子どももおとなも気軽に楽しめることでブームになっているのが、動物学者一家に育った今泉忠明先生監修の『ざんねんないきもの事典』(高橋書店)。「ざんねんなところこそ、あえて愛しい」「癒し効果抜群」「親子で対話が弾んだ」と、感想を寄せる声が尽きません。

 書籍は正続2冊で、取り上げられている「ざんねんないきもの」は、延べ237種。昆虫から哺乳類まで、「一生けんめいなのに、どこかざんねんないきもの」が集められています。子どもにとっては「進化のふしぎ」を知る楽しさでいっぱいですが、おとなにとっては「これ、あの人に似てない?」と身につまされる生態もいっぱい。オフィスや家庭でありがちな「ざんねんないきもの」を探してみました。

●ケンカっ早いが逃げ足もはやいエリマキトカゲ

 80年代に自動車のCMで空前のブームを起こしたエリマキトカゲ。天敵におそわれると「えりまき」をグワッと大きく広げて威嚇します。でも、それだけでは相手はひるまないことがほとんど。効果がないとわかると、エリマキトカゲはくるっと回れ右して、安全な場所まで全力で走って逃げるといいます。

 指示がコロコロ変わる上司に対して、一度はゴネてみるものの、すぐに引き下がって指示通りに黙々働く自分、エリマキトカゲなのかなぁ? 

●愛想笑いのチンパンジーか、下痢ぎみのゴリラか?

 オランウータン、ゴリラ、チンパンジーと言った類人猿は、人と共通する部分がやはり多くて、照れてしまいます。

 若いオスのオランウータンの特徴は、ケンカの強さが顔に出ること。ケンカに勝つと、男性ホルモンが分泌して、顔の両脇にあるフランジという出っ張りがたった1日で発達するそうです。強くないのにたまたま勝ってしまったオスは悲惨で、ほかのオスに会うといじめられるため、こそこそ逃げ歩くとのこと。

 ゴリラは見かけによらずナイーブな性格。知能が発達しているためストレスに弱く、神経性の下痢にかかりやすいといいます。また、言葉にはいたりませんが、ゲップやセキなどの音で仲間同士のコミュニケーションを取っているのだそう。やたらに咳払いで注意喚起してくるあの人は、やはりナイーブな性格なのでしょうか?

 いつも群れになって暮らしているチンパンジーは、表情が豊か。怒ったり驚いたりするだけでなく、自分より強い相手には「愛想笑い」をやってのけるといいます。なかでもチンパンジーのオスは完全な序列社会。子ザルやメスと比べると、示威行動や毛づくろいなど、社会的行動の多さが目立つとも言われます。

 まるで鏡を見るような類人猿たちの「ざんねん」さ。動物園でもそっとしておいてほしいと、子どもたちに祈るような表情のお父さんと遭遇することがあります。
 
●死ぬまで頑張るウマ、真似で落命のタヌキ

 笑えないのはウマの生態。普通、動物は限界が来る手前で力をゆるめますが、ウマだけは命がけで最後まで全力を尽くす過労死タイプ。レースなどでも走っている最中に心臓発作を起こす姿がたびたび見かけられます。

 子どもを意識した本書には書かれていませんが、繁殖の最中に心臓麻痺で死亡する種牡馬の例も、枚挙にいとまがないといいます。選べるならせめて…と思いますが、やはり頑張りすぎは慎みましょう。

 一方、笑ってしまうのはタヌキの習性。タヌキは銃声などの大きな音がすると気絶して動けなくなり、猟師が近づくと、飛び起きて逃げていきます。「タヌキ寝入り」という言葉の由来です。

 最近では、道路に飛び出したタヌキが車の前で気絶してしまい、そのままひかれる事故が増えているといいます。人間にたとえると、狂言自殺で亡くなってしまうようなものでしょうか?

●ティラノサウルスの高タンパク食

 最後に絶滅した動物のなかから「ざんねんだけど、身につまされる」例を。白亜紀の大型肉食恐竜ティラノサウルスです。

 ティラノサウルスの前足の化石からは、「痛風」とみられる痕が見つかっています。その原因は生の赤身肉や内臓など「高プリン食」の食べ過ぎが原因だとか。

 ライオンなどの肉食獣は尿酸を分解できるため痛風にはなりませんが、恐竜はそれができなかったのです。他にもトカゲ、亀、ワニなどの爬虫類、鳥類などは痛風になりやすいとのこと。尿酸値が気になるあなたには、他人事とは思えませんよね。



<参考文献>

・『おもしろい!進化のふしぎ ざんねんないきもの事典』(今泉忠明監修、高橋書店)