遺産相続は、故人が亡くなってから10カ月後の相続税申告がゴールになります。10カ月といえば長く感じますが、49日(1.5カ月)は喪に服す期間ですから、実際に使えるのは8カ月あまりです。その間の流れをざっと確認しましょう。

●ゴールに向けて、モノ・コト・ヒトをクリアにする

 最初にするのは、遺言書の有無と中身を確認すること。そして、故人が生まれてから亡くなるまでの戸籍を参照して、法的に相続権を持つ人数を確定していきます。次に遺産目録を作っていきます。

 遺産には、借金などのマイナスの相続も含まれます。遺産を相続するか放棄するかは3カ月以内に決めて、放棄する場合は手続の必要があります。

 4カ月以内には、相続人全員で「所得税準確定申告」を行いますが、財産をどう分けるかはこの後の話し合いで決めていきます。その後、各種手続を経て相続税の申告・納付手続に至ります。

●遺言書は、相続の切り札!

 遺言書があろうとなかろうと、法律で決まっていることは曲げられない、夫が亡くなれば妻子には自動的に財産が残ると思っていませんか。実は、遺言書の効力は法律よりも上位。基本的には遺産を相続する者や分配方法を自由に指定することができます。

 遺言書にはいくつか形式がありますが、最も簡単な「自筆証書遺言」は、書面に遺言書の作成年月日や遺言書の氏名、内容が自署(パソコンは不可)で記入され、自身の印鑑が押印されていれば有効とされます。あとで見つかると、もめるのは必定。自宅の隅々から銀行の貸金庫まで、よく探しましょう。

 遺言書らしきものが出てきても、あわてて封を切ってはいけません。封印のあるものは開けると無効となる可能性もあり、5万円以下の過料となる場合もあります。自筆証書遺言は、たしかに故人が作成したものと認定(検認)するため、家庭裁判所へ提出する必要があります。

 有効な遺言書で「全財産を友人のAに遺贈する」とあれば基本的にそれに従わなければなりませんが、配偶者、子ども、父母については「最低限これだけ相続できる」という相続財産の割合が保証されています(「遺留分」)。例えば上のケースで、故人に配偶者がいれば、全体の2分の1は遺留分となり、妻(と子で分ける)分になります。遺言書で指定されたA氏は残り2分の1しか相続できません。

●相続人と財産の確定への道のり

 遺言書がない場合、相続財産は相続人同士で自由に分けることができます。ここでも法律より相続人が上位であることにご注意ください。どのような割合で分ければいいのか迷ったり、話し合いがまとまらないときに基準となるのが、「法定相続分」という指標です。

 すべての相続で「相続の権利」が発生するのは、配偶者と子どもです。また、2013年の民法改正で、婚姻関係のない非嫡出子(内縁の子)についての相続分が嫡出子と平等になりました。ただし、父親の認知が必要で、戸籍に認知した旨の記載があるかどうかが相続の権利を定めます。

 相続人を確定して遺産を分割するには、故人が生まれてから亡くなるまでの家族関係を戸籍でチェックする必要があります。予想外の異母きょうだいや隠し子が見つかることもあり、意外に手間取ることの多い作業です。

 一方で、故人の財産を確定させるため、通帳や不動産の権利証などを探していきます。遺言書の指示やエンディングノートなどがあれば便利ですが、ない場合は仏壇や神棚の中、床下、つぼの中など、故人が大切なものをしまっておきそうな場所の捜索が必要です。

 不動産がある場合は、法務局で登記事項証明書(登記簿謄本)を取得し、登記の名義人に故人以外の人が名を連ねていないか、銀行なのどの担保に入っていないかを確認します。

 銀行や保険会社の取引確認も手を抜けません。通帳の取引履歴から思わぬ財産を発見することもあれば、負債が見つかることも。貸金庫がある場合は、金融機関に依頼して見せてもらいます。

●遺産分割後に遺言書が出てきたら、どうなる?

 意外に多いのが、このケース。原則として、故人の遺志となる遺言書が法定相続より優先されるのは、前半で言った通りです。その内容は重視しなければなりませんが、相続人全員の間で遺産分割が円満に終わっていれば、やり直す必要はありません。

 どうしても見直す必要があるのは、以下の場合です。

・遺言書どおりの遺産相続にやり直したい人が一人でもいる
・遺言書に法定相続人以外の人物が指定されていた
・遺言書に相続人の廃除が書いてあった
・遺言書に遺言執行人が指定されている

 遺言書には時効がありませんので、数年、数十年後に出てきても、その内容は有効です。遺言書を残すときは、家族や親族に保管場所を必ず通知しましょう。


<参考文献>
『わかりやすい図解版 身内が亡くなったあとの「手続」と「相続」』(岡信太郎・本村健一郎・岡本圭史監修、三笠書房)