中国の音楽配信プラットフォームは長期にわたり「テンセント・ミュージック・エンターテインメントグループ(TME、騰訊音楽娯楽集団)」、「ネットイース・クラウド・ミュージック(網易雲音楽)」、アリババ傘下の「蝦米音楽(Xiami Music)」による三つ巴となっていたが、蝦米音楽が今年初めに閉鎖され、市場は二分された。

こうした中、ショート動画アプリ「抖音(Douyin、海外版はTikTok)」などを運営するバイトダンス(字節跳動)が新たなプレイヤーとしてシェア獲得を虎視眈々と狙っている。

バイトダンスは今年、音楽事業部を立ち上げ、すでに4つの事業ユニットを設立したようだ。抖音にもともと音楽の大きなニーズがある上、海外ではすでに音楽配信アプリをリリースしているため、同社が中国の音楽配信市場に参入するのは時間の問題だと多くの業界関係者は考えている。

ある関係者は、バイトダンスが音楽事業を統合すれば業界に変化がもたらされると予想しており、抖音や動画配信プラットフォーム「西瓜視頻(Xigua Video)」をベースに同社が音楽の配信、プロモーション、著作権運用を総合的に展開するとの見方を示した。

同社は製品イノベーションが盛んなことから「アプリ工場」と称され、ショート動画、教育、無料小説、撮影ツールなどで大ヒット製品をリリースしている。音楽配信エコシステムとバイトダンスのショート動画エコシステムは密接につながっており、バイトダンスの参入は業界に大きな波紋を起こすだろう。

バイトダンスも抱く「音楽の夢」

バイトダンスが中国の音楽配信市場に参入するとのウワサは以前から流れ、他社のプラットフォーム買収や自社製品の開発を進めるほか、既存事業をベースに参入する可能性が報じられてきた。

抖音にはすでに音楽コンテンツの運営を担う部門があり、バイトダンス中国エリアCEOの張楠氏が統括している。同部門の仕事は爆発的に売れそうなクリエイターを見つけ出し、その音楽コンテンツを配信しやすいよう加工してヒットさせることだ。

しかし、コンテンツ運営だけではバイトダンスが抱く「音楽の夢」を叶えられない。そこで「中国音楽事業開拓」部門も設け、抖音や関連事業を支えるために著作権会社やインフルエンサーなどと長期的な協力関係を築いている。

昨年6月には「抖音音楽のブランド化」を正式に発表した。

海外では2019年10月に米ワーナー・ ミュージック・グループ(WMG)からオーレ・オルバーマン氏を招いた。同氏はロンドンを拠点にTikTokグローバル音楽部門の責任者を務めている。

人材を集めてプラットフォームを構築

バイトダンスの音楽アプリ「Resso」がすでに海外で成功していることから、中国市場への参入は既定路線のように思われる。Ressoは昨年3月にインドネシアでリリースされ、9月までの半年間でダウンロード数が1520万回に達した。12月には「2020年Google PlayベストAndroidアプリ」に選ばれ、ブラジルでもユーザー投票により年間アプリに選出されている。

中国のメディア「Tech星球」によると、バイトダンスは音楽サービス「飛楽(feiyue)」のトライアルを行い、すでに「feiyue.com」のドメインも取得したという。加えて、楽曲の著作権販売プラットフォーム「BeatDynamic」などのトライアルも進めているようだ。

同社は公式求人サイトに音楽系ポストを随時掲載し、プロモーション企画マネージャー、ユーザープロダクトマネージャー、ミュージシャン管理担当者、イベント企画担当者、ミドルオフィスプロダクトマネージャー、戦略マネージャーなどを募集している。

TME、ネットイース・クラウド・ミュージック、蝦米音楽は音楽配信事業を軌道に乗せるために8年近く競い合い、著作権やコミュニティ、楽曲リコメンドシステム、ミュージシャン向けインセンティブシステムなどの構築に取り組んできた。一方でミュージシャンとプラットフォームの収益向上も長年の課題となっている。

これまでの音楽配信プラットフォームは広告との相性が悪く、TMEの最も収益が大きいサービスはライブ配信とオンラインカラオケで、ネットイース・クラウド・ミュージックに至っては黒字化を果たしていない。バイトダンスは「音楽そのものでどのように稼ぐのか」という問いに対する答えを出せるだろうか。

作者:Tech星球(ID:tech618)、李暁蕾

(翻訳・神戸三四郎)