林業ベンチャー「中川」(和歌山県田辺市文里2丁目)は、地域の企業と連携した森林再生事業を始めた。企業は2年かけてドングリから苗木を育てる。育てた苗木は中川が買い取り、企業と一緒に熊野の山に植栽する。中川は「苗木作りやドングリ拾いが広まり、地域全体が山に関心を持つきっかけになればいい」と期待している。
 中川によると、林業の衰退により、森林を伐採して、植栽するサイクルが崩れてきている。伐採されないまま放置された森林も増え、人工林の「少子高齢化」が進んでいる。そのため、森林の持つ水源かん養や土砂流出防止、野生鳥獣保護などの機能が失われているという。
 「熊野の森再生事業」では、郷土樹種であるウバメガシなどのドングリを山で採取し、企業が空き地などでコンテナを使って苗木を育てる。その苗木を中川が買い取ることで、企業の負担を軽減しながら、企業と山に植栽する。植栽には国、県の補助金を活用し、企業にも代金の一部を寄付してもらうことで、持続可能な森づくりを進める。
 企業には育苗キットを貸し付け、1企業当たり約千本の苗木を育ててもらう。コンテナを使うため、駐車場1台分程度の広さがあれば場所は問わない。毎日水をやるだけで、比較的簡単に育てられるという。中川では2年かけて育てた苗木を1本当たり300〜500円で買い取る。
 企業にとっては負担金なしで森林保全に参加でき、社員の福利厚生にもつなげられる。ウバメガシは地元産の苗木が少ないため、中川にとっても苗木の安定確保ができ、植栽地を増やすことで雇用の増加にもつながる。市街地で苗木を育てることで、市民に山を身近に感じてもらえる効果も期待している。
 中川は本年度、田辺市内の10社と森林再生事業で提携した。内装業「横田」(上の山1丁目)の横田圭亮さん(37)は「隙間の土地を生かして、森林再生に貢献できることに魅力を感じた」と話す。今秋からドングリを拾い、苗木の育成を始める。中川は今後年間10社程度と提携していきたいという。
 29日には提携企業とともに田辺市役所を訪問して、真砂充敏市長に取り組み状況を報告した。真砂市長は「コンテナ苗なら空き地さえあれば育てられる。今後、広がっていく可能性を感じる。市の植栽事業とも連携できればいい」と話した。
 事業の中心となっている森林施業プランナー、中川雅也さん(37)は「企業の社員や子どもたちも幅広く参加できる。地域の人々が森に関わる機会を増やし、関心を高めていきたい」と話している。