オールブラックスは大差で下した相手をどう見たのか――日本代表に贈られた賛辞、その真意は?「素晴らしいスタート。“超速”に値するプレーでした」

 大差で下した相手を褒める。それが、この日のラグビーニュージーランド代表の立ち位置だった。

【動画】日本代表 vs NZ戦ハイライト

 10月26日、神奈川・日産スタジアム。過去3度のワールドカップで優勝した通称オールブラックスが、日本代表を64―19で制した。通算対戦成績は8戦全勝だ。
  しかしスコット・ロバートソンヘッドコーチは、日本代表へ賛辞を贈った。

「日本代表は素晴らしいスタートを切った。『超速』に値するプレーでした」

 まったくのお世辞ではなさそうだ。思い浮かべたのは序盤のアタックだろう。

 キックオフ早々にミスを犯すと、中盤で日本代表の攻撃ラインに数的優位を作られた。オールブラックス側から見て左側のスペースを、対するウイングのジョネ・ナイカブラ、ロックのサライナ・ワクァに崩された。自陣22メートルエリアへの侵入を許した。

 5分には先制された。同10メートル線付近左中間で、ナイカブラに接点の周りを走られた。

 日本代表の打ち出す『超速ラグビー』に、オールブラックスは手こずった。7点リードしていた17分頃にも、ハーフ線付近右中間で竹内柊平、岡部崇人の両プロップに防御を破られた。反則を犯した。

 19分にはスコアされた。自陣ゴール前右で、防御の揃わぬ箇所をナンバーエイトのファウルア・マキシに射抜かれた。

 挑戦者を讃えたのは、ロバートソンだけではない。ロックのパトリック・トゥイプロトゥ主将も言う。

「最初はかなりプレッシャーを与えられました」

 もっとも、中盤以降は主導権を握った。日本代表がエリアを問わずに攻めるのを、逆手に取るような場面も作った。

 象徴的なのはふたつのシーンだ。

 ひとつめは19―12としていた23分頃。まずは日本代表が攻守逆転を決め、オールブラックス側から見て左から右へ大きくパスを回す。

 ここへオールブラックスは、幅広い防御網を敷いて再びターンオーバー。ジャッカルをしたのはアウトサイドセンターのビリー・プロクターだ。手にした球をすかさず敵陣ゴール前右中間へ蹴った。カウンターラックからの左展開を促した。最後はフランカーのサム・ケインが加点した。24―12。

 29―12として迎えた32分頃にも、前がかりになった日本代表をその場で転ばせた。

 自陣中盤で堅陣を敷き、防御ラインの外側をせり上げることで向こうの攻め手を限定。6フェーズ目からの3フェーズは、接点の周りのタックラーが単騎の突進役を止め続けた。最後は、トゥイプロトゥが地面の球へ絡みついた。ペナルティーキックを得た。ここからオールブラックスは、個々の推進力を活かして2分以内にフィニッシュした。
  後半も日本代表がボールを保持するなか、オールブラックスは21得点。日本代表が攻めれば攻めるほど、オールブラックスにチャンスが転がってきたのではないか。

 この仮説に応じたのはウォレス・シティティ。新進気鋭のナンバーエイトだ。

「(日本代表の攻め方は)ディフェンスにとってはかなり辛いものでした。一丸となって守らなければいけませんでした。集中できたことで、ボールを取り返せたのです」
  この午後好ラン連発も、答えは慎ましかった。ここへ、ロバートソンは補足する。

「ボールを取り返す場面は(勝負の)鍵になった」

 繰り返せば、日本代表は『超速ラグビー』を謳う。今年約9年ぶりに復帰のエディー・ジョーンズのもと、集団的にスピード感を持ってプレーするのを目指す。

 特にいまは、「いまはわざと超速ラグビーの極端なバージョンをプレーさせています」とジョーンズ。前衛を崩すランやパス、後衛の穴場を突くキックのうち何を用いるかを素早く決めるのを『超速ラグビー』の本質的な肝としながら、あえて前者へ固執することでスタイルの涵養を急ぐ。このほどの被ターンオーバーが絡んだ大量失点も、成長痛のように捉える節があった。

 2027年のワールドカップオーストラリア大会までに、ラン、パス、キックのバランスを微修正するつもりのようだ。いまは成長段階にあたる。

 一方でオールブラックスも、新体制のもと組織を再構築し始めたばかりだ。

 今回の日本代表戦には、これから主力定着を狙う層にベテランを織り交ぜて臨んでいた。直後の欧州遠征に備え、一部の主力はこの午後に先んじて出国させている。

 戦前の世界ランクで11下回る14位の日本代表と戦う意味は、選手の見極めとスコッドの層の拡大にあった。

 新しいボスのロバートソンは「勝利を挙げられたうえ、何よりも怪我人が出なかったのがよかった」と言い残した。

取材・文●向風見也(ラグビーライター)
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