ホンダは今月13日、中国市場に向けて電気自動車(EV)の新ブランド「e:N(イーエヌ)」シリーズの市販予定モデル2車種とコンセプトモデル3車種を発表した。盛り上がるEV市場を傍観していたかに見えた同社が、ようやく動き始めた。中国本部長の井上勝史氏は、同社が「新たなマイルストーンを刻んだ」と表現している。

井上氏によると、e:Nシリーズは中国で最初に発売する計画で、将来的には現地にある約1200のホンダ販売店にe:Nシリーズコーナーを設けるほか、中国からの輸出も予定している。

同社は、中国を含む先進国におけるEV・燃料電池車(FCV)の販売比率を2030年に40%、2035年に80%、2040年に100%とする目標を掲げている。中国では2030年以降は、発売する新車を全てEVやハイブリッド車(HV)などの電動車とし、新型ガソリンモデルは投入しないという。

東風ホンダの「e:NS1」スペシャルエディション 画像提供:ホンダ 画像提供:「未来汽車日報」

e:Nシリーズはいずれも先進的なスマート化技術で構築した総合システム「e:N OS」を搭載し、AI音声アシスタント、ホームリンク、エネルギーマネジメント、OTA(オーバー・ジ・エア)などの機能を集約。市販予定モデルの「e:NP1」と「e:NS1」は、カメラを通してドライバーの状態を認識し、必要に応じて車からアクティブに警告することで安全な走行をサポートするドライバーセンサーシステム「DMC」を初めて搭載する。

中国EV市場で足場を固めて世界へ

ホンダの電動化戦略において、中国市場は最も重要な戦場となった。

中国では今年に入ってからも、新エネルギー車(NEV)市場の成長が続いている。中国汽車工業協会(CAAM)によると、9月のNEV販売台数は前年同期比1.5倍増の35万7000台で、NEVの普及率は過去最高の19.5%を記録。ホンダはもう傍観していられなくなった。

e:Nシリーズの発売に向け、中国の合弁会社「広汽ホンダ」と「東風ホンダ」はそれぞれ新たなEV工場を建設し、2024年の稼働開始を目指す。

部品の完全現地調達を目指すホンダは、車載電池大手の寧徳時代(CATL)を戦略パートナーとし、バッテリーを共同開発する。両社は2020年にNEV⽤バッテリーに関する包括的なアライアンス契約を締結し、ホンダは寧徳時代の株式約1%を取得した。

画像提供:寧徳時代の公式ウェブサイト

ホンダの担当者によると、e:Nコンセプトモデルを中国の若い消費者の美的センスに合わせるため、デザインチームは全員を中国人デザイナーとし、若手を中心に構成した。最年少者は22歳だという。

世界最大のNEV市場となった中国では、NEVに関する産業チェーンの最適化も進んでいる。「京津冀(北京市・天津市・河北省)」エリア、香港や広東省広州市を含む「珠江デルタ」、上海市を中心とする「長江デルタ」など、各地に新エネルギー産業クラスターがあり、EVの製造に必要な全ての部品をほぼ1日で調達することができる。

米テスラ(Tesla)が部品の現地調達率を急速に上げているのもこれが要因だ。テスラ上海工場では、年内にも部品の現地調達率が90%に達する見込みだという。ザック・カークホーンCFOは昨年第1四半期、上海工場における「モデル3」の生産コストは、すでに米フリーモント工場よりも低くなっていると話していた。

ホンダも中国のNEVに関する産業チェーンの優位性を利用し、電動化目標の達成を早めようとしている。

広汽ホンダの「e:NP1」スペシャルエディション 画像提供:ホンダ

自動車産業に特化したコンサルティング会社「カノラマジャパン」代表取締役の宮尾健氏は、中国市場で足場を固めることは、ホンダが2040年までにカーボンニュートラルを達成するための前提条件であり、「EV参入のベストシナリオ」になると指摘。ホンダはすでに米自動車大手ゼネラル・モーターズ(GM)と提携しているが、中国にはより先進的なEV市場があるとの見方を示した。

中国の消費者はEVに対する受容性が高い。井上氏は「市場の大きさと競争の激しさは比例する。中国のEV市場で足場を固められれば、グローバル市場でも通用する」との認識を示した。

(翻訳・神戸三四郎)