2022年北京冬季五輪で悲願の金メダルを取るために、フィギュアスケート女子では難易度が高い4回転ジャンプに挑み、鮮やかに成功させた。紀平梨花(トヨタ自動車)は20年12月の全日本選手権フリーで、女子選手では13年の安藤美姫以来となる2人目の4回転サルコーを決め、2連覇を達成した。スイスでのハードな筋肉トレーニングなど、大技成功に向けた取り組みを聞いた。(共同=藤原慎也) 

 ―優勝した全日本選手権を振り返ってください。

  振り付けとかステップとかを、もっともっと練習してきていたのに、それがショートプログラム(SP)でも、フリーでも出せなかったのが、すごく悔しい。振付師の方に申し訳ないなと思う。次はステップ、振り付けの部分でやってきた練習通りの演技をしたい。

 ―成功した4回転サルコーの自己評価は。出来栄えで3点以上の加点を引き出しました。

  高さも余裕もあって自分の中でも良かったと思えるジャンプだった。昨季は試合で挑んだことも、直前まで悩んで回避したこともあったが、今までにないような自信や感覚があった。

 ―公式練習ではミスもありました。成功するかどうかは、五分五分だったのでは。

 決められないことはないな、という感じ。私はどのジャンプでも、練習で跳べなくても試合の一瞬で合わせるタイプ。難しいジャンプに挑んでいるので、練習でノーミスを続けていても、試合はノーミスというタイプではない。試合での一瞬で、どう修正すればいけるか、というのを考えて集中してやった。

 〈全日本フリーの演技冒頭。初披露となる「Baby,God Bless You」の柔らかなピアノの旋律に乗せて勢いよく踏み切ると、体の軸はぶれることなく、着氷も美しく決めた。新型コロナウイルスの感染再拡大で出場を予定していた11月のグランプリ(GP)シリーズのフランス杯は中止になり、実戦で経験を積む機会は失った。それでも紀平は前年女王のプライドを胸に心技体を整えて本番に臨んだ。スケート靴に取り付けるエッジ(刃)の位置も数ミリ単位で調整するほどのこだわりが大技成功に結びついた〉

  ―成功を確信した瞬間の心境を聞かせてください。

  浮き上がった瞬間にいけるな、と分かった。踏み切りが一番大事。踏み切るタイミングがちょっとでもずれたら跳べない。そのために助走のコースもきっちり決まっている。全日本では成功のイメージに合わせることができた。

  ―全日本選手権での演技後は、「4回転サルコーを決めないと、次に進めない」と言っていました。

  4回転サルコーを跳んだ後にすぐトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)を跳ぶ構成。サルコーで転倒とかあると体力的にもきつく、アクセルも絶対にミスすると思っていた。決めるしか次に跳べる状況をつくることができない難しい構成なので、アクセルを跳ぶにはサルコーを決めるしかないという感覚でいた。

 〈2020年7月からは男子の元世界王者ステファン・ランビエル氏から本格的に指導を受ける。同氏の母国スイスのシャンペリーにあるリンクで全日本前までの約4カ月間、これまで以上に体をいじめ抜いた。ともに練習する平昌冬季五輪銀メダリストの宇野昌磨(トヨタ自動車)ら男子選手と同じ筋力トレーニングのメニューをこなし、4回転ジャンパーとしての礎を築いた〉

 ―スイスでの練習は、それまでと違いましたか。

  氷上練習も増えたが、陸上で充実したトレーニングを積むことができた。これまでは週2、3回、体幹トレーニングをメインにやっていたが、スイスでは多いときには週5回、重りを持ってのスクワットや動きを取り入れたサーキットトレーニングで下半身を鍛えた。

  筋肉痛だけでなく、軽いぎっくり腰や股関節、脚を何度も痛めた。スケートに影響が出て、結構ピンチだった。ただ、4回転跳ぶためには必要なことだった。体幹を鍛えるだけでは何か足りないなと感じていた時期だったので、このトレーニングがぴったりはまった。

 〈前向き姿勢で踏み切る代名詞のトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)とは異なり、サルコーは後ろ向きの助走から右足を振り上げ、左足内側のエッジで力強く踏み切る。跳躍の高さを生み出す筋肉も違うという。これまでほとんど取り入れてこなかった下半身強化で大腿部に筋肉が付き、同じ後ろ向きで踏み切る新たな武器、4回転トーループ習得への扉も開いた〉

 ―今後は、4回転トーループに挑戦するのですね。

  練習を始めていきたい。2020年はスイスでランビエル・コーチに3回転トーループから教わってきた。単発の3回転(トーループ)は試合で跳んでいないのであまり練習をしてこなかった。昔から回りすぎてしまったり、力を入れ過ぎてしまったりしていて、苦手だった。一から教わり、型にはまるようなジャンプになってきた。3回転の感覚が良くなれば4回転もできると思っている。

  ―3月には北京五輪出場枠が懸かるストックホルムでの世界選手権があります。北京五輪で強豪ロシア勢と戦う覚悟を聞かせてください。

  今はやるべきことをやれば結果はついてくる。相手と比べるのではなく、自分ができる限界のぎりぎりのラインを攻めるというのを意識でやっている。自分の計画通りにできれば勝負できる。(おわり)