2024年の6月に発売されたホンダ「CBR650R E-Clutch」。2輪車用としては世界初となる、クラッチを自動制御する新機構“Eクラッチ”を採用したモデルです。同機構の操作感はどのようなものなのかを体験すべく、実際にさまざまなシーンで走らせてみました。
ホンダの“Eクラッチ”とはどんな機構か?ホンダが世界で初めて実用化したバイクのマニュアルトランスミッション用クラッチを自動制御する機構“Eクラッチ”。それを初めて搭載したのが、2024年6月に発売された「CBR650R E-Clutch」です。
最近は、マニュアルトランスミッションの変速を自動化する技術を各メーカーが導入しており、ホンダも“DCT”と呼ばれる自動変速システムを多くのモデルに展開しています。
“Eクラッチ”はそれらのシステムとは異なり、変速はライダー自身がおこないますが、クラッチレバーは握らなくても済む、という仕組みです。
クラッチはふたつのモーターで自動制御されており、走行中だけでなく停止中や発進時もライダーはクラッチを操作する必要はありません。
ただし、左手側のクラッチレバーは残されているので、ライダーが任意のタイミングでクラッチを握り、手動で操作することも可能。自動制御と手動操作を両立している点が特徴です。
ただし、クラッチレバーが残っているため、AT限定の2輪免許では運転することができません。
ユニット自体はコンパクトで、通常のトランスミッションに追加できる点もメリット。重量もそれほど重くなく、スタンダードの「CBR650R」と「CBR650R E-Clutch」の重量差は2kg程度に抑えられています。
●快適なクルージングとライディングの楽しさを両立
ホンダの「CBR650R」は、4気筒エンジンを搭載するフルカウルのスポーツバイクです。
同じエンジンを採用するネイキッドバイク「CB650R」にも“Eクラッチ”搭載グレードが用意されていることから、ホンダが“Eクラッチ”で想定しているシーンがうかがえます。
スーパースポーツバイクなどが想定するサーキット走行では、停止する機会があまりないので“Eクラッチ”の恩恵を感じられる場面がほとんどありません。
また、自動変速の“DCT”はツーリングモデルを中心にラインナップされていますが、これは長距離を走る際の快適性を重視した機能であるためでしょう。
実際「CBR650R E-Clutch」に乗ってみると、変速操作自体はマニュアルトランスミッションのバイクと同じようであり、クラッチを握らずアクセルを開けるだけで発進できるのは不思議な感覚。半クラッチの操作も適切で、違和感を覚えることはほぼありませんでした。
走行中の変速フィールは、近年、クイックシフター機構を搭載するバイクが増えていることもあり、それと同じ感覚。ただし、信号などで停止する際にクラッチを握らずに済むのは本当に快適です。
筆者(増谷茂樹)はクイックシフター搭載車に乗る際、「停車中もクラッチを握らずにいられたらいいのに」と感じたことが幾度となくありますが、まさにそれを実現してくれたのが“Eクラッチ”だといえます。
特に恩恵を感じるのは渋滞時。少し進んで、また停まる、という操作を繰り返すのは、普通のクラッチつきバイクだとかなりのストレスですが、“Eクラッチ”車はアクセル操作だけで済むので苦になりません。
ワインディングを走るのが好きなライダーも、目的地までの道中では渋滞に遭遇する機会が少なくないでしょうから、そうしたシーンが圧倒的に楽になる“Eクラッチ”車は有効でしょう。
それでいて、変速操作によってスポーツバイクそのもののバイクを操る楽しさを味わえます。
変速フィールも良好で、4気筒エンジンらしい高回転域での伸びを味わいながらシフトアップしていく感覚は魅力的です。ホンダが公道をメインとする4気筒のスポーツバイクに“Eクラッチ”を搭載したねらいを実感できました。
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“Eクラッチ”の搭載モデルとスタンダードモデルとの価格差は消費税込で5万5000円。この価格差と2kg程度という価格差を考えれば、ホンダの250cc以上のマニュアルトランスミッション車は全モデルで“Eクラッチ”を選べるようになって欲しいと感じるのは筆者だけではないでしょう。
●製品仕様
・価格(消費税込):115万5000円
・サイズ:全長2120×全幅750×全高1145mm
・ホイールベース:1450mm
・シート高:810mm
・車両重量:211kg
・エンジン:水冷並列4気筒DOHC
・総排気量:648cc
・最高出力:95ps/1万2000rpm
・最大トルク:63Nm/9500rpm