谷「してたんだったかな(笑)」

田島「そういうことを考えない相手役は無意識で得していると思う。逆に花純ちゃんが『(リアクションが)大きいんじゃね?』と思われたりすることもあるので、もしかしたらちょっと損するタイプかも知れないけどね。今って、引き算の演技がめちゃくちゃ流行っているからこそ、足し算の演技ができる花純ちゃんの存在は、すごく重宝されると思う」

山谷「現場での田島さんは視野が広いから、端の人までちゃんと目が行き届いている気がする。通常なら端折られてしまう人も全員、輪の中に入れて、一緒に作ろうよっていう空気感を作ってくれるし、お芝居をしていても目ですごく語る方だなって。先程、30代前半ですごく変わったって言ってたけど、逆に変わらない部分ってあったりする?」

田島「役者を始めた当初に思い描いていた演技体(演じる際に、身体の動きや言葉、扮装などによって表現する人物像)からはどんどん離れていっていると思う。そこは変われなかった」

山谷「思い描いていた演技体ってどういうこと?」

田島「ナチュラルボーンアクターみたいな、憑依型というか、感情むき出しで手が付けられない役者になりたかったけど、今はめちゃくちゃ計算型になってる」

山谷「それは頭で考えられる人じゃないと気が付かないことなんだよね。そういう野生タイプの人ってすごく楽しそうだし、私も羨ましいなって思う。その分、周りが大変なんだろうなって思うけど」

田島「ダニエル・デイ・ルイスが舞台『ハムレット』の稽古をしているときに、本当に亡霊が見えてしまって、舞台を降板したっていうエピソードがあって」

山谷「いいんだか悪いんだか、って話だけど(笑)」

田島「でも彼の演技は、世界中が見る価値があると思う。こうはなれない、一生なれないと思うから、頑張ってそう見せるしかないっていうのはあるかな」

山谷「すごく苦しい役をやって、役を自分に入れてしまったために傷つきすぎて、芝居から離れてしまうのって本末転倒かなって思う気持ちもある。だから、グレーじゃないけど、ちょっと半分半分くらいがバランスがいいのかなって思ってる。バベルレーベルで、裏方をしていた時期は、役者はやめるつもりだったの?」

田島「正確に言うと、裏方をやりながら年に2本は稽古場公演をしたり、トレーニングをしていたから、芝居から離れたことはないんだよね」

山谷「それが生きがいなんだ」

田島「それこそ、芝居を続けていてどんどんクセがついてしまったときに、それを取るために『一回芝居から離れようと思います』って先輩に言ったことがあって。そしたら、『今、離れたらもっと悪くなるよ』って言われたの。『自分の欠点はやり続けていかないと治らないから』って。『それで、そこが治ったらまた違う欠点が出てくる、そういう仕事だよ』と言われた言葉を大切にしてる。それを言ってくれたのが(2017年に亡くなった)中嶋しゅうさん」

山谷「(吉田)鋼太郎さんからしゅうさんの話もすごく聴いていたので、ステキな方だったんだろうなと思う」

田島「例の挫折後に、その言葉を思い出して、下手でいいやって思えたんだよね。20代の頃はうまく見せたい気持ちがあって。たぶん、評価されたかったんだろうけど、自分が絶対に勝てない上手な人と一緒に芝居をしたことで、下手でもいいかって思えた。下手だけどここはできるっていうものはあるじゃん、って。その自分の持っているカードを強くしていくことで、役も自分の得意なほうに寄せていくっていうか」

山谷「役者として進むべき方向が見えたというか」

田島「そこから趣味からビジネスに変わったみたいな感じ」

山谷「それ、ちょっとわかるかも」

敵わないと思う同世代の役者をそれぞれ発表!

山谷「今回、初めての試みで私への質問を一つ考えて来てくださいと事前にお願いさせていただいておりまして。その質問が『敵わないと思った同世代の役者は誰ですか?』ということなんですが、田島さんはどうですか?」

田島「俺はたくさんいるけど、ここで紹介するなら高畑裕太。ずっと演劇をやっていて、それこそすごく野性的な感性の役者。持っているエンジンとエネルギーが圧倒的に違う。今は脚本に対して、リアリティよりも引き算の芝居が流行っていて、そのたびに人ってもっと感情をむき出しにするものなんじゃないかなって思いながら見ていることが多いんだけど、裕太はドンッと入ってくる演技をするんだよね」

山谷「ビジュアルも強いから、余計それと相まってという部分があるのかな」

田島「今、裕太は自分で脚本や演出も手掛けていて、力を蓄えている最中。20年、30年したときに天下取るんじゃない?みたいな。あとは、同じ理由で一ノ瀬ワタルくん」

山谷「2人の共通点は、被る人がいないっていうのがあるね」

田島「2人とも野性的なんだけど技術もあって、下手ウマというか下手に見せておいて実はめちゃくちゃ考えているタイプだと思うんだよね。それってプライドを捨てないとできないこと。一ノ瀬君は聴いたことのない音でセリフを言ってくる。今は『サンクチュアリ』(Netflix)みたいな役が多いけど」

山谷「彼らが作品に登場すると肩の力が抜けるじゃないけれど、物語が入ってきやすくなるっていうのは感じる」

田島「演技じゃなくて生きて見えるっていうね。あとは、花純ちゃんと共通の知り合いでいうと吉村界人とか。彼は計算と野生を両方持ってる役者。しかも足し算しているんだけど、そんな風に見せない技術もある」

山谷「彼は今のクールのドラマに出演していて、ネットのニュースで話題になるたびにそのリンクをLINEで送ってくるの。『ついに世間に吉村界人がみつかっちまったぜ』みたいな感じ(笑)。そういうことができちゃう愛嬌を、田島さんが挙げた人たちみんなが持っているっていうのも共通するところかなって思う。人間っぽいんだけど、着飾っていない感じがステキだよね」

田島「彼は得意ゾーンを完全に見つけているよね。一本の強さもある。俺は、この作品は吉村界人っぽくだなって思ったら、自分が芝居をするときのリファレンスにしている」

山谷「伝えておきます(笑)。私が挙げたい人が2人いて、一人は友達でもある杉咲花。もう一生勝てない。年齢は一つ下なんだけど、現場のスタッフさんとの向き合い方だったり、役に対してのストイックさ。でも、カメラや仕事場から離れると人間らしい素朴さもあったりして、体温を感じる人というのかな、そのバランスが絶妙で真似できない。私はどちらかに傾いてしまうので、それを両立できるところがステキ。彼女とテレビドラマ『アンメット ある脳外科医の日記』で一緒にお芝居してから台本の読み方もすごく変わったし、お芝居の温度感やセリフの話し方もすごく変わったりして影響も受けていて。そういう風に、相手を1個上のステップへと持ち上げる力を持っているザ・主役って感じ。王道なヒロインではなく“座長”という言葉がすごく似合う役者さんだなって思う。もう一人は2023年に引退した萩原みのりちゃん。同い年で同じ時期にデビューした同期でもあるんだけど、最初に共演してから何年も会っていなくて。引退する前の年に久しぶりにご一緒させてもらって、やっぱり自分にないものを持っているなって感じた。すごく自由な人で、自己主張がちゃんとデキる人。芝居でも芝居ではない場所でも、みんなの代弁者になれる強さがありつつ、傷つく心は持っていて人を傷つけてしまうことに痛みを感じる部分があって。この間、彼女の作品を見たときに、その中に彼女の生き様みたいなものを改めて感じた。この2人は役者としても尊敬するし、人間臭い部分もあるというところは共通点かな。尊敬するのは役者としての技術というより、芝居に対する向き合い方なのかな」

田島亮が今、注目する映画作品を語り尽くす

山谷「そして、映画にまつわる連載ということで、映画のお話を。事前に作品をピックアップしていただいたのですが、その一つが『さかなのこ』。ちょっと意外でした」

田島「ここ数年で観た邦画で一番好きだね」

山谷「誰も悪い人がいない作品」

田島「やっぱりさかなクンってすごいよなって。その上で、さかなクンを演じたのんちゃんもすごかった。この作品は小学校で観せるべきだと思う。LGBT的な部分もあるし、いじめ問題もあるし、それをエンタメとして成立させているっていうのがね。難しいことをやさしく伝えるっていうのが、もう一番理想的なエンターテインメントだなって。基本的には笑いを生み出しているんだけど、奥にはものすごく深いテーマが潜んでいてっていうのを座組(作品制作への出資者の組合せや、配給に関する興行網の選定方針)全体で理解しているなって」

山谷「(のんさんが演じたさかなクンの)あの中性的な感じだったり、他の人がやったらわざとらしくなるようなことをさらりと演じられるところもすごい」

田島「ぜひ、smart読者のみなさんにこういう視点で観てほしいっていうおすすめポイントがあって。柳楽(優弥)くんや夏帆ちゃん、磯村(勇斗)くんがサブキャストとして出演しているんだけど、その3人の主役であるのんちゃんの支え方がすごいの。3人とも自分が前に出ようとせず、作品をよく見せるためにパスを出しまくっている。何これ、ってもう涙が出ちゃう(笑)。座組のために演技するってこういうことだよなっていうね」

山谷「それは脚本をちゃんと読める人たちということなのかな?」

田島「そうだし、のんちゃんという主役をちゃんと愛してリスペクトしていたんじゃないかなと思う」

山谷「それって、役者じゃない人が観てもわかるものなのかな?」

田島「わかるんじゃないかな。そういった視点も持って観ていただけたら、また作品の魅力が広がるんじゃないかなって思う」

――そういった俳優さんたちの視点を持つことで、さらに、素人の批評家が増えてしまう可能性もあるのでは?

山谷「みんな欠点を探すことばかりにかまけて、魅力だったり、いい部分に目を向けることが下手になってしまっているのは、やっぱり感じますよね」

――SNSなどで、作品を観た方の解説や批評などを目にする機会があると思うのですが、2人はどのように向き合っているのでしょうか?

山谷「私は大好き。『もっと言ってくれ!』みたいな気持ち(笑)。映像作品の場合はもう、撮影が終わっているので変えようもないし(笑)」

田島「舞台公演のときは、結構エゴサしていて、鋭いこと言われているなぁって思うことはあるけどね」

山谷「それで、公演の途中でも変えたりするの?」

田島「大きくは変えないけれどね。舞台の場合は、『そこを駄目出しするんだ』っていう視点があったりするんだよね。例えば『髪型が気になって物語に集中できませんでした』とか『2幕と3幕で別人に見えました』とか。そこは微調整したりするかな。なんか鋭い人、いっぱいいるよ(笑)」

山谷「受け取り方次第ではいいアドバイスになったりするってことだよね」

ドキュメンタリーから実際に起こった事件を題材にした作品まで

山谷「そして2作目の田島さんのおすすめが『コレクティブ 国家の嘘』。これね、まだ私、ちゃんと観れていなくて……」

田島「ドラマの『アバランチ』で記者役をいただいたときに、それこそリファレンスを探していて。実際の週刊雑誌の記者にインタビューしたりしている中で見つけた作品。ドキュメンタリー作品なんだけど、観ている最中に、これってドラマなの?って途中で感覚がおかしくなってくるんだよね。それはカットバック(複数のシーンを交互に映し出す編集技法)という手法を使っていて、電話しながらメールの寄りのカットが入ったり、俯瞰(ふかん)している画面が写ったりして。会話にも受け手があって、これって2回撮影しないとできないんじゃないっていうシーンがあったり。たぶん、その主人公の記者とそれを撮っているチームがタッグを組んで国を変えようとしてたんじゃないかって、この作品が作られた裏側まで気持ちが持っていかれて。ルーマニアの作品なんだけど、民主主義はなんぞや、今の政治はよくないよねっていうのを訴える作品で、完全にそのテーマありきで、シーンを考えながらドキュメンタリーを作っていってる」

山谷「まだ、全部観終わってないのに何を語ってんだよって話なんだけど、(ドキュメンタリーとして)リアルタイムでカメラを回しているのとは違うってことだよね。基本(ドキュメンタリーは)1つのカメラでずっとついていくもので、この作品にも手ブレも含めてその臨場感は伝わってくるんだけど、冷静な視点が入っているからすごく不思議な感覚になる」

田島「その作品の中で起きていることはすべて現実なんだけど、フィクション(物語)の撮り方をしているから役者としてはすごく(観ると)ためになる作品。人ってこういうときにこういう風に睨むんだとか、究極のリアリティだからある種一番いい状態の演技が観られる」

山谷「題材になっているのは知っておくべき現実だもんね」

田島「この作品との出会いで、記者役は(『アバランチ』で演じたあとも)一生一番やりたい役。記者大好き(笑)。主人公のジャーナリズムがめっちゃかっこよくて」

山谷「私も最後まで観たら記者役がやりたくなるかな。そして、もう一つのおすすめの作品が『ホテル・ムンバイ』」

田島「2008年にムンバイでIS(アイ・エス)が起こした同時多発テロの際に標的となった五つ星のホテルが物語の舞台。閉じ込められて人質になった宿泊客と、プロとして彼らを救おうとしたホテルマンを描いた物語なんだよね。これは現実に起こった話を映画化しているんだけど、演技のレベルが高すぎて本当に大好きな作品」

山谷「田島さんって、本当にお芝居好きだよね。全部吸収しようっていう」

田島「演技マニアみたいなところもあって、ちょっとそういう楽しみをsmart読者のみなさんに提供できたらいいかなっていう思惑もあって作品を選んだ。で、本題に戻ると『ホテル・ムンバイ』は今クールのドラマ『御上先生』の脚本を書いている詩森ろばさんと舞台を作っているときに、一緒に観に行ったんだよ。あの人、『新聞記者』っていう映画で日本アカデミー賞の優秀脚本賞に選ばれている人なのに、物語に没入しちゃって、映画を観ながら『バカッ!』とか叫んでて。ろばさんのようなスペシャリストを世界に巻き込んじゃう力があるくらい、全てが演技に見えないんだよね」

山谷「それってすごいね」

田島「本当にすごいんだけど、その作品の製作総指揮に名を連ねているのが、僕と同い年くらいの役者さんで『スラムドッグ・ミリオネア』ではスラム街出身の、無学の青年を演じたデブ・パテル。役者としては主役ではなく5番手ぐらいを演じているんだよね。それもかっこいい。テロを起こす側にも彼らなりの理由があるんだろうっていう視点まで描かれているんだけど、その語り口とかがね、本当にすごいんだよね」

山谷「読者のために、そのテロ組織IS(アイ・エス)というのは?」

田島「テロ組織のイスラム国(Islamic State)の略、なんだけどぜひ、中田(敦彦)あっちゃんの『ISとはなにか?』っていうYouTubeをチェックしてから、作品を観るとわかりやすいと思う。ビン・ラディンという人が何をしたのかっていうところから遡ってsmart読者にも知ってほしい」

山谷「実際に世界で起こっていることを、問題提起できるのも芝居だったりするよね。どうやって観る作品を選んでいるの?」

田島「蜷川(幸雄)さんと初めてお会いしたときに、年間100本観るという約束をしてからは、もう手当たり次第っていう感じで観ていて。それから、だんだん自分の好みがわかるようになって。なので、好みとヒットするものをセレクトしたり、あとは人からオススメされるものからも出会いがあったりして。他にもアカデミー賞を獲った作品はチェックしたり。いろいろな方向から、幅広く作品を観るようにしているかもしれない。でも花純ちゃんもいろんな作品を観ているよね」

山谷「最近は観られてないかも。ほとんどアニメ作品しか観てない」

田島「花純ちゃんの最近のオススメも聴きたいな」

山谷「役者をやっているとちょっと(作り手の思いを読み解くのが)難しい作品を言っておいたほうが、わかってるなって思われるんじゃないかって、そういう作品ばかり選んでいた時期もあって。それこそ邦画よりも洋画のほうがいいかなとかね。でも、本当はファンタジー映画が大好き。自分が役者になるまでは、空想の世界に没入するのが好きだったの。そんなこんなで大人になった今、やっぱり中島哲也監督の作品が大好きで。大人になったら忘れてしまうような大切なことを、色彩豊かでポップな世界観で奇抜な物語にして届けている作風って素敵だなって。中でも代表的なのが『パコと魔法の絵本』。大人たちが『ゲロゲ〜ロ』とかセリフを言ったり、へんてこな格好をしながら一生懸命に全力で役を生きている姿が輝いて見えて。絵本のページをめくるような感覚で作品を観ていたのが、映画を好きになるきっかけ。今不思議なことに自分が演じる立場に居るんだけどね。

娯楽としても楽しい作品だし、芝居の根本的な大切さも改めて感じられる作品だなって思う。この連載では大人になってから好きになったデヴィッド・フィンチャー監督の作品とか紹介してきたけど、自分の根本的な部分では、ファンタジーとかホロッて泣けちゃうような作品なんだ。田島さんが『さかなのこ』が好きって言ってくれたのもあって、そういう子供時代から好きな作品を、smart読者のみなさんに紹介したいなって改めて思った」

花純ちゃんならどんな作品でも役でもできる!

――田島さんは作品の演出や脚本なども手掛けられていますが、山谷さんをどんな作品でキャスティングしたいと思いますか?

田島「どっちかっていうと、どの作品でも行けるよね、っていうタイプだと思う」

山谷「あら、やだ(笑)」

田島「絶対にこの役をやってほしいとかではなく、ここでしか撮れないこの人を撮りたいってなったときに、その近くにいてほしいなって思えるタイプなんじゃないかなと思う。逆に、花純ちゃんは絶対にこの役がやりたいっていうのはあるの? 俺は新聞記者役を(どんな作品でも)また絶対にやりたいけどね」

山谷「私はやりたい役とかはないかも。これをやってって言われたらOKってなるタイプ。取材でもよく聞かれるけど、本当にない(笑)。役者として行きたい場所はあるよ。それこそレッドカーペットを歩きたいとか、賞がほしいなとか。でも作品に対してのこだわりとかは全くなくて。いただいた役を、想像以上のもので返すのが私たちの仕事だと思うので、どんな役でもお待ちしております!!」

田島「舞台とかも一緒にやってみたいな」

山谷「舞台はまだそんなに経験を積んでいないので、お邪魔させていただくって感じではあるんだけど、なので、舞台をやるってなったらまた初めましてのところからやるのかなっていう気持ちがあるんだけど。そこに田島さんがいてくれたら安心。それに今回の作品はお互いを騙し合う役だったので、兄弟とか夫婦とか、ちゃんと心が通い合う作品と役もやってみたいなって思う」

田島「そうだね、それも楽しみ」

――では最後に、『結婚詐欺師と堕ちる女』の見どころを交えて読者にメッセージをいただきたいです。

田島「主役は花純ちゃんが演じているんですが、汚れ役を見事に演じているので、その演技力にもぜひ注目していただきたいなと思います。俺としては(ショートドラマ以外の)普段の作品ではしたことのない“顔芸”という監督との共通言語ができまして……。作品中、結構やっているんじゃないかな、最終的にとてもうまくなったので、ぜひ注目してください(笑)」

山谷「私の役はとにかく結婚してお金がほしいっていう女性で。私の世代よりもちょっと若いパパ活とかもトレンドワードになってきた頃のお話。そこに飛び込む勇気とかいろいろあると思うけど、やっぱり人を騙そうとしてやったことや後ろめたいことをしたら、全部自分に返ってくるよっていうのがテーマだと思います。全部で29話あるのですが、なりあがって没落していく主人公のジェットコースターみたいな生き方をぜひ、楽しんでいただきたいなと思います。私も田島さん同様、顔芸を頑張ったので、そこにも注目していただきたいです!」

田島「(物語として)デフォルメはされつつ、20代、30代女子の結婚していない方のリアルを描いていると思うんですよね。彼氏はいるけど、もっとお金持ちがいるならそっちに乗り換えたいとか、人に言っていないだけでそういう経験がある人も多いんじゃないかなって思う。なので、鏡の中にいる悪い自分を花純ちゃんが体現している感じなのかな。そこに結婚詐欺師の僕が登場することによって、最終的には、smart読者の男子たちは気持ちがスカッとする作品になっているんじゃないかと。女子には、悪い顔の私を見ているみたいって思いながら観てもらえたら面白いんじゃないかな」

山谷「ちょっと、私が堕ちていくって言ったら、急に嬉しそうに喋り出したんですけど(笑)。とても面白い作品になっているのでぜひ、チェックしてください!」

◆タイトル︓『結婚詐欺師と堕ちる⼥』全29話
◆配信先:3⽉19⽇19時よりショートドラマアプリBUMP にて全話配信スタート︕
アプリダウンロードURL:https://emolebump.go.link/k3mPC
◆出演者:⼭⾕花純 ⽥島亮 鈴⽊朝代 中島亜梨沙 岩永達也 ⼩池⾥奈
◆原作:葵抄「夜蜘蛛は蜜をすう〜結婚詐欺師と堕ちる⼥〜」まんが王国(ビーグリー)連載
作品URL:https://comic.k-manga.jp/title/3/pv
◆監督/脚本:有⼭周作
◆プロデューサー:平岡⾠太朗/井上直也(日本テレビ)・佐川秀⼈(プログレス)・京極弘樹(goraku.inc)

(山谷花純)デニムジャケット¥17,600、デニムパンツ¥12,980、ニット¥12,980/以上すべてナルシス (https://narcissus.jp)、イヤリング¥11,000、ネックレス¥9,720、リング¥7,560、ブレスレット¥9,720/以上すべてアビステ(https://www.abiste.co.jp/)   (田島亮)デニムセットアップ/スタイリスト私物、ニット参考商品/ダックス(https://onlineshop.daks-japan.com/)、ブレスレット(右手)¥49,500、ブレスレット(左手)¥11,000、リング¥11,000/以上すべてチャコールグリーントーキョー(https://www.charcoalgreen.com/smartphone/)

Profile/山谷花純(やまや・かすみ)
1996年12月26日生まれ。宮城県出身。みやぎ絆大使。2007年エイベックス主催のオーディションに合格、翌年ドラマ「CHANGE」(08)でデビュ-。主な出演作に、「あまちゃん」(13/NHK)、「FIAST CLASS」(14)、「鎌倉殿の13人」(22/NHK)、『劇場版コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-』(18)、舞台「ヘンリー八世」彩の国シェイクスピアシリーズ(22)、『らんまん』(23)『アイドル誕生 輝け昭和歌謡』(24)『新空港占拠』(24)、『アンメット ある脳外科医の日記』(24)など。主演映画『フェイクプラスティックプラネット』がマドリード国際映画祭2019最優秀外国語映画主演女優賞を受賞。
山谷花純Instagram:@kasuminwoooow
山谷花純X:@minmin12344

Profile/田島 亮(たじま・りょう)
1987年8月27日生まれ。ドラマ『アバランチ』(21)にて記者役で強い印象を残し、以降ドラマ『インフォーマ』(23)、ドラマ『アンチヒーロー』(24)、ドラマ『私をもらって』(24)、ドラマ『ベイビーわるきゅーれエブリデイ!』(24)、映画『正体』(24)など出演作が続いている。
田島亮Instagram:@actingspace.tajimaryo

撮影=田中利幸
スタイリング=三浦 玄
ヘアメイク=福富風花
聞き手&文=佐藤玲美

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