中国国内で急成長を遂げる中国テックについて、中国でスタートアップを起業した吉川真人さんに最新情報を聞いた。

【映像】衝撃! ロボットが前方宙返りした瞬間

「まず一つが『Manus』(マヌス)というAIエージェントサービス。数日前に中国で突然発表されて、今も中国でだいぶ話題になっている」(吉川さん、以下同)

 今月6日に発表され、中国国内を騒然とさせたAIエージェントサービス「Manus」。

 ホームページで公開されているPR動画を見ると、AIが一瞬で大量のタスクを処理している様子が映し出されている。開発した企業はこの「Manus」について、仕事や生活といった様々な用途で使用できるとしている。

「『インビテーションコード(招待コード)』がないと実際に使うことができないので、中国版のメルカリでインビテーションコードが100万円ぐらい売られている。もしかすると、(中国発の大規模言語モデル)『DeepSeek』の次にくる、AIの新しい会社という認識になるかな」

 またここ最近、注目を集めているロボット分野の話題も。

「『エンジンAI』という会社が、最近だと世界初の『前方宙返り』するロボットというので話題になった」

 2023年に中国・深センで創業したエンジンAIは、世界で初めて前方宙返りを成功させたロボットを開発。現在は実用化に向け、警察によるテストなどが行われている。

「話題になったタイミングでそこに実際訪問した。売っているのは顔も腕もない体と足だけのロボット。客がその後、二次開発をしてアームや視覚機能を実装していく。『ロボット業界のオープンソース』を目指すと言っていて、この会社面白いと思った」

 スタートアップ企業が次々と参入し、しのぎを削るテック業界の中で、新参者を迎え撃つ企業も存在する。

「深センの『UBテック』という会社があって、中国で初めて上場したロボット企業と言われている。一番最初に目立っていた割にその後、後発組がすごい技術をバンバン出してきて、それで彼らはだいぶ焦っていて株価も落ちている。今はEVメーカーの工場の中でロボット同士が共同作業をしている世界観を動画で流しているが、それも話題にはなる」
 

「完成した風に見せてくるので鵜呑みにしてはいけない」

 日本でも見かけるネコ型配膳ロボット「PUDU(プードゥー)」は全世界で8万台以上も売れているという。

 日本の生活にも影響を及ぼしている中国の技術。しかし、その一方で吉川さんはこんな注意点を指摘する。

「改善点はどの業界・商品でもあると思うのでそこは前提になると思うが、中国の場合は完成しなくても、『完成した風』に見せてくるので、簡単に鵜呑みにしてはいけない」

2025年、人型ロボットが量産される?

 中国の最新テックについて、千葉大学客員教授で中国の政治・社会・文化などの取材を行う高口康太氏は「よく言われる話だが、中国経済はマクロはダメだが、ミクロで見ると非常に素晴らしい。ロボットもAIも、あるいはEVもどんどん素晴らしいものが出てくる。正直、今の中国はハードウェアについては世界トップの実力を持っている。グローバルの中でも抜きん出ている会社がたくさんある。人型ロボットとか、私たちから見ると『いつ来るの?』という話だが中国政府は2025年、つまり今年、一定程度の量産を始めていきたいという政策を出している。遅れる可能性はあるが中国ではもう人型ロボットがかなり実用化を目的にしている段階にきている」と説明した。

 村上世彰氏の次女であり、村上財団代表理事の村上フレンツェル玲氏は「私は割とソフトウェアのスタートアップにも投資をしている中で、中国の人材は世界でもトップレベルだと見ているのでAIにしてもハードウェアにしても、本当に世界レベルのプロダクトがどんどん出ていると思っている」と述べた。

 AI分野での米中競争は激しいのだろうか?

 高口氏は「その通りだ。アメリカのシンクタンクの調査結果によると、全世界のAI人材の半分は中国人だ。中国のAI人材の“上澄み”がアメリカに行ってOpenAIとかGoogleに入ってAIをつくった。だから、今私たちが『アメリカのAIは進んでいる』というのは、実はそのうちの何割かは中国人が作ったAIだったのだ。ところが、中国に残っているAI人材も実はレベルが全然高い。今、トランプ政権が復活して、『中国人がまた追い出されるんじゃないか、ビザが取れないんじゃないか』と不安もある中でアメリカから帰ってくる人やアメリカ行きをやめる人も増える中で、中国のAI人材、テック人材はこれからどんどん増えると思う」と分析した。

AIエージェント「Manus」とは?

 吉川さんが紹介したAIエージェント「Manus」とは実際どのようなものなのか?

 実際に使用しているという起業家のチャエン氏は「ChatGPTは文章を作るだけだが、その後、『ブログにアップして』とか『Twitter投稿して』といって『行動』までしてくれるのがAIエージェントで全部やってくれる。例えば『僕の名前で調べてサイトを作って』と言って20分ぐらい待ったら勝手にもうサイトアップしていた。探偵ばりに僕の経歴を調べてコード書いてリンクにアップできた。僕は何もしていない」と称賛した。

 中国テックの凄さは明らかだが、中国には“リスク”も囁かれる。

 この点について高口氏は「DeepSeekがブレイクした最初の頃に『天安門事件について聞いたら答えが来なかった』とかの“遊び”が流行ったが、実はそれはどうでもいい話だと思う。むしろ、コアにあるのは価値観やイデオロギーであるとか、そういったものが答えの中にうっすら入っていることだ。分かりやすい例で言うと『2025年の中国経済はどうなりますか?』みたいな話をした時に中国のAIだと明るい話しか返ってこないが、日本やアメリカのAIだとネガティブ、ポジティブ両方を返してくる。あるいは、『民主主義をどう思いますか?』『幸せとはなんですか?』という話をするときに中国のAIは中国政府が定めた学習材料を使って訓練しているので中国のイデオロギーに染まった答えが返ってくる。便利だからと毎日使っていると、少しずつ自分たちの頭の中にそういう考え・価値観がインプットされていく。これはやっぱり長期的には大きな問題になるというのが私の見立てだ」と説明した。
(『ABEMAヒルズ』より)