洗濯機に入れると、マグネシウムの働きで洗濯できるという「洗たくマグちゃん」。宮本製作所(茨城県)が2012年に販売を始めると、洗剤を使わなくても洗えて環境にやさしいと評判になり、人気商品となった。しかし、消費者庁は今年4月、「宮本製作所が表示しているほどの効果を示す根拠はなく、景品表示法(優良誤認)に違反する」として、再発防止命令を出した。

 消費者を保護するために消費者庁が出す行政処分は、これまでもメディア各社が報じているが、マグちゃんのニュースはインターネット上で大きな議論となった。投稿されたコメントを見ると「やっぱりおかしいと思っていた」「使っているが、確かに汚れは落ちる」など、マグちゃんに対する賛否が割れている。記事は発表をまとめた内容に過ぎず、これほどの反響を呼ぶとは予想していなかった。

 ここまで注目を集めるのは、マグちゃんの知名度が高い上、本当の効果はどうなのかを、多くの方が知りたいからだと思う。この点を追加取材してみた。(共同通信=斉藤友彦)

 ▽問題は宣伝文句

 まず、消費者庁が問題視したのは宮本製作所の宣伝内容だった。会社のサイトや商品の包装には「洗浄力は洗剤と同等」「除菌効果は99%以上」と書かれ、部屋干し臭を防ぐ点も含めて表示されていたため、同庁が表示の根拠を提出するよう求めたが、会社側は十分な根拠を示せなかったとして行政処分となった。

 処分対象は布製の袋に粒状のマグネシウムが入っている商品で、他に「ベビーマグちゃん」と「ランドリーマグちゃん」も含まれた。

 発表内容を要約すると、洗浄、除菌、消臭の3点について、宣伝した程度の根拠は不足していると言っているだけで、洗濯の効果が全くないとは言っていない。

 ▽実証実験の結果は

 そこで、実際に実験したNPO法人「食品と暮らしの安全基金」に、洗濯効果はどうだったのかを尋ねた。

 代表の小若順一さんによると、2014年、基金が集めたモニター30人が自分の洗濯機にベビーマグちゃんを入れ、洗剤を使わずにシャツや下着、タオルなどを洗濯したところ、衣類ごとに53〜67%の人が「よく落ちた」と回答した。

 小若さんは「私も実際に使ってその洗浄力を確認したほか、モニターには半年後もアンケートするなど、家庭用洗濯機で幾重にも効果を確認した」と話した。

 同じような結果は、宮本製作所のサイトにも表示されている。会社は行政処分後に表示を変え、第三者による実証実験の結果を掲載するようになった。

 それによると「食品汚れ5種類における洗浄率平均値」は(1)液体合成洗剤+マグちゃんで90%近く(2)液体合成洗剤だけで85%(3)マグちゃん+水で84%強―となっていた。

 さらに20人を対象に「洗濯後のニオイ残り」を、水洗濯とマグちゃん洗濯で比べたところ、過半数の人が「マグちゃんの方がニオイ残りが少ない」と判定した、と掲載している。

 食品と暮らしの安全基金や宮本製作所の表示を見る限り、一定の洗浄効果があるように思える。科学的な根拠はどうなのだろうか。専門家に聞いてみた。

 ▽効果ゼロではない

 吉野輝雄・元国際基督教大(ICU)教授(有機化学)は「マグネシウムを水に長時間つければ、ゆっくり反応して水酸化マグネシウムとなり、少しはアルカリ性になる。弱アルカリ性は水よりは汚れが落ちるから、洗浄能力がないとは言えない」と説明。一方で「ただ、その程度の効果に見合う金額なのかどうかは個人の判断。環境にいいという面は理解できないこともないが、それならせっけんでもいいのではないか」と語った。

 洗剤・環境科学研究所代表の長谷川治さんも「弱アルカリ性の効果はゼロではないが、目に見えるほどは期待できない」と答えた。さらに、マグちゃんと洗剤の併用の効果についても言及。「もともと、せっけんでも合成洗剤でも一定の濃度がないと洗浄効果は出ない。少し入れただけでは、かえってマイナスになる。だから、いつも洗剤を少ししか入れない人がマグちゃんを併用したら、汚れが落ちたように感じると思う」

 長谷川さんによると、これまでもセラミックボールや重曹など、さまざまな洗濯用品がブームになったが、「汚れが落ち、環境にもやさしいという面ではお湯が一番だと私は思う」と話した。