ガソリン車時代、部品やシャシーなどのコア技術を持ち自動車産業で強力な発言権を持っていたのが独自動車部品大手ボッシュだ。しかし自動車スマート化の流れの中で、米EV大手テスラがいち早く自動運転ソフトウェアの自社開発を始めた。各自動車メーカーもますます「ソフトウェア定義型自動車」を重視するようになり、もはやTier1(一次サプライヤー)を飛び越えて自動運転ソフトウェアを手がける企業や、米NVIDIAやクアルコムなどさらに川上にある半導体メーカーと提携するようになった。

新しい自動車サプライチェーンの中で、ボッシュはかつてない試練にさらされており、ここ数年、事業の転換が同社にとっての重要な課題となっている。

自動運転技術を開発する中国のスタートアップ企業「文遠知行(WeRide)」が先月、ボッシュの戦略的投資を受けたと発表した。両社は提携協定を締結し、共同で自動運転ソフトウェアを開発、ボッシュが中国で高レベル自動運転ソリューションの早期実用化を進めるほか、L2〜L3の標準装備の量産と実用化を進めることで合意した。

ボッシュのクロスドメインコンピューティングソリューション事業部の中国エリア総裁を務める李胤氏は「高レベル自動運転システムの開発や検証はボッシュが主導して行い、文遠知行は主に実用場面でのソフトウェア開発を行う。今後1〜2四半期のうちに自動車メーカーから注文を受け、来年には量産を開始できるだろう」との見方を示した。

ボッシュ 中国ではローカライズ戦略か

現在、実用化されている自動車のスマート化機能は主にスマートコックピットと自動運転の二つに分かれる。

前者に関し、ボッシュはクアルコムの8155プラットフォームを基にスマートコックピットの制御装置を開発している。後者のスマート運転に関しても同社は以前、カメラ、ミリ波レーダー、 超音波レーダーなどソフト・ハードウェアが一体となった運転支援プロダクトをリリースしている。しかし対応できるのはL2(部分運転自動化)止まりだ。より高度な自動運転を実現するには、ソフトウェアのアルゴリズムをサプライヤーに頼るしかない。

従来型の完成車メーカーに勤める社員の一人は36Krの取材に対し、同社内部の高級車種の自動運転機能にはファーウェイとボッシュのソリューションを採用する予定だと明かした。ハイスペック車種にはファーウェイの5R13V(5つのミリ波レーダーと13のカメラ)ソリューション、ロースペック・ミドルスペック車種にはボッシュの5R1V(5つのミリ波レーダーと1つのカメラ)を採用する方針だという。

ボッシュは近年「中国の自動車市場はスマート化で先行しており、この分野でトップを目指すなら中国市場に力を入れる必要がある」ことに気づいたと李氏は取材の中で話している。

そのため、ボッシュは大胆にもまだ自動車製品の量産経験がない文遠知行に目を付けた。これ以前に文遠知行はグーグル傘下の米ウェイモ(Waymo)を目指し、ずっとL4の自動運転技術の開発を進めていた。

文遠知行は昨年、ロボタクシーのほか自動運転の小型バス(Mini Robobus)、貨物トラック(Robovan)、路面清掃車(Robo Street Sweeper)と製品ラインナップを拡大し、自動運転のビジネス化におけるあらゆる可能性を探っている。今回ボッシュとの提携を通して、L2の自動運転分野にも参入することとなった。

提携にあたり両社はプロジェクト方式を採用する計画だ。数百人のエンジニアが投入される予定で、ボッシュは本国ドイツからもバックアップするという。現時点で投入資金額は明かされていない。

「このプロジェクトはボッシュが中国で行うものとしては規模がかなり大きい。20年ほどボッシュにいるが、ドイツでの研究開発にもこのように多額の資金を投入した例を見たことがない」と李氏は明かした。

ボッシュが自動車のスマート化、それも中国市場を特に重視していることは明らかだ。中国市場を手に入れるためには今回のローカライズ戦略が重要な一歩となるだろう。
(翻訳・山口幸子)