カスタマー・エクスペリエンス・マネジメント(CEM)を支援する中国スタートアップの「瀚一数拠科技(Han Yi Data Technology)」(以下「瀚一数拠」と略称)が、プレシリーズAで数百万ドル(約数億円)を調達したことを発表した。リード・インベスターは「SIG」で、コ・インベスターはエンジェルラウンドでも出資した「真格基金(ZhenFund)」など。同社は2019年末のエンジェルラウンドで数百万ドル(約数億円)を調達している。今回調達した資金は、主に同社が手掛けるCEMプラットフォームである「体験家(XMPlus)」の技術開発に使われる。

エクスペリエンスのデータの重要性

瀚一数拠は2018年の創業で、多様なデータを使ったカスタマー・エクスペリエンス向上のためのソリューションを企業向けに提供している。

技術の進歩と消費行動の変容から、今は「エクスペリエンス・エコノミー(体験経済)」の時代だと言われている。消費者は製品の機能や標準化されたサービスだけでは満足できず、よりよい体験を求めるようになっており、そのための対価を惜しまなくなっている。こうした状況に対し、従来の顧客管理システムであるCRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)では取引のデータしか取得できず、カスタマー・サービスを追加した際も苦情が来てから修正するしかない。それに対し、CEMはより能動的に顧客体験に関するデータを収集するものであり、企業はそのデータを参考にリピート率の向上、製品やサービスの改善などの措置を講じることができる。

CEMへの注目度は近年高まっており、この業界では2019年に米国の「Medallia」が約40億ドル(約4200億円)の評価額で上場を果たしている。また、「Qualtrics」も目論見書を提出し、評価額は144億ドル(約1兆5000億円)となっている。市場調査会社の「MarketsandMarkets」の試算によると、2020年の全世界のCEMの市場規模は85億ドル(約8800億円)で、今後5年間の年平均成長率は約12%となる。中国国内でも同様に急成長しており、2025年には数百億元(約数千億円)規模の市場になるという。

データの収集からアラートまでの自動化

瀚一数拠の創業者兼CEOの辛済雲氏によると、従来は専用のアンケートで顧客満足度を調査する手法がメインだったが、この手法には、事業とのつながりが薄い、有効回答率が低い、データの質にばらつきがあるといった課題があり、その結果に基づいて改善することが困難だった。それに対し、CEMプラットフォームの「体験家」は、購買行動と同時にアンケートを行うことができ、各種アプリやWeChat、アリペイを通して顧客データの収集が可能だ。さらに、これらのデータをAPIで取引のデータ、行動のデータと融合させ、より踏み込んだ分析が行える。

体験家の機能は、主に3つのモジュールに分かれている。まず、データ収集モジュールだ。これはオンライン、オフライン問わず、顧客とのタッチポイントのすべてにおいて顧客体験データを収集し、それを取引データ、顧客ペルソナ、口コミの内容、行動データなどと突き合わせて、統計的に分析するものである。

タッチポイントでのデータ収集

次に、スマートBI(ビジネスインテリジェンス)モジュールである。このモジュールは社員の職位や権限に応じて、閲覧可能なデータをカスタマイズするものである。社員は自分の職務と関連する顧客データをリアルタイムで確認でき、パフォーマンスの改善の参考とすることができる。

カスタマイズされた顧客データ

そして、スマートアラートモジュールである。これは中国で使われている主要なビジネスツールや、社内の通信システムと接続することができ、顧客のネガティブな反応や顧客流失のリスクがある際に、すぐに担当者にアラートを送信するものだ。企業の対策の効率性の向上と、顧客第一の実現に繋がるだろう。

スマートアラートモジュール

瀚一数拠は現在、企業の実情に合わせたデータ収集方法をコンサルティングで把握した上で、カスタマイズされた機能を提供し、月額使用料で収益を上げている。顧客は30社以上あり、小売り、自動車、金融、不動産、教育などの大手企業が中心だ。有名な企業では、洗剤メーカーの「立白(liby)」、WeWork、クラシファイド広告の「58同城(58.com)」などがある。(翻訳・小六)

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