インターネット通販やフリマアプリの人気拡大を背景に、段ボールの需要がますます高まっている。少しだけど、今すぐ欲しい――。そんな要望に応えて急成長しているのが、梱包(こんぽう)資材の製造と通販サイトを運営する金沢市のダンボールワンだ。15年前、当時20代前半で入社間もなかった現社長が社内の冷たい視線を感じながらほそぼそ始めた事業だ。10社に過ぎなかった取引先の数は現在、20万社近くに急拡大。東京商工リサーチによると、段ボール・梱包資材通販サイトで売り上げは国内首位を走る。躍進の鍵は。(共同通信=市川貴則)

 ▽売り上げ半年で7千円、周囲の冷たい視線

 ダンボールワン(当時の社名は能登紙器)は1978年に創業し、当初は段ボールを製造するだけの零細企業だった。2005年に入社したのが現在社長を務める辻俊宏さん(37)だ。会社にはパソコンすらなく、分厚いファイルを使って在庫を管理していた。

 ネット事業を任されてみたものの、「パソコンばかり見ていて注文は入るのか」と先輩社員の冷たい視線が刺さった。売り上げは半年間で1件7千円。周囲の期待はみるみる失望へと変わっていった。

 辻さんは短大在学中、能登地域の食品などを扱うネット通販会社を設立。そうした経験を買われての入社だった。当時を振り返り「プライドは打ち砕かれ、ストレスで胃潰瘍になった」と打ち明ける。社内に味方はおらず、孤独を感じていたという。

 「実績を出さないと誰にも理解されない」。周囲を見返そうと奮起し、営業活動のかたわら、他業界の成功事例を学びながら通販サイトや自動見積もりシステムを作り上げた。

 ▽ 奮起し構築したビジネスモデル

 通販サイトでは24時間見積もりが可能で、発注方法は「即日」「通常」「最安」の3種類を用意した。用途に応じて大きさや形状も選べるようにした。即日の場合、午後1時までに注文すれば、その日のうちに作って出荷される。商品は納期を優先するため、富山、石川両県にある三つの自社工場で製造する。

 さらに全国約100の工場とも提携した。空き時間に製造してもらうことで、最安の場合なら届くまでに1週間以上かかる一方、即日に比べて単価を半額程度に抑えられる場合もある。

 ニーズに応じた多様なサービス展開は、顧客に受けた。かつて10社だった取引先の数は現在、企業と個人を合わせて20万社近くに増えた。従業員も約5倍の約50人になった。

 段ボールは付加価値を与えにくい分、「ライバル企業とはサービス面で違いを出している」と強みを語る。注文が増えるにつれて自身への周囲の見方も変わったという。

 喜ぶのは辻さんの会社だけではない。提携工場の一つである石王丸紙業(富山県高岡市)の石王丸久之社長は「閑散期の穴埋めができ、生産が平準化した。売り上げも増えた」と手応えを感じている。

 辻さんらの事業を後押しするのが、通販サイトやフリマアプリの利用拡大を背景とした旺盛な段ボール需要だ。全国段ボール工業組合連合会によると、生産量は2010年から9年連続で増加した。

 ダンボールワンのサイトをよく利用するという洋菓子製造・販売のアニバーサリー(東京都)は、数十枚ずつの発注が多い。同社の小田長君枝さんは「オーダーメードなのに即日出荷は便利。在庫を持たなくて済む」と話す。

 ▽膨らむ夢

 辻さんは16年、同社社長に就任した。もともと35歳で辞めて独立するつもりだったが、辻さんなしでは会社が回らなくなっていた。会社が売りに出されていることを知り、オーナーに「独立するよりも会社を買う」と持ち掛け、17年に自社買収(MBO)した。「買い取ってからは思い切ったかじ取りで、スピーディーに物事を進められるようになった」と利点を語る。

 「この会社で一番失敗しているのは間違いなく僕。失敗の数なら誰にも負けない」と断言する辻さん。何事も挑戦しなければ、新しい商品やサービスは生まれないとの思いがある。挑戦して失敗した社員に対しては、社内で「おめでとう」という雰囲気づくりも心がけている。

 今後、発注の効率化と一層のコストダウンを目的に、提携工場の稼働状況を自動的に集約するシステムの構築を目指すという。「隙間時間のシェアリングは、後継者難や競争力低下に直面する業界の活性化につながる。梱包資材のプラットフォーマーを目指したい」。夢は膨らむ。