バイデン米政権の対アジア外交で中心的役割を担うダニエル・クリテンブリンク国務次官補が11月上旬の来日中、東京都内で共同通信との単独インタビューに応じ、台湾周辺や東シナ海、南シナ海で威圧的に振る舞う中国への強い懸念を示した。日本政府の防衛費について「米国は増額を歓迎すると明確に言わせてほしい」と強調。中国を抑止し台湾有事を回避するため、安全保障分野で岸田政権の役割拡大への期待感を語った。(共同通信=武井徹)

 ▽米単独の限界認識 

 米国はアフガニスタンでの米軍駐留に区切りを付けて「対中シフト」を進めている。台湾有事への懸念も強まる中、クリテンブリンク氏の発言は米国単独での持続的な中国抑止には限界があるというバイデン政権の現状認識を踏まえたものだ。強固な同盟国・日本との一層の連携強化を求める米側の姿勢が改めて鮮明になった。

 米中が競り合う分野は安全保障から経済、通商、人権まで幅広い。特に注目されるのは中国が統一を目指す台湾だ。米国は関与を強め、議員団の派遣や武器売却、米軍による台湾軍の訓練実施などの動きを見せている。中国は強く反発し、台湾の防空識別圏に多数の戦闘機を飛ばすなど軍事圧力を強めている。

 クリテンブリンク氏は「ルールに基づく国際秩序を脅かすような中国のさまざまな行動を懸念している」とし、台湾への軍事的圧力や、東シナ海、南シナ海での一方的な現状変更の試みを問題視した。国際秩序を維持するために日本が「より積極的」に行動することが、地域全体のためになると語った。

 ▽貢献拡大を

 日本の防衛費は国内総生産(GDP)比1%が目安とされてきた。自民党は10月、衆院選公約と同時に発表した政策集で「GDP比2%以上も念頭に増額を目指す」と明記。こうした動きを好意的に捉え、増額が日本だけでなく米国にとっても有益だとみる米政府関係者は少なくない。

 日本の防衛費についてクリテンブリンク氏は「日本政府が決めることだ」として主権を尊重するとした上で、増額されれば「率直に言って同盟強化だけでなく、より安全で繁栄したアジアにつながる」と指摘した。

 日米が年内合意を目指す在日米軍駐留経費負担(思いやり予算)に関しても「日米双方が安全保障に投資することがわれわれの利益だ」とし、日本側の貢献拡大に期待感をにじませた。

 ▽競争と協力

 台湾情勢については「現状維持が地域の利益にかなう」と強調。バイデン政権の立場について「米中間の『三つの共同コミュニケ』などに基づく米国の長年の『一つの中国』政策に変更はない。われわれの意図は台湾関係法に基づき、台湾が自衛のために必要とする支援への揺るぎない約束を果たすことだ」と述べた。  

 台頭する中国と向き合う上で「激しい競争」をしながら「強力な外交」を展開することで、衝突回避を狙う考えを表明。「気候変動や感染症、薬物問題の対策、核不拡散では中国と協力できる」とした一方、「新疆ウイグル自治区や香港、チベット自治区での人権問題など米国の価値観に関わる分野」では譲らない構えを見せた。

 ▽知日派

 関西外国語大に留学した経験を持ち、米国の国家安全保障会議(NSC)アジア上級部長や駐ベトナム大使などの要職を経て9月24日に東アジア・太平洋担当の国務次官補に就いたクリテンブリンク氏は、就任後最初の外遊先に日本を選んだ。

 「われわれが日本を重視しているということを、疑いの余地がないほど明確に示すためだ」と説明し「米国にとって、日本ほど関係が強固な同盟国はない」と言い切った。

 国務次官補としての最優先課題は、インド太平洋地域の同盟・友好国とのつながりの「再活性化」と話す。歴史問題や竹島問題が影を落とす日韓関係については「米国にとって北東アジアの二つの同盟国である日本と韓国の生産的で建設的な関係」が望ましいとし、「日米韓3カ国が協力することでわれわれはより強くなれる」と指摘。核・ミサイル開発を続ける北朝鮮への対応など共通の課題に対処する上で、日韓連帯の必要性を訴えた。

 ▽岸田首相を評価

 

 バイデン政権は、安倍・菅両政権と同様に日米同盟の深化を目指す岸田政権が長期安定政権になることを願い、11月10日の第2次岸田内閣発足を歓迎している。

 「岸田文雄首相によるリーダーシップの下での日本に大きな期待がある」。クリテンブリンク氏はこう語り、「安全保障や経済での共通利益を深めたい」と強調した。ほかの同盟・友好国とも協力して中国の威圧的な行動に立ち向かい、「ルールに基づく国際秩序」を維持して「インド太平洋地域の平和と安定、繁栄を支える」と表情を引き締めた。