大人気ショート動画プラットフォーム「抖音(Douyin、海外版はTikTok)」のEC事業部がEC専用のアプリを開発中だということがわかった。抖音に近い関係者からの情報によると、当該アプリは抖音のEC事業を全面的に拡大させるためのもので、現在の抖音アプリ内のEC機能を大幅に充実させる予定だ。ローンチ後は同じくバイトダンスが運営する抖音、「今日頭条(Toutiao)」などのアプリからトラフィックを誘導し、アリババ傘下のタオバオ(淘宝)、天猫(Tmall)」と同等の規模を目指すという。

トラフィックをどのように収益化させるかはインターネット企業の課題である。主な方法はEC、ゲーム課金、広告、ライブ配信で、なかでもECの効率が最もよい。バイトダンスは早くからEC展開を構想しており、2014年に今日頭条のアプリ内に「今日特売」という名称のEC機能を追加したのがその始まりだ。

この機能は2017年から「放心購」に名称を変更し、ECを使い慣れていない40歳前後の男性向けにアパレル商品やバッグを中心に販売するようなった。2018年9月にはさらに「値点商城」と改称し、独立したアプリ「値点」もローンチした。このアプリの特徴は工場直売という点だった。しかし、「値点」はECプラットフォームの激しい競争を勝ち抜くことができなかった。今はアプリはサービス停止となり、今日頭条内のEC機能を残すのみとなっている。

今日頭条からECへ展開する試みが失敗に終わったことで、バイトダンスは、ショート動画プラットフォームである抖音からECへ展開する方針に切り替えた。

抖音は2018年初めにマーケットプレイス機能を追加し、当初はタオバオと提携する形で、タオバオに出店する事業者を抖音のマーケットプレイスに出店させた。提携は始めはうまく行ったものの、抖音での店舗が増えるにつれ、タオバオのトラフィックを押し下げるようになった。そのため、提携から2年が経った2020年に、タオバオとバイトダンスが互いのリンクを貼ることを制限するなど対立状態に陥った。

2020年6月、タオバオとの対立とほぼ同じタイミングで、バイトダンスはEC事業部を立ち上げ、傘下各プラットフォームのEC機能を統括することとなった。そのなかで中心となったのは抖音だ。その後、抖音は店舗管理アプリのローンチや決済サービスの開始など、ECのための下準備を整えてきた。

それにより、抖音はトラフィックと取引データをすべてコントロール可能な状態となり、EC展開に対する制限がなくなった。これは抖音に出店する事業者にとっても歓迎すべきことで、抖音のEC事業部発足から7カ月後の2021年1月に発表されたデータによると、当月売上高が100万元(約1700万円)を超えた店舗は2648店となり、これらの店舗だけで110億元(約1900億円)以上のGMV(流通取引総額)を記録した。また、ビジネスメディアの「晚点(LatePost)」の報道によれば、2020年の抖音のEC事業のGMVは5000億元(約8兆5000億円)で、2019年の3倍以上となった。

これだけ大きな規模になると、ショート動画がメインの抖音のアプリ内のEC機能にとどまっていては、ポテンシャルを十分に発揮できない。したがって、抖音から独立したECアプリをローンチするのは理にかなった判断だ。抖音はECに気を取られることなく運営でき、ECアプリはより自社ブランドを含むより大きな市場を開拓できるようになる。

バイトダンスが今日頭条にEC機能を追加してから7年が経った。新たに登場するECアプリによって、バイトダンスが一気にECのトップ企業に躍り出る可能性もあるだろう。

(翻訳・小六)