2017年12月23日、第6回となる「ブラック企業大賞」が発表され、都内で授賞式とシンポジウムが開かれました。2017年度の大賞は「株式会社引越社・株式会社引越社関東・株式会社引越社関西(アリさんマークの引越社)」に決定。ほかの受賞企業は以下のとおりです。

・業界賞:新潟市民病院
・特別賞:大成建設、三信建設工業
・ブラック研修賞:ゼリア新薬工房
・ウェブ投票賞:日本放送協会(NHK)

●「引越社」が大賞に選ばれた理由は?

 ブラック企業が社会の注目を浴びるなか、「この程度でブラックとは呼べない」「どこでもやっていること」と開き直りを見せ、従業員に一層のモラハラを加える企業や会社幹部も少なくありません。その典型が、今年の大賞に選ばれた「アリさんマークの引越社」グループです。

 今回のノミネート理由は、引越社関東所属の男性営業社員をシュレッダー係に配転し、懲戒解雇したこと。その際、懲戒解雇の理由を「罪状」などと記載した顔写真入りの書類(罪状ペーパー)をグループ内の店舗に掲示させ、社内報にも掲載しました。

 なぜこれほど元社員をさらし者にしたかったのかというと、彼が「プレカリアートユニオン」という、非正規でも入れる労働組合に加入していたから。そもそも営業からシュレッダー係への配置転換も、労組からの団体交渉申入れのあった後すぐのことでした。2017年8月に東京都労働委員会は、これらの配置転換や労組からの脱退を促す行為に対して、不当労働行為と認定しました。

 引越社関東は、2年前の「ブラック企業大賞2015」でも「ウェブ投票賞」「アリ得ないで賞」をW(ダブル)受賞。その際、副社長が「ブラック企業大賞をエサに企業恐喝まがいの行為をし、金銭を要求することが真の目的なのかもしれない」などとウェブ媒体でやつあたり発言をしています。

 2017年の3月には「組合への勧誘は悪徳マルチ商法への勧誘が本当の目的」と張り紙をした行為が不法行為であるとして、名古屋地裁より50万円の支払を命じられています。

●「過労自殺」がこんなに多い、日本の労働事情

 「業界賞」の新潟市民病院では女性研修医が自殺、「特別賞」の大成建設・三信建設工業では2020年オリンピック・パラリンピックの会場となる「新国立競技場」担当者の新人男性社員(23歳)が自殺しています。いずれも長時間労働による過労が原因であることが、労働基準局などによって認定されています。

 「ブラック研修賞」を授与されたゼリア新薬工房は、2013年4月にMR(医薬情報担当者)として入社した22歳の男性社員が、新人研修受講中の同年5月18日に自殺したもの。男性は、かつて吃音だったことやいじめを受けたことを大勢の同期の前で告白させられるなどした結果、強い心理的負荷により精神疾患を発症したとみられています。

 一般市民が選ぶ「ウェブ投票賞」は、日本放送協会(NHK)に。ノミネートの理由は、2013年7月、31歳の女性記者がうっ血性心不全で死亡した事件。亡くなる直前1か月間の時間外労働が159時間37分(遺族側の調査では209時間)に及んだことから、過労死が労災認定されています。

●ブラック企業に命を奪われたくなければ、残業はセーブ!

 今回「選」を漏れたノミネート企業は以下の4社です。

・株式会社いなげや

 2014年6月、店舗チーフだった社員が店の駐車場で倒れているのを客に発見され、脳血栓で亡くなったそうです。2016年6月に労災認定。遺族側代理人によると、発症前4カ月の時間外労働は平均75時間53分、サービス残業も確認されたといいます。

・パナソニック株式会社

 2016年6月にパナソニックデバイスソリューション事業部の富山工場に勤務する40代男性社員が自殺。2017年2月に過労自殺と認定されました。2016年5月の残業時間は100時間超え。調査途中、他の社員2名への違法長時間残業も判明し、書類送検。

・大和ハウス工業株式会社

 埼玉西支社の営業職だった20代男性に違法な時間外労働があったとして、2017年6月に労基署から是正勧告を受けました。資料作成など、大量の作業を展示場事務所や営業車内で隠れて行っていた男性はうつ病を発症し退職を余儀なくされたとのことです。

・ヤマト運輸株式会社

 2016年12月、神奈川平河町支店のセールスドライバー(SD)への残業代未払いで是正勧告。2017年5月、パート従業員の勤務時間改ざんと賃金未払いで、西宮支店が是正勧告。また、17年9月には博多北支店のSDに月102時間の違法残業をさせたことで、法人と幹部社員が労働基準法違反の疑いで書類送検。

 「過労死」「過労自殺」は、遺族が公表して初めて明るみに出るもの。今回ノミネートされた9社のうち6社までが、いわば「死者による告発」「命がけの抗議」だったことは、押しても引いても変わらない日本の労働環境の劣悪さを表しているといえそうです。

 ちなみに、2016年の大賞は広告代理店「電通」で、24歳の女性社員が社員寮から飛び降り自殺したことによるものでした。

<参考サイト>
・ブラック企業大賞
http://blackcorpaward.blogspot.jp/