このほど、フォルクスワーゲン・グループ中国の Dr. シュテファン ヴェレンシュタイン(Dr. Stephan Wöllenstein=馮思翰)CEOが、公の場でレンジエクステンダー式の電気自動車を批判した。レンジエクステンダー式とは、電気自動車のバッテリー残量がわずかになったときに電力を補給するための小型エンジンを別途搭載するという方式で、バッテリーのみのEVより走行距離を伸ばすことができる。この方式について、馮CEOはCO2の排出を減らすという目的から外れているとした。

シュテファンCEOは批判対象を明言しなかったものの、新興EVメーカーのなかでレンジエクステンダー式を採用しているのは「理想汽車(Li Auto)」だけであるため、それを意識しているのは明らかだ。

レンジエクステンダー式の可否を含めて、電気自動車に関する議論は尽きない。シュテファンCEOはレンジエクステンダー式を否定したが、フォルクスワーゲンの電動化の方針はどのようなものだろうか。

プラグインハイブリッドとEV

フォルクスワーゲンが電動化へと舵を切ったのは、2015年に排ガス不正が明るみに出た後であり、先陣を切ったのはプラグインハイブリッド(以下「PHEV」と略称)であった。シュテファンCEOの予測によれば、今後5〜6年間で中国の新エネルギー車市場は500〜600万台規模になり、うちPHEVが20%〜30%を占めるようになるという。

しかし、最終的な目標はあくまでEVだ。フォルクスワーゲンは今後5年間で電動化に330億ユーロ(約4兆2000億円)を投資する計画を発表したが、これは同社の投資額全体の40%を占める。

フォルクスワーゲンの電気自動車「ID.3」 画像はフォルクスワーゲンの公式サイトより

昨年11月、フォルクスワーゲンは2029年までに最大75車種のEVと60車種のPHEVを発売し、累計販売台数を2600万台にするとの計画を発表した。しかし、投資計画が収益に響くのは避けられず、昨年11月18日に、フォルクスワーゲンは売上高と営業利益の予想を下方修正した。

そのため、フォルクスワーゲンはコストを下げようと様々な努力をしている。特にバッテリーについては、バッテリーメーカーとの長期的な提携によって、モジュール化バッテリーを開発している。同社は2025年にEVのコストが内燃機関車と同水準になると予測している。

疑問視されるレンジエクステンダー式

理想汽車は上場したばかりで、現在飛ぶ鳥を落とす勢いだ。昨年11月から出荷を開始した同社は、今年上半期に1万4892台を販売し、中国国内の新エネルギーSUVの販売台数トップとなっている。

中国政府がEVへの補助金を減額したため、理想汽車のほかにも、「宝能汽車(Baoneng Motor)」、「長城汽車(Great Wall Motor)」がレンジエクステンダー式を開発していると発表した。これは、レンジエクステンダー式のほうが低コストなためである。理想汽車の目論見書によると、内燃機関のSUVと比較した場合、EVのコストは30%〜35%増えるが、レンジエクステンダー式なら小型なバッテリーを採用できるため、その分コストが安くなるという。

しかし、レンジエクステンダー式をめぐっては、技術の面から疑問視する声が絶えない。とある新興EVメーカーの関係者は、「レンジエクステンダー式の最大の難関は、現在のプラットフォームが使えず、新しいプラットフォームをゼロから開発しなければならないことだ」と指摘する。また、中国の自動車専門メディア『中国汽車報』は、同じレンジエクステンダー式でも、メーカーごとに技術が細分化されているため、部品の共通化ができず、サプライヤーが乗り気ではないと伝えている。

さらに、EVのインフラの建設が加速していることも逆風である。中国は今年4月、充電スタンドも「ニューインフラ」の一つだと指定し、その後充電スタンドの建設が急速に進んだ。今後数年間で、外出先で充電できないという状況は大きく改善されるだろう。

そのため、証券会社の「平安証券(PINGAN SECURITIES)」はレポートにおいて、バッテリーのコスト低下とインフラの完備によって、EVと比べたときのレンジエクステンダー式のコスト、航続距離における強みはやがてなくなり、レンジエクステンダー式は今後の主流になりえないと結論づけた。

フォルクスワーゲンのような巨大企業が電気自動車への舵を切るのは簡単ではない。理想汽車も、レンジエクステンダー式の強みをいつまで維持できるか不透明だ。いずれにしても、電気自動車をめぐる競争は、市場が答えを出してくれるだろう(翻訳:小六)