いつか私たちを襲うと予想されている巨大地震。日本で暮らす人々は、日常が一瞬で「リセット」されてしまうこの災いを常に頭の片隅に置いている。
大災害によってリセットされてしまえば、その土地の記憶はもう戻らないのだろうか。実は、点群データと呼ばれる技術が家々の一つひとつまで仮想空間に保存することを可能にしている。静岡新聞社編集局社会部長の鈴木誠之氏が解説する。
唐突な「ゼロ」へのリセットに抗う
美術評論家の椹木野衣氏はその論考「震美術論」において、日本列島という「悪い場所」を地質学的観点から再考し、この地に生きる我々の宿命について、印象的な言葉で語っている。「唐突な『ゼロ』へのリセットと終わりの見えない不毛な反復を余儀なくされ続けるのは、この列島の表層の上で死ぬまで揺さぶられ続ける私たちの宿業かもしれない」と。
大地震などの大規模災害が発生すれば、我々が慣れ親しんだ日常の景色は一瞬にして崩れ去ってしまう。まさに文字通りの「唐突な『ゼロ』へのリセット」が、幾度となく日本列島を襲ってきたのだ。そして次なるリセットが、いつどこで起きても不思議ではない。しかし、この日本列島の宿命とも言える「唐突な『ゼロ』へのリセット」に、デジタル技術を用いて抗おうとする動きがある。リセットの前に、現実世界の形をそっくりそのまま保存してしまおうというのだ。そのための技術の一つが「点群データ」である。
この技術は、我々が失ってしまうかもしれない景色や建造物、そして文化的遺産を、デジタル空間に永遠に留めておくことを可能にする。それは、「ゼロ」へのリセットに抗う、人類の知恵と技術の結晶とも言えるだろう。
点群データによって保存された世界は、たとえ現実の世界が失われたとしても、その記憶を留め、再現することができる。それは我々に希望を与え「不毛な反復」に抗う一助となりうる。たとえ「ゼロ」からの再出発を余儀なくされたとしても、より強靭で、より豊かな未来への道筋を与えてくれるかもしれない。
現実世界を仮想空間に復元する点群データ
点群データとは、多数の点の集合体を用いて、物体や空間の形状を仮想空間に再現する技術である。各点は緯度、経度、標高からなる座標データと色の情報などを持ち、対象物にレーザーを照射して取得する。もし対象物の表面を大量のビーズで覆い、全てのビーズの座標と色の情報を一覧に書き留めることができるとしたら、それが点群データに例えられる。この一覧を基に仮想空間上にビーズを再配置すれば、現実世界の対象物を仮想空間に復元できる。応用範囲は広く、建築、土木、考古学など様々な分野で活用される。
その記録対象のスケールは、卓上のコップから故郷の山々に至るまで幅広い。さらに、VR技術の発展により、点群データを用いた没入(イマーシブ)体験も可能である。例えば、ある商店街がシャッター通りになったとしても、賑やかだった頃の商店街を仮想空間上で散策できる。まるでタイムマシンで過去に戻ったかのように錯覚するだろう。点群データは、単なる記録に留まらず、時空の超越体験を演出する芸術的な側面も持っている。
※本稿は、モダンタイムズ(https://www.moderntimes.tv/)に掲載された記事の前半部分です。
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