今週のテーマは「正月に突然妻から、離婚を持ちかけられた夫。原因は?」という質問。さて、その答えとは?
▶【Q】はこちら:正月に帰省後、妻が「離婚」を切り出してきた。結婚7年目、世帯年収3,000万夫婦に亀裂が入ったワケ
リビングのテレビから、お笑い芸人と女子アナの楽しそうな会話と笑い声が聞こえる。
夫の慎太郎の実家から貰ってきた、義母が作ったおせち料理の残り物。それらをダイニングテーブルの上でお皿に移し替えていると、不意に涙がこぼれ落ちてきた。
― もう限界だ…。
そう思うと、もう止められない。
何度も考えた。
結婚生活7年になる。もはや今更かもしれない。でも、今が最後のチャンスかもしれない。
だから私は、慎太郎に向かってこう言い放った。
「もうダメかもしれない…」
驚いた慎太郎は、ソファから少し転げ落ちそうになっている。
「え?今何か言った?」
聞こえないフリをしたのも慎太郎らしい。だからもう一度、私はハッキリと、今度はもう少し大きな声で彼にこう伝えた。
「慎太郎。離婚しない?私たち」
A1:35歳という年齢を考えると、次に行けるのは今しかないと思った
慎太郎と出会ったのは、職場だった。
同じ日系証券会社に勤めていた私たち。彼は私の上司で、最初から仕事ができて素敵だな、とは思っていた。
しかし当時慎太郎には婚約者がおり、半ば憧れだけで終わっていた。しかしふとしたタイミングで一線を越えることになり、そのままズルズルと深入りし、結局慎太郎は婚約者と破局。
そして私と交際を始め、1年後に籍を入れた。
当時私は28歳で、慎太郎も35歳。まだ若かった。
その後慎太郎は会社を辞め、別のところへ転職したので今は別々の会社に勤めている。でも私も年収1,200万くらいになり、幸い、慎太郎の年収を合わせると、生活をしていくのにはまったく困ってはいない。
そんな彼との結婚生活は、概ね楽しかった。
でも夫婦である以上、多少の不満は出てくるもの。強いて言うならば、慎太郎は本当に家事が苦手な人だった。
私たち夫婦に、子どもはいない。その代わり次郎という可愛いチワワがいるのだけれど、次郎のエサでさえ私が言わないと気が付かない。
「慎太郎、ちょっと次郎のエサあげてくれない?」
「はーい」
「あと、ぼーっとしているならその辺り片付けて」
「はーい」
指示をしたら、一応動くことは動く。でも掃除に関していうと本当にダメで、私がやった方が早い。だからつい、私もやり過ぎてしまったのかもしれない。
「慎太郎、本当にここ拭いたの?すごい拭き残しがあるんだけど」
「え〜本当?僕からは綺麗に見えるけど」
「もういいよ、私やるから。慎太郎は、ゴミまとめておいて」
― これは仕方のないことなのかな…。
そう思っていた。
そんな日々の積み重ねもある。でも私たちの結婚生活で一番大きかったのは、子どもができなかったことでもあった。
もちろん、私たちは頑張った。最初は自然妊娠を試みたけれどダメだと気がつき、すぐに病院に行った。
タイミング法も試したし、人工授精も体外受精も試みた。でも結果は、全部うまくいかなかった。
でも、これは誰のせいでもない。
お互いの相性が悪かっただけ。
それはもうどうしようもないことだった。何度も泣いたし、今でも思い出すたびに心がどうしようもなく苦しくなる。あんな辛い思いは、もう二度としたくない。
でも慎太郎も頑張ってくれたし、治療の間は彼なりに一生懸命気を使ってくれていた。
「香穂、気分転換に今度旅行しない?次郎も連れてさ」
「いいね!犬連れでもOKな所、ちょっと探してみるね」
旅行へ連れていってくれたり、体を気遣ってくれたり…。だから、こう思っていた。
「私、別に子どもがいなくてもいいよ。慎太郎とだったら、二人でも楽しいから」
でも今年で35歳になる私は、ふと他の焦りも出てくる。
「もうこれで、一生私は子どもができないんだ」と…。
A2:実家問題。義母の態度を見て将来が見えた
ただ不妊治療をやめた時、子どものことは一旦諦めていた。仕方のないことだし、どうしようもないから。
しかし私が徐々に苦しくなっていったのは、慎太郎の実家に帰る度に、義母から嫌味を言われることだった。
私の両親は離婚したあと、それぞれ再婚したりパートナーがいたりする状況だ。それぞれの家族の時間を邪魔したくはない。それに、私の実家は福岡だからお正月は飛行機も混むこともあり、この時期に帰省をするのは避けていた。
しかし慎太郎の実家は都内にあり、状況が違う。
そして慎太郎はとにかく実家が好きで、頻繁に帰っている。
「香穂、今年も実家に帰らないの?」
「うん、今年はいいかな。連絡は入れたし」
「そうなんだ。でもさ、親とは仲良くしようよ。大事だよ」
「わかってるけど。むしろ慎太郎は仲良いよね」
仲が良いのは構わないし、実家に帰るのも構わない。しかしその頻度がかなり高いのと、毎回義母の私に対する当たりが強いので、徐々に私は足が遠のいていく。
でもそれを、慎太郎は良くは思っていなかったらしい。もちろん義母も…。
結婚して3年目以降、私は段々と、慎太郎の実家を訪ねるのは正月くらいになっていた。
しかし、行くたびに義母からは嫌味のオンパレードだ。
「明けましておめでとうございます、お義母様」
「香穂さん、お久しぶりね。最近全然顔も出してくれないから、心配していたのよ」
「すみません、少し仕事が忙しくてなかなか伺えずでして…」
「慎太郎はこんなに帰ってきてくれるのに」
ここまでは、まだ良い。嫁としてもっと挨拶へ伺うべきだろうし、家族となった以上、相手のご両親のことも大事にしないといけない。
それはわかっている。でも、私が一番つらかったのは、子どもがいないことを責められることだった。
「孫の顔も見れないんだから、せめて二人で仲良く顔を見せにいらっしゃい」
「そうですよね。すみません」
何が“すみません”なのだろうか。
子どもができない私は、嫁として役立たずなのだろうか…。
子どもができない原因は、私にだけあるのではない。「あなたの息子にも原因があります?」と何度言ってやりたくなったことだろう。
でもそんなことを言えるわけもなく、私は笑顔でただただ受け流す。
さらに一番腹が立つのは、慎太郎がそんな義母のことは何も言わず、ひたすら私のせいにしてくることだった。
義母の目を盗んで、そっと耳打ちしてくる慎太郎。
「香穂、頼むよ。母さんの前ではちゃんとしてね」
「わかってるよ!こうやって来ただけでも偉くない?失礼のないようにするから」
「頼むよ。妻の務めとしてさ」
― は?妻の務めって何?
そう思っていると、またキッチンのほうから義母に呼び出される。
「ちょっと香穂さん、手伝ってもらえるかしら?これらは女性の仕事だから」
「はい、今行きます!」
そして私と義母がせっせと台所でおせちの用意をしている間、慎太郎とお父様はのん気にリビングにおり、まったく手伝わない。
― 慎太郎が家事をまったくしなくて、できないのはこのせいか…。
その姿を見ていると、私たちの老後が容易に想像できる。私だけせかせか動き、まったく慎太郎は動かないのだろう。
「うわ、美味そう〜!」
「今年の黒豆、すごく上手にいったと思うから食べてみて。あとは…」
楽しそうに話す義母と夫。その姿を見て、私の中で何かがプツンと切れたのかもしれない。
そしてこの帰り道。私は今後の自分の人生について、真剣に考えた。
「今年で35歳、まだ35歳…」
そう何度もつぶやいてみる。
もしここから再び恋愛をして再婚しても、まだ妊娠できる可能性はある。これが5年後になったら、もうわからない。
慎太郎のことを嫌いになったわけではない。でもこのまま一緒にいたところで、明るい未来が見えない。それに幸い、離れても暮らしていけるだけの稼ぎはある。
離婚するなら、今しかないだろう。
そう思い、私は彼に離婚を告げた。
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