将棋の藤井聡太七段は23日、東京都渋谷区の将棋会館で指された第61期王位戦挑戦者決定戦で勝ち、挑戦権を得た。昨年、最年長で初タイトルを奪取した木村一基王位(47)と対戦することになる。8日に開幕した棋聖戦5番勝負では17歳10カ月20日の最年少挑戦を成し遂げており、二つ目のタイトル戦登場が決まった。数々の記録を次々と打ち立ててきた藤井七段のこれまでを振り返る。(構成、共同通信=榎並秀嗣)

  ▽最年少記録、次々と更新

 藤井七段は2002年7月19日に愛知県瀬戸市で生まれた。将棋を始めたのは5歳のとき。祖母がくれた将棋セットがきっかけだった。

 中学2年生だった16年10月に最年少の14歳2カ月でプロ入り。加藤一二三・九段の持つ14歳7カ月の記録を、62年ぶりに塗り替えた。 中学生時代にプロとなる「中学生棋士」は加藤九段、谷川浩司九段、羽生善治九段、渡辺明3冠(棋王、王将、棋聖)に続き史上5人目。

 プロ入りを決めた時のインタビューで今後の目標を問われた藤井七段は「まだまだ、実力が足りない。もっと力をつけてタイトルが狙える位置に行けるようにしたい」と話していた。

 デビュー後も快進撃を見せる。16年12月24日のプロデビュー戦では当時76歳で現役最年長だった加藤九段に勝利した。14歳5カ月の初勝利も史上最年少記録だ。日本将棋連盟によると、2人の年齢差62歳は記録の残る公式戦では最も年の離れた対局だったという。

 加藤九段との一戦後も勝ち続け、17年4月4日に11連勝でデビューからの連勝記録を更新した。6月26日にはデビューから無敗で最多の29連勝を達成。1987年に神谷広志八段が樹立した28連勝を30年ぶりに塗り替えた。28連勝は将棋界で「不滅」の大記録とされてきただけに、プロデビューからわずか半年余りの藤井七段が成し遂げた偉業は社会現象にもなった。

 7月2日に初黒星を喫し、連勝記録は「29」で止まった。しかし、その後も白星を積み重ねる。約4カ月後の11月21日には最年少の15歳4カ月で公式戦通算50勝目を挙げた。これまでの記録は羽生善治九段の16歳6カ月だった。

 ▽スピード昇段

 その後も順調に歩みを続けている。

 18年2月1日に五段へ昇段。同17日には朝日杯を制し、中学生初となる公式戦優勝を果たす。同時に中学生初の六段に昇段した。15歳6カ月での公式戦優勝と六段昇段はともに最年少記録だ。

 3月13日には17年度の記録全4部門(勝率、勝利数、対局数、連勝)で1位が確定し、史上最年少の「四冠王」となった。

 高校進学後の5月18日、史上最年少の15歳9カ月で七段に昇段した。1957年に加藤九段が記録した17歳3カ月を61年ぶりに塗り替える快挙だった。

 12月12日、16年10月にプロとなって最速(2年2カ月)、最年少(16歳4カ月)、最高勝率(8割4分7厘)で公式戦通算100勝を挙げた。 日本将棋連盟の記録では、中学生の時にプロ入りした棋士、永世称号獲得者の中でこれまでの最速、最年少は羽生善治九段の2年3カ月、17歳6カ月。最高勝率は中原誠16世名人の8割2分6厘だった。

 19年になると、タイトル(竜王戦、名人戦、叡王戦、王位戦、王座戦、棋王戦、王将戦、棋聖戦)挑戦が視野に入ってくる。

 5月28日には棋王戦予選8組の決勝で敗れ、渡辺棋王への挑戦者を決める本戦トーナメント進出を目前で逃した。

 竜王戦では、7月23日に指された決勝トーナメントの4回戦で負け、同棋戦の敗退が決まった

 予選を勝ち抜いて進んだ王将戦では11月19日の挑戦者決定リーグで敗北。タイトル初挑戦まであと一歩まで迫った。

 ▽夢の実現はなるか

 今月4日、棋聖戦の挑戦者決定戦で勝ち、最年少タイトル挑戦を決めた。17歳10カ月20日は、屋敷伸之九段が1989年12月に記録した17歳10カ月24日を30年ぶりに塗り替える記録だ。

 4日後の6月8日に棋聖戦5番勝負の第1局で渡辺棋聖と対戦。見事に勝利を挙げた。

 そして、23日の王位戦挑戦者決定戦で永瀬拓矢二冠(叡王、王座)を破り、挑戦権を得た。王位戦7番勝負の相手は昨年、史上最年長で初タイトルを手にし、「中年の星」と話題を呼んだ木村王位。「最年長」と「最年少」がぶつかる対戦が注目を集めるのは間違いない。

 最年少でのタイトル獲得は、屋敷九段が90年の棋聖戦で達成した18歳6カ月。並行して行われる王位戦、棋聖戦のいずれかでタイトル保持者に勝った場合は、奪取の記録も上回る。デビュー当時、「タイトルを目指したい」と語った藤井七段はまたも記録を更新する形で夢を実現させるのだろうか。