自動車メーカーは今年、新型コロナウイルス感染症の発生以降最大の危機に直面することになるだろう。

半導体の供給ひっ迫により、ドイツ、米国、日本、中国などの自動車メーカーは生産スピードを緩めざるをえない状況となっている。この結果、中国の1月の自動車生産台数は15.9%、販売台数は11.6%の下落となった。6月には世界の自動車メーカーの減産規模は150万台に達するとの見込みだ。

半導体不足の原因とは

今回の半導体不足の表向きの原因は、昨年末の自動車市場の急速な回復にある。世界の自動車市場の3分の1を占める中国を例に挙げると、販売台数は2019年同期比で5.4%増となっている。コロナ禍の影響を受け、自動車部品サプライヤーの注文量は下方修正されたが、年末の受注急増により生産状況が突如としてひっ迫する結果となった。

だが仮にそうだとしても、車載半導体が問題となることは考えがたい。車載半導体の生産プロセスは十分に成熟している上にコストも低く、製造難易度もスマートフォン用半導体とは比較にならないほど低い。だがまさに車載マイコン(MCU)が低コストであるがゆえに、自動車メーカーがMCUの生産の安定性を重視しないという結果につながっている。自動車メーカーとサプライヤーはさらなるコスト削減のため、垂直分業モデル、すなわち生産と研究開発の分離を実施し、生産のアウトソーシングを行っている現状がある。

大手調査会社IHS Markitの統計によれば、世界最大の半導体製造ファウドリ「TSMC(台湾積体電路製造)」は世界のMCU生産量の7割を請け負っているものの、台積電自身の財務レポートによれば、車載半導体は同社の売上高のわずか5%を占めるにすぎず、戦略的で重要な位置を占めているわけではない。

他人任せで安易な外注方式により、全世界の自動車メーカーの命運が全てTSMCの肩にのしかかることになった。自動車ニーズが急増した昨年末、部品供給メーカーはTSMCの生産能力がすでにスマートフォンやノートパソコンメーカーによって占められており、自分たちはわずかなおこぼれに預かるほかないことに気づいたのだ。

生産モデルの再考

ハイテク企業と比べ、自動車業界においては半導体生産を重視する度合いがはるかに低く、これが今回のチップ不足の根本的な原因となっている。

チップの原材料であるウエハーを例に挙げると、現在MCUで一般的に使用されているのはプロセスの成熟した8インチウエハーとなっている。だがこの8インチウエハーの生産ラインは2007年以降ほとんど増加しておらず、既存の生産ラインも更新されていないため老朽化のリスクに直面している。そしてより先進的な12インチウエハーの生産ラインも自動車業界の大々的な支持を得られているわけではない。こうした現状により、一たびリスクに直面すると自動車業界全体でウエハーの生産能力が不足するという結果につながっている。

半導体不足の発生後、この問題に気づいた企業は少なくない。ドイツの自動車部品メーカーであるコンチネンタルは、今後サプライチェーンに対する大々的な投資を行うと発表した。また独インフィニオン・テクノロジーズもオーストリアに12インチプロセスをベースとした新工場の建設を計画。半導体業界団体であるSEMIの予測レポートによれば、8インチプロセスの生産ラインは今年年末までに市場最高となる見込みだ。

今回の半導体不足は自動車メーカーだけでなく半導体にかかわる各種業界にも激震をもたらしている。インテル、クアルコム、マイクロン・テクノロジおよびAMD(アドバンスト・マイクロ・デバイセズ)などのトップ企業のCEOは、米国本土の半導体メーカーに対する支持の強化を依頼する書簡をバイデン米大統領宛てに提出した。米国製チップの比率は、コスト的な見地から30年前の37%から現在では12%まで落ち込んでいるが、新型コロナウイルス感染症に直面した今、業界大手はこうしたコスト削減のための「軽量化」戦略を見直し始めている。

またこうした半導体の国内生産の再興という流れの中で、中国の半導体産業の発展も重要な関心の的となっている。国内の資金は車載半導体領域に活発に流れ込んでいるが、中国の車載半導体産業の規模は世界のわずか4.5%にすぎず、自給率は10%にも達していない。ミドルレンジ・ローエンドの半導体分野においては、国内の優先課題は依然として「海外依存からの脱却」であり、これがスピード勝負であることは間違いない。

今回の車載半導体不足は、今後数年の生産構造に影響を与えるだろう。同時にこれは中国の半導体産業が「波に乗る」絶好のチャンスでもあるといえる。

(翻訳・神部明果)