吉利汽車(Geely)が4月15日にプレミアム電気自動車(EV)ブランド「ZEEKR(極氪)」を発表してから半年足らず、いまだ1台目の納車を終えていない「極氪智能科技 (ZEEKR Intelligent Technology)」の評価額がすでに90億ドル(約9900億円)近くに上っていることがわかった。

極氪智能科技は8月27日、インテルキャピタル(Intel Capital)、寧徳時代(CATL)、ビリビリ動画(Bilibili)、鴻商集団(Cathay Fortune Group)、博裕投資(Boyu Capital)と戦略投資に関する契約を締結している。今回の資金調達ではインテルキャピタルがリードインベスターを務め、5社からの調達額は5億ドル(約550億円)で極氪智能科技の持ち株比率の約5.6%を占める。資金調達後は、吉利汽車が48%の株式を保有する最大株主となった。吉利汽車の親会社である「吉利控股集団(Geely Group Holdings)」が46.4%を保有。これに基づき試算すれば、現在の極氪智能科技の評価額は89億ドル(約9800億円)となる。

とはいえ、これは極氪智能科技の資本市場における第一歩に過ぎない。今回の資金調達に関して極氪智能科技の安聡慧CEOは、「プレシリーズAは特に戦略投資家を対象としたものであり、同社の今後の評価額を代表するものではない。今後はIPOに向けて各シリーズで資金調達を行う」との意向を示した。

チップやバッテリーメーカーが投資

公告によると、今回の資金調達後、極氪智能科技の株式に占める吉利汽車の持ち株は51%だったものから約48%に下がった。しかし、吉利汽車がこれまで通り最大株主であることには変わりなく、極氪智能科技の董事会での発言権もある。吉利汽車は今後も極氪智能科技を管轄下に置き、財務業績も連結決算として財務諸表に組み込むとしている。

吉利汽車の傘下で誕生した極氪智能科技は資金不足に陥ってはいないようだ。決算報告によると、2021年上半期の吉利汽車の純利益は前年同期比31%増の30億2000万元(約510億円)、21年6月30日時点の現預金残高は199億2000万元(約3400億円)となっている。

多くの新興自動車メーカーが資金調達を行いながらなんとか生き延びている中、極氪智能科技は違う。初めての資金調達の目的は、同社のビジネス理念である「共創共投」にあった。極氪智能科技は未来汽車日報の取材に対し、「共創共投」はユーザーや世界のすぐれたエコシステムのパートナーと共に創り上げ、スマートEV分野のエコシステムを共に推し進めるものだとの考えを示した。

中信証券(CITIC Securities)のアナリストである王晨宇氏によれば、資本投資家と比べ、企業投資家は資金だけではなく、長期的かつ安定的に戦略パートナーとしての地位を確立できる。投資による「マネタイズ」のニーズはそれほど強くないため、極氪智能科技が今後推し進めるIPOにプラスに働くと分析した。

今回の投資家は、チップ、バッテリー、バッテリー原材料などの分野に関わっている。

画像提供:極氪智能科技公式サイトより

長いIPOまでの道のり

安CEOによると、今回のプレシリーズAでの資金調達後、極氪智能科技はIPOに向けて大きな一歩を踏み出したという。これは調達資金額だけからみても、すでに上場している「蔚来(NIO)」、「理想汽車(Li Auto)」、「小鵬汽車(Xpeng Motors)」に比べ、極氪智能科技の初回調達額が5億ドル(約550億円)というのはこの3社の10倍を超える額であることがわかる。

あるスタートアップ企業の共同創業者は、調達の時期とラウンドは上場と連動してはいないが、「スタートラインが高いということは、今後の評価額がより高くなることを意味する」という。2017年にシリーズDで10億ドル(約1100億円)の資金を調達したNIOの評価額は約50億ドル(約5500億円)だった。

招商証券(China Merchants Securities)のリポートでも、長期的にみて極氪智能科技の評価額上昇の可能性はかなり大きく、吉利汽車の時価総額をも押し上げることが期待されるとしている。

8月30日時点での時価総額は、NIOが623億ドル(約6兆8000億円)、小鵬が345億ドル(約3兆8000億円)、理想が296億ドル(約3兆3000億円)となっている。一方の吉利汽車の時価総額は2642億香港ドル(約3兆7000億円)規模だ。

しかし具体的な上場計画に関して極氪智能科技の袁璟CFOは、現時点では明確なIPO計画はないが、今後資本市場に参加することは否定できないとしている。

吉利グループは6月25日、上海証券取引所のハイテク企業向け市場「科創板(スターマーケット)」にあと一歩のところで、企業経営と企業戦略の調整により、今回のIPOと科創板への上場申請は撤回することにしたと発表。また同日、極氪智能科技も今後の持続的な発展のためさまざまな資金調達計画を模索すると発表している。

画像提供:極氪智能科技公式サイトより

上場を目指す極氪智能科技は多額の優良資産を手に入れてきた。

吉利自動車は7月2日、極氪グループ(極氪が株式を保有する企業およびその傘下企業)はEVの開発、生産、販売に必要となる資産と技術を獲得するため、吉利グループ完全子会社である「CEVT」、「浙江浩瀚能源(Zhejiang Haohan Energy Technology)」とは買収契約を、また「寧波威叡電動車技術」とは株式引受契約を締結した。

しかし現時点では、米国や香港での上場、あるいは科創板での上場のいずれにしてもIPOへの道のりは厳しい状況だ。

ロイター社は7月30日、米国での上場に関して米国証券取引委員会(SEC)は中国企業のIPO申請を一時的に中止し、新たなガイドラインを作成中であると伝えている。オンデマンド家事代行サービスの「天鵝到家(Daojia)」、ソーシャルフィットネスサービス大手「Keep」、音声コンテンツプラットフォーム「喜馬拉雅FM(Ximalaya、日本での名称は『himalaya』)」、ソーシャルECアプリ「小紅書(RED)」など多くの企業が米国でのIPO申請を中断されている。

一方の香港証券取引所は2020年末、メインボードの上場基準要件を、直近1年の最低収益額を2000万香港ドル(約2億8000万円)から5000万香港ドル(約7億円)に引き上げた。

これは、IPOを目指している極氪智能科技にしてみれば、今後の市場でのパフォーマンスによってすべてが決まってくることを意味している。

(翻訳:lumu)