米投資ファンドTPGキャピタルは4月27日、気候変動対策に特化したファンド「TPGライズ・クライメート」を総額73億ドル(約9600億円)で最終クローズしたと発表した。これはTPGのインパクト投資プラットフォーム「TPGライズファンド」の一部として募集されたもので、複数の大手機関投資家のほかグローバル企業28社から出資が集まった。(編集部注:「インパクト投資」とは財務的リターンに加えて、社会的・環境的にポジティブなインパクトを生じさせる目的で行う投資のこと)

TPGライズファンドは2016年の設立以来、すでに中国で4件のプロジェクトに投資し、現時点での資産管理規模は140億ドル(約1兆8300億円)に達する。今回、募集を完了したTPGライズ・クライメートは2021年に設立されたファンドで、同年7月に最初のクローズで54億ドル(約7000億円)を調達した。

TPGライズ・クライメートは、グロース・エクイティや付加価値施設など複数セクターを対象とした投資戦略を採用し、気候変動と関係の深いクリーンエネルギー、脱炭素ソリューション、脱炭素交通、グリーン産業、農業および自然ソリューションという5つの分野に焦点を当てている。

現時点でTPGライズ・クライメートは、気候変動対策に取り組む成長型企業に対してすでに20億ドル(約2600億円)以上の投資を行っている。例えば太陽光発電用追尾システムメーカーNEXTrackerへの支援や、BluesourceとElement Marketsの合併を後押しして北米最大の炭素・環境クレジット提供企業にしたほか、インド自動車メーカーのタタ・モーターズとパートナーシップを結び、インドの電気自動車産業の推進に力を注ぐなどしている。

TPGキャピタルの共同創業者で取締役会長のジム・コールター氏がTPGライズ・クライメートの管理パートナーを務め、取締役会長は元米財務長官のヘンリー・ポールソン氏が務める。中国においてはTPG中国エリア会長の孫強氏が全てのインパクト投資プロジェクトを主導する。

孫氏は、インパクト投資は道義と利益の両立が可能だと繰り返し公言している。TPGはほかのファンドとは異なり、投資インパクトを金額に換算して数値化することに初めて踏み切った。

孫氏は、確たる測定基準がないことが、中国のインパクト投資の体系的発展を妨げていると考える。特に脱炭素投資の場合、定量的な基準がなければ、投資による排出削減効果を明確にするのは難しい。「定量化する利点は、異なる地域や業種間で一貫した明確な基準を作り上げ、さまざまな投資プロジェクトのインパクトを比較・評価しやすくすることにある。定量的な判断ができれば、投資による社会的効果がいっそう明確になる」

TPGはインパクト投資の意思決定を行う時、金銭的リターンだけでなく、予想されるインパクト・リターンも評価する。「どちらが欠けてもいけない」のだという。そのためにTPGは公益団体「Y Analytics」を設立し、IMM(インパクト測定・マネジメント)という手法で投資プロジェクトの社会的インパクトを数値化しているほか、投資済みプロジェクトの定期的な評価も行っている。

孫氏の話によると、2020年末時点で、TPGライズファンド設立以来の社会的利益を現金換算すると、インパクトのリターンが投資総額とほぼ同水準となっており、さらに投資が進むにつれてインパクト・リターンも大幅に増加する見込みだという。
(翻訳・畠中裕子)