中医学(中国の伝統医学。以下「中医」)のオンライン化を手がける企業「脈之語(Maizhiyu)」はより多くのユーザーが名医の診察を受けられるよう、スマート機器とインターネットを活用し、遠隔での「脈診」を実現した。脈診は指で患者の脈に触れて病状を診断する中医の極めて基本的な診断方法だが、単なる脈の速さ、強さだけではないさまざまな脈の状況を感じ取って診断する名人芸のような技術であるため、機械化、遠隔化は難しいとされてきた。画期的な技術開発により、脈之語はエンジェル+ラウンドで生活関連O2Oサービス「美団点評(Meituan Dianping)」のエンジェル投資家・付棟平氏から数百万元(数千万円)を調達した。

中国で中医は都市生活者の日常的な健康管理だけではなく、幅広い年齢層に浸透しており、中医単独、あるいは西洋医学との融合による治療は一般的なものになっている。

脈之語が現在手掛けている製品は例えれば「脈拍ファックス機」というべきもので、リモートで脈診を行う。脈拍の状態を記録して再現することで、医師が遠隔地の患者の脈を診る。具体的には「脈拍採取計」と「脈拍復元計」という2つの機器によってそれを実現している。脈診に必要な脈の長さや位置などの情報を採取し、脈拍の強さや速さ、血管の幅や弾力性などの情報を再現する。疾病による脈の変化を見る際に必要な「浮、中、沈」の脈の位置についても、脈象(指で触れた際の脈の状態)の自然な変化を再現できる。製品は自社開発で、全部で4つの特許技術を取得している。すでに試作機は完成しており、量産化が可能な状態だ。

画像提供:脈之語

脈之語は最初、この機器を中医学校、研修グループ、学生、基礎レベルの医療従事者などをターゲットとした教育市場に投入した。これは中医学の世界に名医が非常に少ないことが理由で、「国医大師(国家から栄誉称号を受けた中医師)」や国家レベルの中医師は中国全土で数百人足らずで、結果として学生が名医に師事できる機会はとても少ない。また伝統的な脈診の教授方法は書籍による教育が中心で、さまざまな脈象を表す表現は「小刀で竹をけずるよう」、「降る雨が砂のよう」、「病気の蚕が葉を食べるよう」など難解だ。脈之語は名医が不足している難題を解決するために、スマート機器と教育用の動画を統合し、より多くのユーザーにリモート学習できる環境を提供した。

脈之語はリモート教育に続いてリモート診療業務を開拓しており、これが現在の業務拡大の要だ。新型コロナウイルスの影響でインターネットによる遠隔医療の価値が高まり、業界ではオンライン医療が重視されている。

従来のリモート診療は、基礎レベルの病院が1〜2週間前にリモート診療の申請を出し、申請を受けとった大型病院が手続きを進めてきたが、各手続きが煩雑で手間がかかる。脈之語の方式は病院向けに簡単な診療を提供しており、脈拍採取計と脈拍復元計という2つのスマート機器によって、病院間のコミュニケーションを簡略化し、医者同士も動画チャットによって直接会話し診察することを可能にした。

脈之語はすでにチェーン展開する民間診療所「慈方中医(Cifang Chinese Medicine)」でこの業務を展開している。また現在「北京市第一中西医結合医院」と戦略提携を進めており、今年中に同医院の5つの診療科で導入が予定されているとのこと。

同社の収益モデルを見ると、リモート診療の費用は患者が負担し、脈之語はその中から規定の比率に基づいてサービス料を徴収する。患者にとっての利点は、従来のリモート診療では通常1000〜2000元(約1万5000円〜3万円)かかっていたが、脈之語では数百元(数千円)で済むということだ。これは一般の患者にとっても負担可能な金額で、利用者の拡大につながる。

今後、脈之語はリモート診療市場の開拓に重点を置き、来年6月までに中国全土で50の三甲級(最高の三ツ星クラス)の病院へこのシステムを提供する予定だ。また現在すでに病院情報システム(Hospital Information System)を手掛ける某プラットフォームと提携しており、同プラットフォームに登録されている2000軒の診療所で同社のリモート診療が利用できる。

(翻訳・普洱、編集・後藤)