バブル経済期までの日本企業は新卒採用・年功序列・終身雇用が大前提で、退職した社員を「裏切り者」とみなす企業も多く、一度退職すれば二度と同じ企業に就職できないという考え方が当たり前でした。

 しかし、バブル崩壊後の長引く不況下にある近年、多くの企業が大前提を保持できなくなり、退職した社員への対応にも変化が出てきています。この新しい流れを象徴するのが「出戻り社員」の急増です。

●企業の期待が高まっている「出戻り社員」

 出戻り社員とは、一度退職した企業に再雇用された社員のこと。アメリカでは、投げて戻ってくる様子になぞらえて「ブーメラン社員」と呼ばれます。もともと人材の流動性が高いアメリカでは珍しくない存在でしたが、日本でも制度を整えて積極的に募集する企業が増えているのです。

 出戻り社員を求める企業は、どのような点に魅力を感じているのでしょうか。

●出戻り社員を再雇用するのは、教育する時間やコストが減るため!?

 求人情報や人材紹介のサービスを手掛けるエンジャパンの調査によると、一度退職した社員を再雇用したことがある企業は全体の67%。すでに過半数の企業が出戻り社員を迎えています。

 最大のメリットは即戦力になること。即戦力といえば中途採用社員も優れたスキルを身につけていることが多いですが、出戻り社員はスキルだけでなくその企業のシステムややり方にも通じているので、教育する時間やコストが大幅に抑えられます。

 出戻り社員の年齢と性別では、30代の男性が46%と最も多く、次いで40代の男性が36%。女性では30代の割合が15%と最も多く、中心はバリバリ働ける年代です。この点からも、企業はすぐに活躍してくれる人材を求めていることがわかります。

●「戻ってきたくなるほどよい企業である」と伝えられる

 また、出戻り社員は人となりがわかっているのもメリットです。ほとんどの企業は採用時に面接を行いますが、やはり短時間で把握できる性格や考え方には限界があります。これに対して出戻り社員はすでに一度採用されて働いており、どんな人物かわかっているので安心なのです。

 しかも出戻り社員は他社を見ることで視野が広がり、出戻りした企業のよさを改めて認識しています。この結果として「戻ってきたくなるほどよい企業である」と周囲に伝えられるのも、企業にとってプラスになります。

 近年は人口減少による人材不足も問題になっており、メリットが多い出戻り社員に対する企業の期待は大きくなっています。「ジョブリターン」や「キャリアリターン」などの名称で、一度退職した社員の再雇用制度を整える大手企業も増加中。ネット広告を手掛けるファンコミュニケーションズは、「出戻りさんいらっしゃい!」と銘打った再入社社員インタビューを自社サイトに掲載して、出戻り社員を歓迎する社風をアピールしています。

●誰でも出戻りできるわけではない

 企業にとってメリットが多い出戻り社員ですが、もちろん誰でも受け入れられるわけではありません。企業と喧嘩別れしたり、競合他社への転職を隠したりといった印象の悪い退職をした場合は出戻りがかなり難しくなります。

 このほかにも、退職前にしっかりした実績をあげられたか、転職先でも実績を残して自分の市場価値を高められたかなど、出戻りには越えなければならないハードルが存在します。仕事に対する意識の高さは、どこに行っても忘れないようにしましょう。

 出戻りを果たしやすくするためには、退職後も元上司や元同僚と連絡を取り合って関係を保つことが効果的です。SNSを活用してつながり続けるのもよいでしょう。こまめに連絡を取っていれば、戻りたいときにすぐ相談できます。元上司から復帰を打診されることも珍しくありません。

 思い切って転職しても、うまくいかないことはよくあります。出戻りはそんなときの心強い保険になるでしょう。その道を自分から閉ざしてしまわないためにも、現在の職場とは円満な関係を保つ心構えが大切です。

<参考サイト>
・出戻り社員(再雇用)について エンジャパン
http://partners.en-japan.com/enquetereport/108/
・出戻りさんいらっしゃい ファンコミュニケーションズ企業サイト
https://www.fancs.com/saiyou/demodori