中国IT大手テンセント(騰訊)は15日、プラットフォーム・コンテンツ事業群(以下、PCG)の組織再編と人事の調整を行ったことを発表した。主な調整は以下の通り。

1,PCG傘下に、動画共有サービスの「テンセント・ビデオ(騰訊視頻)」、ショート動画「微視(WeShow)」、Androidアプリストア「応用宝(MyApp)」を統合した「オンラインビデオ・ビジネスユニット(OVB)」を設立し、引き続き動画分野の強化に努める。

2,テンセント副総裁の孫忠懐氏が新しいビジネスユニットのCEOに就任し、コンテンツや経営、会員システムを主管するほか、同じく副総裁の林松涛氏が同ビジネスユニット総裁として、製品体系や技術面を監督する。

3,テンセント副総裁でインタラクティブ・エンターテインメント事業群(IEG)天美工作室群(TiMi Studios)総裁の姚暁光氏がPCGソーシャルプラットフォーム事業の責任者を兼任し、SNSツール「QQ」を主管する。前責任者の梁柱氏はテンセント・ミュージック・エンターテインメントのCEOを努めることになった。

4,テンセント副総裁の陳菊紅氏がニュースアプリ「騰訊新聞(テンセントニュース)」の責任者を外れ、別の重点事業への異動となった。

今回の組織再編はPCGが設立された2018年9月以降で最大規模の調整となる。

テンセントは、世界を席巻したショート動画アプリTikTok(抖音)の運営元バイトダンス(字節跳動)に対抗するため、一時はサービス提供を停止した微視を2018年に再リリースした。しかし2年余りの攻防もさしたる成果にはつながらず、むしろテンセントの国民的SNS「WeChat」がプッシュする動画アカウント「視頻号(channels)」にコンテンツクリエイターが集まっている状況だ。

現在、微視のデイリーアクティブユーザー(DAU)は4000〜5000万人だが、TikTokの本国版「抖音」は約6億人、同じくショート動画の「快手(Kuaishou、海外版は『Kwai』)」も約3億人に達している。快手も抖音もショート動画事業をベースに、ライブ配信、EC、音楽、映画、教育などの分野への事業拡大を急速に進めており、バイトダンスの評価額は4000億ドル(約43兆5000億円)に上っているほか、今年2月に上場した快手も時価総額が1400億ドル(約15兆2300億円)を超えている。

ショート動画というサービス形態の持つ商業的価値や事業の可能性は計り知れない。

台頭するショート動画プラットフォームの台頭により、長編動画プラットフォームは押され気味だ。著作権問題にも頭を痛めている。4月9日、中国の映画・ドラマ製作会社や動画プラットフォームなど70社が著作権保護に関する共同声明を発表し、第三者のコンテンツ使用に際して事前にライセンスを取得するという健全な環境を作り上げるよう、ショート動画プラットフォームやパブリックアカウントのコンテンツ制作者に呼びかけた。

長編動画プラットフォーム同士の著作権争いも終息する兆しは見えない。長編動画分野のツートップはテンセント・ビデオと「愛奇芸(iQiyi)」だが、その2社でさえ経営は赤字が続いており、アクティブユーザーや有料会員数の増加は鈍化している。

このため長編動画プラットフォームはユーザー単価を高める必要性に迫られている。テンセント・ビデオは今月、有料プランの値上げを発表、愛奇芸はそれより早く値上げに踏み切った。

テンセントは昨年、愛奇芸の買収を水面下で進めていたが、独占禁止の規制や世論を受けて頓挫してしまった。生き残りをかけてライバルの大手プラットフォームと手を組むという道は閉ざされたことになる。

テンセントはこれまでも「コンテンツ」を核心戦略に据えてきたが、今はなんとしても抖音に対抗できる製品を生み出す必要がある。ただショート動画アプリの二番煎じでは市場シェアに食い込むことは難しく、グループを挙げて微視にリソースをつぎ込んだとしても抖音や快手には追いつけないだろう。

こうした背景のもと、テンセントは長編動画とショート動画のシナジーを模索するため、内部組織の再編に踏み切った。長編動画のテンセント・ビデオとショート動画の微視を統合して設立されたのがオンラインビデオ・ビジネスユニットであり、映画・ドラマ、エンタメ、UGC(一般ユーザーが制作するコンテンツ)を一本化するというテンセントの新たな試みだ。大ナタを振るったこの改革は果たして吉と出るだろうか。
(翻訳・畠中裕子)