3月15日、東京・丸の内で開催された日本最大規模のスタートアップイベント「UPDATE EARTH(アップデートアース)」が行われた。

【映像】子どものうつぶせ寝をAIで防ぐ?

 地球規模で社会にインパクトをもたらす起業家の発掘や支援が目的で、賞金1000万円をかけたビジネスコンペでは、「空気から水を作る技術」の普及を目指すスタートアップがグランプリに選ばれた。

 優秀賞には、赤ちゃんの泣き声をAIで分析して「おなかすいた」などの気持ちを読み解くサービスが選ばれるなど、AIを活用した企業にも注目が集まった。

うつぶせ寝や体動の有無をセンサーで感知

「保育AI」のサービスを展開する「ユニファ株式会社」は、保育士の仕事をAIの力で支援している。子どもたちの安全を守るのが保育士の仕事。子どもたちのお昼寝中も保育士の気が休まることはなく、「乳幼児突然死症候群」を防ぐために、5分に1回仰向けで寝ているか、呼吸しているか、など確認している。

 こうした保育士の負担を軽減させるために開発されたのがユニファの「ルクミー午睡(ごすい)チェック」だ。うつぶせ寝や体動の有無をセンサーで感知するシステムなどを提供している。
 

子どもが大好きで保育士になったのに

 ユニファの土岐泰之代表は「ルクミー午睡チェックの体動センサーで肌着のおへそくらいのところにつける。うつぶせになると表示が『うつぶせ寝』になる」と説明。

 実際にうつぶせ寝になると「体動アラート」と表示され、アラームが鳴った。

「先生の目と医療機器のダブルチェックで子どもの見守りをしていく。医療機器のIoTと絡めながら」(土岐代表、以下同)

 ユニファ創業者の土岐代表は、保育や介護といった「ケア労働」が抱える課題に、賃金などの経済的な問題とともに「精神的な課題」が大きいと指摘している。

「子どもが大好きで保育士になった。しかし、なった瞬間に『なんでこんな手書き書類が多いんだろう』『なんでこんなに組織がギスギスしているんだろう』と感じる。自分が思い描いていた『なんでこの業務じゃないんだろう』。この仕事のやりがいの方が実際の期待値とのギャップは金銭的なものよりも精神的なものが大きい」

「子どものことに向き合おうというのはみんなめちゃくちゃ頑張れるが、それ以外の園長との関係、同僚との関係、保護者との関係がどうとか、ここが子どもにみんなで向くということができていないと思う。だからこそ、写真や動画をたくさん撮ってみんなで子どもの状態を可視化して成長を見つめ合うことで自ずと同じベクトルになっていく。保育の正解はないし保護者の方もいろいろやってほしいことがある。みんな子どものためにやっているそのベクトルがちょっとずれているのでそれを我々のテクノロジーを使ってしっかり目線を合わせましょう。その結果AIで子どもの成長が可視化されて、より保育士の専門性を発揮して仕事のやりがいを実感できる」

 土岐代表は、ケア労働におけるAIの活用は保育分野に留まらないと考えている。

「子どもが中学1年生とかになると、家族4人のLINEも頻繁になる。息子が塾に行くが何時に帰るかの連絡をAIエージェントが定期的にやってくれればいい」

 妊娠健康データや学童、塾などの情報も一元化され、子どもが産まれる前から育つまで、AIアシスタントが家庭をサポートすることが近い将来当たり前になると考えている。

「たぶん、ドラえもんだ。子どもたちのデジタルフレンドができると思う。それをどう使いこなすかという時代が必ず来る。それを家族の幸せのために、使命感とテクノロジーでやっていきたい」

学生はどのような“対策”をするべき?

 ユニファの保育における取り組みについて、AI研究者の今井翔太氏は「研究者の知らないところでこういう活用が進んでいるんだ、と温かい気持ちになる。やはりAIの進化がすごく早く、人間の仕事を奪うんじゃないかという不安を持っている人がいる。研究者には当たりが強く、“怪文書みたいなもの”が届いたりする。今回の事例のように、普通に感謝される場所でAIが役に立っているのは非常に嬉しい」と称賛した。

 2024年内閣府「AIで変わる労働市場」によるとAIによる「代替性」が高い職業として、コールセンター、オペレーター、ネイリスト、航空管制官などがあり、「補完性」がある仕事として医師、保育士、教員、聖職者などがあるという。

 これに対し今井氏は「僕も同じことを言っている。代替性の高い職業は割と『やり直しがきく』仕事だ。AIがやらかしても『AIがやったので私は悪くない』というのは通用しないので、人間が全部責任を負う。だからもし失敗したらやり直しがきかないものや裁判にすぐなってしまうようなものは(AIには)難しい。責任を取るのが人間の最後の仕事だと言われている。『人類全員管理者』だ」と説明した。

 さらに、「AIはホワイトカラーの仕事を奪う」と言われている。保育や介護などのケア労働の方が貴重な仕事になり、賃金が逆転するような現象も起きるのだろうか?

 今井氏はこれに「日本ではないが海外で弁護士よりもエッセンシャルワーカーとケアワーカーの初任給の方が高いということが実際に起きていると聞く。人はホワイトカラーに集中するが『その仕事はAIでできる』となると、“逆転現象”は少なくとも中短期的に起きると思う。長期的に見ると『AIがなんでも』という可能性もなくはないが、少なくとも現時点ではホワイトカラーの仕事はめちゃくちゃAIがうまく、エッセンシャルワーカー、ケアワーカーの仕事はけっこう下手という状況なので、賃金逆転みたいなことは起きる」と説明した。

 今の学生はどのような“対策”をするべきか?

「2つある。1つは専門知識。今までの義務教育と同じように、専門知識の基盤となる知識を身につける。『AIを使ったらなんでもできるから別に何も学ばなくていい』と言う人がいるが、スマホを持っている小学生は世界の知識全てを持ってるエキスパートかというと全然そんなことはない。どういうことを検索すればいいか知らないとうまく使いこなせないものだ。AIも同じで、そもそもちゃんと知識があって、今仕事をしている分野で何が重要なのか、何をAIに聞けばいいか、人間の方が知っておかないといけない」

「2つ目はAIの使い方をとにかく今のうちに極めておくことだ。なぜならこれからいろんな業務がAIを前提にしたものになる。そういう時期は元々業界にいた人より最初から新しい技術を使って突然やってきた人の方が強いことがけっこうある。例えば、Amazon創業者のジェフ・ベゾスは別に小売にも書籍販売にも詳しくなかったがインターネットという武器を使って乗り込んできて天下を取った。これと同じで、AIというものを使って新しい業務の仕方を開発してどこかの業界に行けば、もしかしたら既存の超エキスパートよりも圧倒的なパフォーマンスを発揮できるかもしれない。チャンスが転がってるのはまさに今だと思う。そんなことを意識して学生には頑張ってほしい」
(『ABEMAヒルズ』より)