米・ニューヨーク市では、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)をきっかけに、新たな常識・状況と訳される「ニューノーマル」が次々と生まれている。6月末からニューヨーク州が許可した、屋外の空いてるスペースでサービスを提供する「オープン・レストラン」もニューノーマルの一つ。通常は屋内営業している飲食店にビジネスを再開する場所を、客にとっては安全を確保しながら外食を楽しめる場所を提供することを目的に始まった。加えて、7月に入ってからは新たな施策も実施された。ニューヨーク市内の一部道路を週末だけ車両通行止めにして、客に開放するというものだ。(ニューヨーク在住ジャーナリスト、共同通信特約=安部かすみ)

 ▽約9千軒に許可

 ニューヨーク市でレストランやバーのオープン・レストランが許可されたのは6月22日。空いている屋外スペースに日よけや雨よけ用のテントやパラソルを設置し、これまで店内で使っていたテーブルや椅子を置いている。

 屋外スペースといっても郊外のような広いものではなく、バックヤード(裏庭)や店前のちょっとしたスペースだ。とはいえ、すべての店にこのようなスペースがあるわけではない。そこで、ニューヨーク州は十分なスペースが確保できない場合も、店前の歩道や車道の一部を客席スペースとして使うことを許可することにしたのだ。

 もちろん条件はある。顧客の安全を守ることだ。客同士のソーシャルディスタンスを十分に取るだけでなく、車両が通行できるスペースをきちんと確保しなければならない。このような安全上の条件を守ることができて初めて「申請」が認められる。米有力紙「ニューヨーク・タイムズ」の報道では、ニューヨーク市内には約2万5000軒のレストランやバーがある。米飲食系情報ウェブサイトの「イーター・ニューヨーク」によると、オープン・レストランが許されたのはこのうちのおよそ9千軒という。

 飲食店の屋外スペースが客席として使えるようになって以来、天気の良い日は多くの家族連れやカップルなどが飲食を楽しむようになった。同市の中心地・マンハッタンのレストランで働く男性は「私たちニューヨーカーは長らく外食ができる日を待ち望んでいた。外出制限中に働かず、家でじっとしているのはつらかった」と語った。別のカフェに犬を連れて来ていた女性は「外の空気に当たると気分爽快で、食が進みますね」と、笑顔でサンドイッチを頰張った。

 ▽市民には好評

 同市ではオープン・レストランに加え、「オープン・ストリート」という新たな施策が7月4日より実施されている。飲食店がさらに広いスペースを確保できるように、週末に限って通行止めとした車道の一部を開放して営業を許可するというものだ。

 封鎖された道路は、歩行者や自転車に乗る人たちも利用できる。

 通行止めとなった道路はどこも人々であふれており、臨時で置かれたテーブルで食事をしたり、散歩やサイクリングを楽しむ姿が見られる。

 オープン・ストリートの対象になるためにも申請が必要だ。飲食店単独、もしくは1ブロック(通りと通りの間の区画)につき3店舗以上が一緒に応募できる。市民には好評のようで、申請する飲食店は日に日に増えているという。8月中旬の時点で、市内76の道路で許可されていることが報告された。

 ▽冬季に向け課題も

 冬が長く厳しいニューヨークは12月を過ぎるとグッと気温が下がり、年が明けた1月以降は氷点下になる日も珍しくない。そして厳しい寒さは例年4月ごろまで続く。そのような時期に屋外で営業するのは現実的ではない。よって夏季に好評だったこの「オープン・ストリート」の実施は、10月31日までの予定となっている。

 感染拡大は抑えられているものの、ニューヨーク市内では今も毎日600人以上の感染者が出続けている。それゆえ、飲食店の店内スペースの再開計画は宙に浮いたままだ。

 インフルエンザ同様、新型コロナウイルスの感染が秋冬に再び拡大すると予測する専門家は多い。これから到来するシーズンへ向け、飲食店ビジネス関係者たちの不安はぬぐいきれていない。