◇第97回選抜高校野球大会最終日 決勝 智弁和歌山4―11横浜(2025年3月30日 甲子園)
【記者フリートーク】30日に決勝が行われた選抜高校野球で、惜しくも準優勝に終わった智弁和歌山(和歌山)。春夏通算4度の全国制覇、同43度の甲子園出場を誇る強豪には、新たな伝統が根を張りつつある。
2018年8月、高嶋仁前監督の後を受け就任した中谷監督が、教え子たちに対して、よく使う言葉がある。それは「恩返し」…ではなく「恩送り」。選手には、感謝の気持ちを返すだけでなく、その思いを他の人にも分け与えてほしいと考えている。
その教えが陰ながら現チームの躍進を支えた。昨夏の甲子園敗退後、旧チーム主将の辻旭陽は同学年の選手たちに呼びかけた。「甲子園に行けた恩を後輩に送ってあげたい」。そして、「辻世代」は引退後も毎日、練習参加。コーチ役を担ったり、打撃投手や整備など裏方役も全て買って出た。
辻は「後輩が好きだし僕たちは智弁ファミリーだから引退しても関係性は変わらない」と目を細める。昨秋の近畿大会準優勝で後輩たちが選抜出場を確実にすると、「甲子園に行けるのは3年生のおかげ」と感謝された。
「辻世代」も1年秋に、夏に引退した3年生から献身的なサポートを受けたことへの感謝の思いがあった。当時、その姿に感動した中谷監督が現役選手に伝えた言葉が行動の根底にある。「この恩を次の世代に送り、いい伝統にしよう」――。
辻も、選手寮を退寮する日、後輩たちに伝えた。「いい伝統は引き継いでほしい」。先輩から送られてきた恩の積み重ねが今春、現役選手を輝かせた。そして夏には、大きな赤い花を咲かせることを願う。 (アマチュア野球担当・河合 洋介)
選抜準V智弁和歌山に根付く新たな伝統「恩送り」 現役部員を支える引退部員たちの献身
スポニチアネックス 2025/03/31 09:00