中国の孔鉉佑駐日大使(61)が共同通信と単独会見した。米中対立が続き、国際社会で中国包囲網構築も進む中、孔氏は来年が日中国交正常化50年の「極めて重要な節目の年」と指摘し「これから50年、日本は中国の協力のパートナーになってほしい」と、日中の協力の必要性を訴えた。(共同通信=芹田晋一郎)

 ▽真の信頼関係構築を

 ―日中はどのような関係を築いていくべきか。

 2国間関係の次なる50年を展望し、中日関係の再出発に向かうことが大事だ。50年間、中国と日本との関係が全く新しい形で生まれ変わったが、日本と米国の関係に何ら影響を与えていない。日本の長期的国益、国家の将来を考える上で、完全にバランスの取れた形で両立させ、全ての大国と共存できる政治的知恵がある。日本が中国を脅威国として位置付けることが、日本の将来のためになるだろうか。50年間を振り返ると戦略的信頼という大きな成果を上げた。今後、真に互いを信頼する関係を構築するためにどうすればいいか真剣に考える必要がある。

 ―経済関係はどのように発展させる考えか。

 政治と経済は完全に切り離した形で存在するわけではない。これから相互の利益をさらに大きくしていくために、ふさわしい政治環境、政治的関係を維持強化していくことも極めて重要だ。世界第2、第3の経済大国である中国と日本は地域の繁栄と発展の促進、多国間主義と自由貿易の擁護において広範な利益を共有している。中国、日本、韓国3カ国の自由貿易協定(FTA)交渉プロセスを加速させ、地域のさまざまな経済的統合を促進し、東アジアの経済一体化を中国と日本が先導して世界経済の回復につなげていく必要がある。環太平洋連携協定(TPP)加入についても中国政府としては前向きに検討しており、日本を含むメンバー国とこれから協議をしていく用意があると既に各国に伝えた。

 ―首脳間交流や五輪を通じた交流への期待は。

 中国指導者(習近平国家主席)訪日には適切な時期、環境、雰囲気が必要であり、そのために双方が引き続き努力していくべきだ。東京五輪は日本側が安全で、安心できるような大会を成功裏に開催することを期待している。中国側としてできる限りの支援、支持を続けていく。選手団派遣に変更はない。北京冬季五輪・パラリンピックの準備は着実に進んでおり、大会を予定通り成功裏に開催する自信がある。北京五輪を巡り(ウイグル問題で)雑音があることに留意している。スポーツの政治化は五輪憲章の精神に反し、アスリートの利益と五輪の国際的発展を損ない、当然国際社会に支持されない。

 ▽大国間対立に巻き込まれるな

 ―4月の日米首脳会談の共同声明では「台湾」が明記された。

 中国の内政や核心的利益に関わる問題において、日本政府の一部の言動に困惑と不満を覚える。台湾問題は中国の主権と領土保全に絡み、核心的利益に関わる重大な問題で、外部からのいかなる干渉も容認しない。中日共同声明など四つの政治文書には、主権および領土保全の相互尊重、相互不可侵、内政に対する相互不干渉、平等互恵、平和共存―の原則がはっきりと規定されている。日本側のやり方は明らかにこうした基本原則あるいは規定に反する。

 日米同盟は、二国間の特別な取り決めとして第三国を対象にしておらず、第三国の利益を害してはならない。日本は米国との同盟関係にある一方、中国との間にも平和友好条約がある。日本としても日米同盟を維持強化しながら中日平和友好条約の履行義務があることを忘れてはならない。

 日本が自ら大国間の対立に巻き込まれることは時代遅れで陳腐な考えだ。平和発展を求め、協力を促進しようという地域諸国の期待にそぐわず、日本自身の国益にもならない。日本側がしかるべき政治的知恵と戦略的自主性を発揮して、さまざまな対外関係をバランスよく処理して、実際の行動で中日関係と地域の平和、安定の大局を守るよう強く期待したい。

 ―中国の軍拡に対して、懸念が出ている。

 中国が直面する安全環境は非常に厳しく、国防力増強はこの環境に対応するための措置だ。もしこれに対して日本国内の一部がネガティブな認識を持つのであれば仕方がない。そういう議論があるからといって、われわれが自分の選択を諦めるシナリオは全くない。

 盛んに中国包囲網と言われるが、根本的に成り立たず気にしていない。グローバル化や経済一体化が進む流れの中で、ゼロサム的な冷戦思考は100パーセント時代遅れだ。日米豪印4カ国の協力枠組み(クアッド)が本当にこの地域の協力・発展・平和の維持が目的であれば何ら文句はない。特定の国を対象にした、大国同士の対立を引き起こすような考えであれば、断固反対だ。

 ▽尖閣は平和的手段で解決を

 ―沖縄県・尖閣諸島周辺での海警局の活動活発化が日中対立の要因にもなっている。

 中国は一貫した立場で常態巡視を行っている。強度や方法に変化はなく、常に抑制的な態度を示している。極めて複雑で敏感な問題で短期間に解決できるものではない。釣魚島は中国に属し、われわれには確たる主権がある。同時に日本の実効支配は認めておらず、不法占拠であると繰り返し表明した。ただ実力で現状を変えることはわれわれの政策ではない。あくまでも協議を通じて平和的手段で問題解決を目指すという基本的考えにはいささかも変化はない。

 海警法は中国の通常の立法活動で、海洋における法の支配を強化するための具体的措置だ。内容は、国際法と一般的な国際慣行に完全に合致している。この法律ができたからといって海洋政策を変えることはなく、引き続き対話と協議を通じて平和的手段により海洋紛争を適切に処理する。

 ―東京電力福島第1原発の処理水の海洋放出になぜ強く反発するのか。

 汚染水処理問題は極めて重要だ。残念ながら日本政府は中国政府に決定を通知しただけで、事前にしかるべき協議をしていない。中国政府だけではなく、中国の国民のレベルで非常に関心が高まっており、政府のコメントは国民の疑念と心配を代弁した。

 ―新疆ウイグル自治区のウイグル族収容施設や、香港国家安全維持法(国安法)施行を巡り、批判が高まっている。

 欧米には予防的な対テロ・脱過激化施設が多くあり、(こうした施設は)われわれの発明ではない。日本は欧米には一言も文句を言っていないが、同じことを中国でやるとなぜ日本から懸念が出るのか理解しがたい。

 香港は国安法施行後、安定に向かって着実に回復しつつある。数年たてば、こうした措置のおかげで安定と繁栄が再び実現されたと言える時が必ず到来する。

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 孔鉉佑(こう・げんゆう)氏 59年7月生まれ。79〜83年、上海外国語学院(現上海外国語大)で日本語専攻。在日中国大使館での勤務などを経て06年、駐日公使。11年駐ベトナム大使。外務省アジア局長や外務次官補を歴任し17年から外務次官を務め、朝鮮半島問題特別代表を兼務。19年5月に駐日大使として着任。黒竜江省出身、61歳。