「台風19号に伴うTW数は1300。一言一句全てに魂を込めた」

 22日、こう熱くつぶやいたのは長野県の公式ツイッターアカウント「長野県防災」。つぶやきの約70日前、千曲川の堤防決壊など甚大な被害が発生する中、県はツイッターを活用し被害状況や救助要請をまとめ、実際の救助につなげた。避難所生活や復旧作業など災害が長期化してからも、被災者に寄り添う言葉を連日投稿。「目頭が熱くなる」などと反響を呼んだ。ツイートする〝中の人〟はれっきとした県職員たち。SNSという新たな手段に試行錯誤しながらも、今も発信を続けている。(共同通信=岡田健太郎)

 「救助活動は本日夜も継続して行います。救助部隊は、必ず皆さんを迎えに行きます。不安な夜にしないため、全国の精鋭が長野に集まり、みなさんを助けるんだという強い意志のもと、活動を続けてくれてます。あきらめないで。私たちは必ず助けます!」

 長野市内の堤防が決壊した10月13日、県の対策本部に詰めていた情報発信担当の職員は、浸水した家屋などに取り残された被災者らに向けてツイッターによる呼びかけを続けていた。

 被害状況を把握するため、画像と位置情報に加えて「#台風19号長野県被害」のハッシュタグ(検索目印)を付けてツイートするように案内したところ、多数の救助要請も飛び込んできた。「子どもや赤ちゃんと一緒に救助を待っている」「家の周りが濁流にのみ込まれ、家族が2階に取り残された」

 一刻を争うような情報が次々に寄せられる中、職員は緊急度が高いと判断したものを災害時に使用するシステムに入力。情報は警察、消防、自衛隊、県内自治体などに瞬時に共有されるようになっており、50件以上の救助につながったとみられる。

 「長野県防災」のアカウントは以前から運用していたものの、ユーザーとのやりとりは原則としてしない決まりになっていた。しかし、住宅地は濁流にのまれ、状況は一分一秒を争った。「使えるものは何でも使おう」。対策本部で対応に当たった県危機管理防災課の窪田優希さんは「とにかく命を救うため、現場の判断で動いた」と振り返る。一方で、「SNSを使った救助要請は情報の錯綜(さくそう)が起きる可能性もあり、今回が正解かは分からない」とも話し、今後も検証を重ねてよりよい運用を目指す考えだ。

 長野市の一部では現在も家屋に流れ込んだ泥の撤去や農地の復旧など、終わりの見えない作業が続く。アカウントは救助活動が終わってからも、ボランティアの募集状況や入浴できる施設の情報などを継続的に発信。一日の締めくくりとして、夜に被災者に向けた温かいメッセージを投稿するのも慣例になった。

 「避難所で聞く雨風の音ほど、不安なものはないと思う。不安な夜を超えて、明日を迎えてほしい。困ったら、下を見ず、まわりを見てほしい。そこには、必ず我々がいます」

 「辛い思いは共有して生活再建を目指しましょう。決して一人ではありません。皆さんに寄り添えるよう明日も発信します」

 こうした投稿を数多くリツイートしたのが、長野県出身で平昌冬季五輪の女子500メートルスピードスケート金メダリストの小平奈緒選手。ネット上で反響が広がり、「信州の誇り」「心温まる」などと話題になった。

 英語と中国語に加え、日本語が苦手な人を念頭に簡単な言葉でもつぶやく試みも。「にほんごが にがてな がいこくじんの みなさんに、たくさんの がいこくごで はなしが できる でんわを つくりました」。平仮名で緊急ダイヤルの開設を伝えたツイートは数万回リツイートされ、他のユーザーが多数の言語に翻訳するなどして幅広く拡散した。

 群馬大の小竹裕人准教授(公共政策論)は「通常の救助要請は組織から組織への情報伝達に時間がかかる。インターネットを通じて被災者からの情報を行政側が直接受け取れれば、迅速な対応につなげることができる」として、運用の在り方を高く評価。「SNSに寄せられる救助要請などは不正確だったり、悪意のあるユーザーによるいたずらだったりする可能性も排除できない」と指摘するものの、「大災害時に、とにかく初動を早くするという意味ではかなり有効だと考えられる」としている。また、「多言語で発信したり、寄り添う言葉や生活情報を細かく伝えたりしているのも被災者にはありがたく、かゆいところに手が届いている」とも話した。

 窪田さんは取材に「心に響くようにと考え、自然に発信方法が出来上がった。多くの人に必要な情報が届いたならうれしく、これからも発信を続けたい」と語った。