LiDARチップを開発する中国スタートアップ企業の「蘇州識光芯科技術(Sophoton)」(以下、識光)がこのほど、百度風投(Baidu Venture)の主導するプレシリーズAで資金を調達した。

2021年に設立された識光は、自動運転やロボット、XR(クロスリアリティ)などの端末向けに高性能・低コストのSPAD(単一光子アバランシェダイオード)チップとそれに関連するdToF 3Dセンシング技術を提供している。(編集部注:SPADは光の粒子一粒でも検出できる高感度の半導体素子)

オートメーション化が進展し、スマート化の実用シナリオがますます明確になるに従い、市場におけるLiDARの需要も増加を続け、自動運転から産業オートメーション、家電製品に至るまでさまざまなデバイスで活用されるようになっている。調査会社の仏Yoleは、自動運転や産業向けLiDARの市場が2027年までに63億ドル(約8100億円)になると予測、うちADAS(先進運転支援システム)向け市場は最大20億ドル(約2600億円)となり、年平均成長率は73%に達するとしている。XRはスマートフォンやVR・ARなど消費者向けデバイスの急成長をけん引する新たなトレンドであり、LiDARの活用が急増すると期待されている。

識光はワンチップ化やシステムオンチップ化を通じて、高性能の裏面照射型SPADや単一光子測距エンジン、積層型dToFセンシングアルゴリズム・アクセラレーター、LiDAR制御ユニット、高速データポートなど主要モジュールを1つのチップに集約し、データ取得の完全デジタル化と大量データのリアルタイムオンチップ処理を実現した。これによりシステム構造が大幅に簡略化され、現在のLiDARが抱える性能や形状、信頼性、コスト面での限界を突破して、3Dセンシングの活用の幅を広げることに貢献している。

同社ははSPADエリアアレイチップの量産経験を持つ世界でも数少ないチームで、コアメンバーは世界初の大型SPADエリアアレイチップの量産を主導した経歴を持つ。サブシステムの責任者はいずれもシリコンバレーのトップクラスのチップ開発チームや国際的に権威ある研究機関の出身で、さまざまな大型チッププロジェクトに参加してきた。識光はコアデバイス、アナログ、デジタル、アルゴリズム、システムに至るまで、フルスタックの研究開発スキルを有している。またVCSEL(垂直共振器型面発光レーザー)とSPADを組み合わせたLiDAR技術のパイオニアとして、LiDARシステムの観点でSPADチップ・アーキテクチャを定義し最適化する独自のスキルを確立した。その強みを生かして、LiDAR分野での高集積チップ実現という技術的ハードルを克服し、開発期間を短縮しながら性能、効率、コストを最適化して、LiDARの全面的な普及を可能にした。

識光はこれまでに、エンジェルラウンドとプレシリーズAで約1億元(約20億円)を調達しており、大手のティア1サプライヤーやロボットメーカーなどからの受注も獲得している。また自動運転、ロボット、XRなど異なる活用シナリオに対応した拡張性の高いSPADチップ技術プラットフォームを構築した。今後は、既存チップの量産を進めるとともに、次世代のエリアアレイ型チップの開発を加速させる予定だ。

(翻訳・畠中裕子)