9月、スピードスケートの新施設「YSアリーナ八戸」が青森県八戸市にオープンした。

 1周400メートルのトラックを備えた、国際大会の開催も可能な屋内リンクは長野市エムウエーブ、北海道帯広市の明治北海道十勝オーバルに続いて国内で三つ目。

 10月25日から3日間、こけら落としとして全日本距離別選手権が開催され、連日3000人を超える観客で席が埋まる盛り上がりを見せた。

八戸市はスピードスケートが古くから盛んで市民に親しまれており「氷都」を標榜(ひょうぼう)する。

 世界の舞台で戦った数々のトップ選手を輩出し、全日本選手権や国体など各年代の国内主要大会の開催実績が豊富だ。

 2003年には冬季アジア大会の会場にもなり、7000人もの観衆が集った光景は市民の間で語りぐさとなっている。

 その舞台となった屋外の「長根公園スピードリンク」は老朽化が進み、屋内リンクへの建て替えは20年以上前から地元の悲願だった。

 YSアリーナ八戸は総工費約126億円で、地上3階、地下1階。本場オランダでスピードスケートの聖地とされる「ティアルフ」などを参考にし、リンク間近に約3000の固定観客席が配されて臨場感がある。

 屋根からの輻射熱(ふくしゃねつ)を防ぐために天井にはアルミニウムの膜を張り、空調の効率を高めるなど近代的な設計。

 LED照明による明るい空間は既存の2リンクとは違った趣がある。

 JR本八戸駅から徒歩10分ほどという住宅街に隣接する好立地も特徴で、平昌冬季五輪女子500メートル金メダリストの小平奈緒(相沢病院)は「スケート文化が根付きうるリンクだ」と感激していた。

 一方で「箱モノ」に厳しい視線が向けられる中、必要性には疑問の目も向けられている。

 維持管理費は年間約2億円。リンクが稼働するのは7月から翌年3月で、それ以外の時期はコンサートや展示会の誘致を目指す計画だが、収益のめどは1億円程度にとどまり、残りは八戸市が負担する方向だという。

 スピードスケートの競技人口は減り続け、パイは小さい。

 長野市エムウエーブ、明治北海道十勝オーバルとのすみ分けは大きな課題となり、「国内に三つも屋内リンクはいるのか。こんなに立派な施設を造って時代に逆行していないか」との声が上がるのも当然だ。「負の遺産」としないためには相当な努力が必要だろう。

 低迷期を抜け、平昌五輪で小平や高木美帆(日体大助手)らが活躍した日本スピードスケート界。関係者は今がまたとない好機と自覚し、危機感をもって競技の将来像と向き合っている。

 日本スケート連盟の湯田淳スピード強化部長は「トップ選手が来て、練習や大会をやる。生のものを見てもらえることはものすごく刺激になる。そういう機会が増えていくのはプラスになる。地域も一緒に力をつけていくと思う」との展望を語る。

 この受け皿をどう生かしていくか。容易ではないが、自治体とともに知恵を出し合い、長く愛されるリンクに育ててほしい。

村形 勘樹(むらかた・かんじゅ)プロフィル

全国紙を経て2012年に共同通信に入社し、札幌支社から15年5月に運動部へ。現在は柔道やスピードスケート、日本オリンピック委員会(JOC)などを担当している。山形県出身。