自分を含め身内が亡くなる前に準備しておきたいこと。それは、「エンディングノート」です。

 遺産相続の手続きでは、亡くなった人は遺言書を残さない限り、自分の気持ちを伝えることはできないのでしょうか。そこまで改まらず、いわゆる「終活」の一環として気軽に家族や友人にメッセージを伝える方法として、普及してきたのがエンディングノートです。

●エンディングノートの標準的な構成

 エンディングノートは、書籍や文具として市販されています。また、葬儀社や自治体などが無料で配布する場合もあり、スマートフォンのアプリも出はじめています。

 標準的なのは、文房具の老舗コクヨS&Tの「もしもの時に役立つノート」。累計60万冊以上売れていて、Amazonではベストセラー1位を続けています。

 ページを開くと、マンガ形式で4見開きの事例解説があり、どんな場面でエンディングノートがあれば役に立つかがわかるようになっています。

 実際に自分で書き込むページは50ページあまり。コクヨ帳簿紙を使っているので、普通のノートのようにへたりにくく、インクがにじまず、長期保存にも適しています。「自分のこと」「資産」「気になること」「家族・親族」「友人・知人」「医療・介護」「葬儀・お墓」「相続・遺言」「その他」とカテゴリー分けされているので、どこから書き出しても、どこでやめてもOKです。

●日常生活のことも、介護や延命のことも伝えられる

 エンディングノートの特長は、遺言書と違って医療や介護、日常生活についての細かな希望も伝えられること。

 たとえば虫垂炎など、ほんの短期間の入院でも、家に残された家族には不便が伴います。何がどこに置いてあるのか、引き落とし口座やかかりつけ医はどうすればいいのか、いちいち口頭やメールで指示するのは面倒くさく、間違いやヌケもありがちです。

 また、自分に必要なことをまとめてバックアップしておけるので、たとえばIDを忘れてしまったとか、財布を落としてクレジットカードに連絡する場合など、厄介な数字を管理する備忘録役も果たします。

 さらに、脳梗塞などで発語が困難になったときにも、普段考えている医療についてのポリシーを、家族を通じて医師に伝えることができます。介護について、かなり細かいところまで自分の意見を反映することもでき、延命治療の程度など、あらかじめ「ここまで」と区切ることができるのは、親を看取った方には切実な問題のようです。

●ガイドに従って書けば、情報の宝庫になる

 コクヨの「もしもの時に役立つノート」は、整理された項目設計の使い勝手が抜群。要所要所にワンポイント解説、欄外には関連事項へのミニガイドがついているので、書き込みやすさも抜群です。

 例えば「ペットについて」のページでは、「かかりつけの動物病院」、「加入しているペット保険」「行きつけのトリミングサロン」などの記入欄からスタート。ペットの名前や「好きなエサ・嫌いなエサ」「避妊・去勢の有無」など、ガイドに従ってメモするだけで、重要な情報のアーカイブになっていきます。

 最後の「もしもの時の希望」は自由記入欄ではあるのですが、事例として「◯◯さんに引きとってもらうお願いをしています」「家族で世話をお願いします。□□が寿命を迎えたら、△△に埋葬してください」などとあり、まだ方針を決めていない人にとっても、かゆいところに手が届く気配りです。

●データ活用もOK、そのまま遺言にはならないので注意

 巻末付属のディスクケースの主な用途は「遺影」写真の指定。最近は考え方も変わり、「縁起でもない」と言う人より、「お気に入りの一枚で旅立ちたい」という人が増えました。専門に撮影してくれるスタジオもありますが、手持ちのデータからベストショットを選ぶのも、一つの楽しみ方になりますね。また、もちろん、パソコンの中にある大事なデータを取り出して、伝えておくこともできます。

 エンディングノートの、コンパクトな割にたしかな実力、おわかりいただけたでしょうか。記入する都度「記入日」が書かれていれば、遺言書の代わりにもなりそうですが、やはりこれはノート。法的な拘束力はないので、どうしても貫きたい意志があれば、遺言書への移行がオススメです。