今月、東京・新宿区の早稲田大学では、新型コロナの影響で入学式が中止になってしまった“去年の新入生”のために改めて式が執り行なわれ、対面での講義も始まった。

新二年生の一人、ミクさん(仮名)が「教室でみんなと顔を合わせて、ようやく授業が始まった。やっと大学生になれたって感じがする」と話す通り、これまでの授業は孤独にオンライン、飲み会は自粛。飲み会は自粛。三重県の実家から上京することも叶わず、他の学生と交流して友達を作ることもままならない1年だった。

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■「親友がいることで縛られるという感覚がある」

全国大学生協連の調査でも、コロナ禍で「友達ができない」と悩んだ1年生は3割以上に上っている。不安に駆られたミクさんは、InstagramやTwitterのプロフィール欄に“春から早稲田”と書いてあるアカウントを手あたり次第にフォロー、50人あまりにDMを送って友達を作ろうした。

結果、10人もの“友達”をゲットできたものの、オンライン上だけの繋がりでは「信頼できる親しい友」(広辞苑)、“親友”をゲットすることはできなかった。ところがミクさんは「大学生になったら、親友っていらないのかなって思う」と冷静だ。「親友だと、ずっと一緒にいるって感じで、本当に自分がしたいことが制限されるというか、親友がいることで縛られるという感覚があるかな。それでも、楽しい」。

「濃いつながりは裏切られた時のショックがでかい」「深入りするとトラブルになりそう」「困ったときは親に相談すればいい」。そんな理由から、ミクさんのように親友が「できない」のではなく「欲しくない」「作ろうとしていない」という学生は珍しくないようだ。中には、「“コスパ”を求めちゃう。時間は限られてるし、人の3倍くらい生きたいみたいな気持ちがあるので、できるだけ無駄なことはせずにいたい」という意見も聞こえてきた。
 

■「バイトでも、サークルでも、何かあったら辞めればいいし」

都内の大学に通うアイさん(4年、仮名)は、学生団体の代表を務めるなど周囲からの信頼も厚い学生だ。しかし、あくまで重視するのは“コスパ”。話し相手は家族やバイト仲間も含め、テーマごとに相手を分けており、“なんでも話せる一人”は作っていないという。

「バイトの話しかしてこなかった相手に学校の課題の話をするにも、そもそも何を勉強しているかとかを話さないといけない。時間がかかって、コスパ悪い。家族は何でもわかってくれるので家族に話せばいいし、食で感動したらこの子、旅行で感動したらこの子と、学校で悩んだらこの子と、“シェア”する相手を分けている。逆にいろんな人と話せるので、誰か一人とわかりあえなくても楽しい。今は悩むこともあんまりないし、バイトでも、サークルでも、何かあったら辞めればいいし、みたいな。みんな結構そういうスタンスで生きてると思う」。

高校時代は寮生活を送っていたというアイさん。「寮だと毎日毎日ずっと一緒なので、すごく理解してくれてるなと思っていた人もいたが、今はもう全然会わないし、たまに連絡を取っても、薄い、他愛もない話をするだけ。果たして今でも親友なのかというと、どうなんだろうという気持ちがある。でも、私は嫌われたくないという気持ちが強いので、コミュニティごとにキャラを分けたり本音を隠したりするのも、そのせいだと思う。そういう自分の“ヤバいところ”を少しずつでも見せられる相手を作りたいなという気持ちはあるので、今いる友達の中から、これから親友になっていく人が出てくるかもしれないとは思う」。
 

■「コストパフォーマンスのようなものを超えたところにある」

早稲田大学文学学術院の石田光規教授(社会学)は、“友達”と“親友”の違いについて、「なかなか定義するのは難しいが、“お金があるから”“地位があるから”など、欲求に基づいている感じがあると、純粋さがなくなると思う。そうでないのが友人で、その強度が強いものが親友だという捉え方がされる」と話す。

「そこには時代的な変化もあって、1980年代までは会社などの中で“付き合わなければいけない関係”があり、そういう人間関係の中で親友、友人というものがとても重視されていた。それが主体的に、感情的にいいと思うから結びつくということが大事になっていくが、2000年代に入ると、そういう相手がいないと、本当に天涯孤独になってしまうのではないかという見方が顕著になってきた。

そもそも親友というのは、長いこと付き合ってきた友人が結果としてそうだった、と解釈されることも多い。だから若い人の場合、初めから親友を作ろう作ろうとしても、なかなかできないということにもなる。逆に、かつてのように同じ地域の中で交流を続け、60歳、70歳になって親友だったなと振り返るような人間関係を持つのは難しくなっているし、時間が足りない大人になってから作ろうとすることも難しくなっている。

一方で、若い人も難しい。相手を傷つけるようなことは言わないようにしよう、人それぞれなんだから別にいいんじゃない、ということでお互いに割り切り、深く入り込まずに距離感を保つという人間関係が、今の大学生などにはよく見られる。加えて、役に立つ限りは接してもいいが、そうでない場合は切ってもいいんじゃないか、という感覚も強い。それが“コスパ”という言葉に象徴的に表れていると思う。

確かに、友人、親友というものが本当に必要なのかと言われれば、それは難しい。ただ、必要か否か、あるいはメリット/デメリット、コストパフォーマンスのような考え方を人間関係に持ち込んでしまえば、やはり親友というものからは遠ざかってしまうのではないかと思うし、お互いに気を使って、自分のマイナスな部分はなるべく相手に見せないようにすると、空気に合わせた自分を提示する、という感じになってしまうと、やはり難しい。友人、親友というのは、そういうものを超えたところにあるような気がする」。
 

■「自分が傷つきたくないという気持ちの方が強いんじゃないか」

テレビ朝日の平石直之アナウンサーは「つながりがある親友はいるが、会うことはなかなか無い。やっぱり社会人になってしまうと仕事か家かになりがちだし、一人の時間を作るのも大切なので。ただ、自分のことを客観的に見て、色々言ってくれる存在だから大切だ」とコメント。

一方、“友達が少ない、親友はいない”と公言するフリーアナウンサーの柴田阿弥は「“そういう風に言うのがかっこいいと思ってるんだろ”とか言われるかもしれないからあまり言いたくないが、きょうだいもいるし、それで良いやと思っているのは本当だ。ただ、自分の結婚式の時に友人代表としてスピーチしてくれる人がいないことに気がついた(笑)。でも、私は“今これを言葉したら終わるな”、っていうようなことを考えていたりするくらい、ベースとして性格があまり良くない。だから絶対、私のことを誰も好きにならない(笑)」と自嘲気味に話す。

すると平石アナは「それを共有するのが親友」、EXITのりんたろー。は「“そういうことを言っちゃう阿弥、最高”って言ってくれる人が必ずいるはず」、兼近大樹も「自分のことを分かっているということは、認めてくれる人も見つかる。自分のことを分かっていない人が、友達ができない人」とアドバイス。柴田は「それなら、アイさんとなら親友になれるかもしれない」と笑った。

ワンキャリアの北野唯我氏は「若い人と喋っていて思うのは、相手を傷つけたくないというよりも、自分が傷つきたくないという気持ちの方が強いんじゃないかということ。アイさんの気持ちがわかるのは、本当のことを言ってくれた方が喜ぶ人と、嘘を言ってくれた方が喜ぶ人がいるから。そして親友がいないと柴田さんが言うのは、本当のことを言うヤツは嫌われて、ちょっと嘘も混じった、当たり障りないことを言う人の方が好かれるコミュニティの中で、本当のこと、思ったことを言うから。そういう人からたちすると、確かに自分だけの世界で生きた方がいいと思えるのかもしれない。でも、世界が広がって、コミュニティが増えていけば、必ず親友だと思える人に出会えるタイミングが来ると思う」と話していた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)
 

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