現在オーストラリア・メルボルンで開催中のテニス四大大会「全豪オープン」は1月15日、男女2回戦が行なわれた。
初戦でフルセットの大熱戦を制した内島萌夏は、第14シードのミラ・アンドレーワと対戦。ファイナルセットで常にゲーム先行し、最後のタイブレークでも勝利まで2ポイントに迫ったものの、4-6、6-3、6-7(8)で惜敗した。
「経験」という言葉の概念や定義は、なかなかに難しいところがあるかもしれない。
大坂なおみは18歳の時、「真に良い選手にとって経験は関係ない」と言い、ビクトリア・アザレンカも若き日に「経験は過大評価されている」と明言した。
一方でノバク・ジョコビッチはかつて、“ビッグ4”と呼ばれた面々が30代になっても強い理由……特に四大大会で圧倒的な支配力を誇る理由を「厳しい戦いを潜り抜けてきた経験にある」と断言していた。
アンドレーワはまだ17歳ながら、世界15位の大会第14シード。今回が8度目の四大大会本戦で、昨年の全仏ベスト4の彼女には、満員のアリーナで接戦や死闘を繰り広げた経験がある。
とりわけ、彼女が今大会の2回戦で内島と対戦した“コート3”は、昨年の3回戦で、ファイナルセット1-5のダウンから大逆転勝利を演じた舞台。本人は「呪いのコート」と苦笑するが、それはむしろ、対戦する相手に掛かる呪いだろう。実際に内島は、「彼女が去年もあのコートで、ファイナルセット1-5からまくったのは、見ていました」と言った。
もっとも、大舞台で戦った多くの「経験」があるということは、それだけ他者の目に触れる機会も多いということだ。内島は当然ながら、時期女王と呼ばれる17歳の情報を多く持っていた。
「走れて、しぶとい選手というのはわかっていた。意外にループなどを使い、長いラリーが好きな選手というのも知っていたので、長くなることは覚悟してました」
その上で内島は、「攻撃的にいきつつ、時々ループなども混ぜながらプレーしようと思っていた」と言う。
実際にその策が奏功していることも、感じることができていた。「彼女も途中からイライラして、結構ミスもしてくれた」ことも、内島の目は捉えていた。
対するアンドレーワは、「相手をあまり知らなかった」ことを認める。
「情報の少ない選手との対戦は、いつだって難しい。私は今日の相手と対戦したこともないし、練習したこともなかった。彼女はとても良いプレーをしたし、わたしはミスが多かった」
その情報の少なさに加え、「すごくフォアハンドの良い選手」という驚きが、彼女の焦りを生んだかもしれない。 第1セットこそ、序盤のブレークでアンドレーワが押し切ったが、第2セットに入ると、「サーブのコースが読めてきた」内島が、リターンのポジションを大胆に変えるなどして、アンドレーワに揺さぶりをかける。第2セットを内島が6-3で取ると、ファイナルセットも流れは内島。常にブレークで先行し、ゲームカウント5-4で自身のサービスゲームも迎えた。
この時の内島は、「相手もしぶとい。スコアは気にしていなかった」という。とはいえ、どこかに勝利への意識があっただろう。ダブルフォールトも含めてミスが増え、ブレークバックを許してしまう。さらに続くサービスゲームでのアンドレーワは、ファーストサービスを全て入れてきた。重要な局面で確実に上がるプレーの精度は、やはり上位選手の貫録だ。
運命の10ポイントマッチタイブレークでは、内島が3-6の劣勢から、心憎いまでのドロップショットをネット際に沈めて流れを変える。攻める内島が5ポイント連取し、8-6のリードで自身のサービス。勝利へと肉薄した。
だがこの場面で、再びアンドレーワが勝負師の資質を発揮した。誰もが硬くなるだろうこの局面で、彼女のスイングには怯えがない。8-8からは12本のラリーの応酬の末に、アンドレーワがフォアの逆クロスをコーナーに突き刺す。
そして結果的に最後となった打ち合いでは、実に19本のラリーの末に、またもアンドレーワのフォアの逆クロスが内島のラケットを弾く。2時間19分の熱戦の勝者は、第14シードの17歳だった。
試合後のアンドレーワは、「経験」の重要性について、こう語る。
「私にはまだまだ経験が足りないが、それでも今日は私の方が、相手より大きなコートでの試合や、プレッシャーが掛かる状況での経験で勝っていたと思う」
さらに彼女は、こうも続けた。
「でもアリーナ・サバレンカはロッドレーバーアリーナでの経験が誰よりもあり、彼女はあのコートで試合をする時にとても自信に満ちている。ランキングが高くなるほど、経験も豊かになる」
この言葉は17歳の視線が、既に世界1位に照準が合っていることを思わせた。
他方、内島もアンドレーワとの「経験の差」を、次のように述懐した。
「ああいう大きいポイントでの気持ちの強さを感じた。大舞台で色んな選手に勝ってきて、自信が付いているから、ああいうプレーができるのかわからないですが...、自分の方が、最後の方は気持でちょっとだけ引いちゃったのかな。経験という言葉で済ましていいのかわからないですが、特に最後の長い2ポイントで、もっと自信を持ってラリーできていたらなと思います」
この試合での両者の総ポイント獲得数は、内島が106で、アンドレーワが108。内島が悔やむ「最後の長い2ポイント」が、まさに両者の差だった。
現地取材・文●内田暁
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THE DIGEST 2025/01/16 12:41