半導体業界では生産力不足を理由に昨年10月からドミノ式に値上がりが続いている。特にウェハー製造やクローズドベータテストは深刻な状況だ。両者とも多少の価格変動では需要に影響しないため、新型コロナ禍によって製造能力が制限を受けた状況下では短期間での原状復帰は難しそうだ。

無論、新型コロナ禍だけが値上げの要因ではない。端末向けAIチップを製造する某スタートアップのCEOは、米中貿易摩擦により人為的に製造コストが引き上げられ、半導体業界で世界的にバランスを失する状況に陥ったと指摘する。跳ね上がったコストは当然、下請けに転嫁されていく。

しかし36Krが取材を進める中で、業界内では一連の価格高騰の背景について、「欠品状態は擬似的なもの」との共通認識を持っていることがわかった。生産力不足は確かな事実ではあるものの、ファーウェイなどの一部企業による買い占めが値上がりの真の原因であるという。

「欠品」の実情

こうした買い占めの実態について、ある業界関係者は以下のように説明する。

■TSMCへの滑り込み発注
米国による輸出規制に対応するため、ファーウェイは昨年1月より在庫の積み上げを積極的に進めてきた。その核心となる法人向けICTソリューション事業ユニットでは、輸入部品を1年分以上確保済みだともされる。

5月になると米国はファーウェイ締め付けを本格化。米国の技術を用いて製造されたチップ製品を調達するには許可証が必要となった。そこでファーウェイは台湾のファウンドリー(半導体受託製造)大手「TSMC(台湾積体電路製造)」に対し、5nm製造プロセスおよび7nm製造プロセスを含むチップを滑り込み発注。発注額は7億ドル(約740億円)にも上り、TMSCのキャパシティーをオーバーするほどだったという。テンセントのニュースメディア騰訊新聞によると、ファーウェイは昨年上半期、1年分以上のチップの在庫確保に1800億元(約2兆9300億円)を投じたという。

■SMICも禁輸対象に
中国のファウンドリー大手「SMIC(中芯国際集成電路製造)」も同様、昨年9月下旬に米商務省産業安全保障局(BIS)による「エンティティ・リスト(禁輸リスト)」に掲載された。中国の金融系ニュースサイト金融界(JRJ.COM)の10月の報道によると、SMICは過去数カ月にわたり製造設備や代替部品の輸入を増やし、中国国内のチップメーカーと共同で集中型倉庫を建てて在庫を積み上げたという。

事情を知る関係者によると、SMICが欧米や日本などのサプライヤーから調達した設備は2020年の1年間に必要とした規模以上で、設備の運転に必要な消耗品の購買数も年間需要量以上に達したという。

■ファーウェイ以外のスマホメーカーも在庫争奪戦
昨年9月に米国の技術を用いて製造した半導体製品の供給が全面的に禁止されて以降、ファーウェイに続く中国の大手スマートフォンメーカーOPPO、シャオミ(Xiaomi)、vivoも、ファーウェイの空けた穴を埋めるべくこぞって在庫の確保に走った。在庫の買い占めはサプライチェーンの川下から始まって川上にも伝播し、業界全体で在庫強化の波が起こったのだ。

業界関係者によると、半導体関連企業は3カ月分の在庫を確保しておくことが常態化しており、一部では6カ月程度の在庫を積み上げているメーカーもあるという。

■業界再編につながるか
チップの製造能力が復調するには半年から1年単位の時間が必要だというのが業界の大方の認識だ。つまり早くても今年下半期か来年初めごろになる。

今回のチップ価格高騰は半導体業界全体に波及し、企業の規模や業種によらず、事業の成長に少なからず負の影響を及ぼしている。一方で、これを機に半導体業界のエコシステムが再編されるとの見方もある。多くの資本が投じられることでバブル状態を呈していた半導体業界だが、ベンチャー企業の淘汰が起こり、リスクマネジメントや持続可能な成長能力を有する企業だけが生き残る可能性もあるという。
(翻訳・愛玉)