まさかの戦線離脱だ。大相撲春場所10日目(18日、大阪府立体育会館)、新横綱豊昇龍(25=立浪)が日本相撲協会に「右ひじ関節内遊離体、頸椎捻挫で約2週間の加療を要する」との診断書を提出して途中休場した。今場所は新横綱では昭和以降で最多に並ぶ3個の金星を配給し、中盤で優勝争いから脱落。15日間皆勤の〝公約〟も果たせなかった。元大関琴奨菊の秀ノ山親方(41=本紙評論家)は豊昇龍が克服すべき課題と、復活するためのポイントを指摘した。
新横綱が春場所の中盤で土俵から姿を消した。師匠の立浪親方(元小結旭豊)によると、優勝した1月の初場所千秋楽に右ひじを負傷。今場所はテーピングを施して出場していたが、8日目の高安戦で悪化させたという。師匠は「ひじを伸ばせず、ロックがかかった状態。これ以上、ふがいない相撲は取らせたくない」と休場の理由を説明。「協会とファンの方には申し訳ない」と頭を下げた。
〝公約〟も果たせなかった。今場所前に豊昇龍は「何が起きても休場はしない。負けても休場はしない。最後までやります」と宣言。立浪親方は「みんなの応援に応えたいという理想の横綱像から、そういうことを言ってしまった。ちょっと言い過ぎたと後悔していると思う。理想と現実の違いを肌で感じたのでは」と弟子の胸中を代弁した。
故障があったにせよ、新横綱として臨んだ9日間は本来の相撲内容から程遠かった。秀ノ山親方は「先場所は積極的に前に出ながら、落ち着いてしっかり相手を見ながらさばく余裕があった。今回は(黒星発進した)初日からバタバタして、気持ちに焦りが見えた。強引に勝ちにいく悪い面も出て、良い時のリズムを自分から崩してしまった印象」と分析する。
平幕力士への取りこぼしも目立った。新横綱では昭和以降で最多に並ぶ3個の金星を配給。秀ノ山親方は「本来なら、横綱と当たる下位の力士は少なからず萎縮するもの。豊昇龍に対しては、相手が自信を持って金星を狙いにきていた。精神的に優位に立つ状況をつくれていなかった」と今場所で浮かび上がった課題を指摘した。
豊昇龍は当面、故障の回復に専念し、春場所後の巡業には参加する見通し。秀ノ山親方は「稽古場で力士は互いに相手の実力を測っている。上に立つ力士は巡業中や場所前の出稽古で、相手が自信を失うぐらいの厳しい稽古をしていくことが必要。稽古場から別格の力を見せつけて〝この相手には勝てない〟と感じさせることが、本場所の勝負にもつながってくる」と力説した。
その上で「優勝した先場所で豊昇龍が見せた厳しい攻めは、幕内の中でも一番。もう一度、稽古から見つめ直して、復帰する場所では本来の力を発揮してほしい」と期待を込めた。5月の夏場所(東京・両国国技館)で、横綱の威厳を取り戻せるか。