世界における液晶ディスプレイ(LCD)市場のほぼ半数を「Made in China」が占めている今、中国がLCD産業のトップであることに異議を唱える人はいないだろう。

液晶パネルメーカー「TCL華星光電(CSOT)」は今年3月、江蘇省蘇州市にある韓国サムスンディスプレイの生産ラインを正式に取得した。同じく液晶パネル大手「京東方(BOE)」も同業者である「中電熊猫(CEC Panda)」の買収を行うなど、中国のパネルメーカーは依然としてLCD分野での事業拡大に注力している。一方でサムスンやLGなどの韓国企業はLCD生産からの撤退に踏み切ろうとしているところだ。

前篇:パネル価格が上昇、堅調なLCD需要&中国が日韓を抜き去りトップを独走

新技術に挑む大手メーカー

世界のLCD産業が比較的安定した成長をキープしているなか、なぜサムスンやLGは続々とLCD事業からの撤退を決めたのか。

韓国企業がLCD事業から手を引いたのは、攻めの決断と言える。ポテンシャルが大きく、より強みを生かせる有機EL(OLED)や量子ドットディスプレイ(QLED)、ミニLED、マイクロLEDなどの分野にリソースを集中投入するためなのだ。

出荷量だけで見ると、最大のディスプレイ市場はモバイル端末だろう。スマートフォン市場では液晶画面から有機ELへのシフトが進んでおり、クリアな画像や応答速度の速さ、消費電力が少ないなど有機ELの特性は、今やハイエンド機種に欠かせない要素となっている。

16〜22年の搭載ディスプレイごとのスマホ出荷台数、単位:100万台(データ出典:中国産業信息網)

スマホサイズの小型OLEDでは、サムスン1社だけで市場の4分の3近くを占めており、短期的に情勢が大きく変わることはないと思われる。

ハイエンドテレビ市場に目を移すと、近年有機ELテレビが一般家庭にも手の届く状態になり、量子ドットテレビやミニLEDテレビも続々と量産にこぎ着けている。これら新しいディスプレイ技術はこれまでの液晶テレビをはるかに上回る高画質を実現している。

大型のハイエンドOLEDでは、現時点で主導権を握っているのはLGだ。大画面で高画質を可能にしたWRGB方式はLGの特許技術のため、ライバル企業が同等の画質を実現するには膨大な時間とリソースをつぎ込んで別の技術を開発するほかない。

液晶パネルが残ったパイを奪い合っている状態なら、チャンスに満ちているのはこれら新技術のディスプレイ市場だろう。サムスンやLGは新技術における先発優位を利用して、新たな市場における自社の圧倒的地位を早くに確立したのだ。

当然、TCL華星などの中国メーカーもこの点に気づいており、LCD市場での優位性を保ちつつ、新興技術の研究開発も積極的に進めている。今年初めに開催された世界最大のテクノロジー見本市「CES 2021」で、TCL華星は「印刷式OLEDスクロールディスプレイ」「AMOLEDローラブルディスプレイ」「量子ドットテレビ」「ミニLEDテレビ」「スマートフォンTCL20シリーズ」など最新製品を発表した。

中でもAMOLED(アクティブマトリクス式有機EL)を使用した巻き取り式のディスプレイは、本体が10ミリほどという薄さが売りで、巻き取り軸の部分も折りたたみスマホのヒンジに比べシンプルな構造になっている。

TCL華星は昨年中、研究開発のために59億元(約990億円)以上を投じており、フレキシブルOLEDやミニLED、マイクロLEDなどを幅広く手がけている。投資額は前年に比べ37%増加し、研究開発費の占める割合は12.6%に達した。

先ごろ、IoT家電・スマホ大手のシャオミ(小米科技)が最高スペックの折りたたみスマホ「MIX FOLD」を発売したが、この端末のディスプレイにはTCL華星製のフレキシブルAMOLEDが採用されている。ちなみにファーウェイの折りたたみスマホ「Mate X2」は京東方製のフレキシブルAMOLEDを採用している。

これから迎える5G時代、AI+IoT時代は全てのものがネットワークでつながる世界だ。ネットワークを介して双方向のやり取りをする上で、しばらくはディスプレイが主なツールとして活躍するだろう。スマホ、パソコン、スマート家電などあらゆるものにディスプレイが搭載される。

中国のパネルメーカーにとって、液晶の分野でトップに立ったことは完全勝利に至る一歩に過ぎない。ディスプレイ生産のコア技術で世界と対等に戦うには、これからも険しい道を歩み続ける必要がある。

作者:智東西(WeChat ID:zhidxcom) 雲鵬、漠影

(翻訳・畠中裕子)